第336話 スローライフへ

「ふぅ。これで全員か?」


 天空島を訪れてからはや数カ月。ようやく全ての奴隷の対応が終わった。


 イッキーリの突然の心変わりに最初は反抗的だった天空島の貴族たちも、イッキーリの不死身さを体感することで徐々に恭順を示すようになって、後半はスムーズな奴隷の受け渡しが行われることとなった。


 ただ、天翼族の激しい仕打ちによって既に死んでいる奴隷もいたようで、そう言った輩には相応の報いを与えた。


 表向きはイッキーリにやらせて、俺が裏で実行犯を担当して、貴族たちに本人達に隷属の首輪を嵌めていった。これで俺にヘイトが集まらずに、イッキーリに向けられるので問題なしだ。


 イッキーリは俺に関する情報を漏らさないように言っているので、貴族たちからのヘイトを一身に引き受けてくれている。当然の報いだと諦めてもらおう。


「そうね。お疲れ様」

「皆様、こちらをどうぞ」

『ありがとう』


 対応が終わった俺をリンネが労い、バレッタが入れてくれたお茶を出してくれた。カエデは子供たちの世話をしているため、リラクゼーションルームには俺とリンネとバレッタだけだ。


「ちょっと疲れたから、しばらくはどこかの島を開拓でもしてのんびり暮らしたいな。せっかくゼウスで気候が制御できるようになったし、水の神殿を利用すれば海流の操作もお手の物。品種改良などはイヴのオリジンで行えばいいしな。理想的な環境を作って最高のスローライフを送ろう」

「そうね。たまにはゆっくりするのも必要だわ」


 流石に天空島で冒険したり、奴隷の対応で世界中飛び回ったりして疲れたので、田舎でみたいな時間がのんびり流れているような場所でしばらくスローライフでもして疲れをとりたい。


 リンネが俺の提案にのってくれた。


「バレッタ、そんな感じでのんびりしたいんだけど、適した島とかないか?」

「ございます」

「お、ホントか?」


「はい。ここに完全に外界から切り離され、地図にも乗らない無人島があります。どこの国にも属していません」


 ということで、早速バレッタに誰にも邪魔されないような島の場所を尋ねると、間髪入れずに返事が返ってくる。


 どこの国も発見していない島なら俺が勝手に住んでも何も言われることはないし、今後見つかったとしてもすでに俺が住んでば所有権も主張できるだろう。


 流石パーフェクトメイドである。


「おお、どんな島なんだ?」

「大きさはそうですね。佐渡島程度の広さがあり、山、川、湖、森、海といった一通りの自然があり、特に脅威になるようなモンスターもいない土地ですね。ただ、ゴブリンはすでに生息していますが」


 俺の質問に淡々と答えるバレッタ。


 ふむふむ。中々悪くなさそうな島だな。日本の島名で答えている辺り、こっちでは丁度良さそうな大きさの街とか領地とかなかったんだろうな。


 それにしても……。


「ゴブリンは本当にどこにでもいるな」


 まさかそんな孤島にまでゴブリンがいるとは思わなかった。


「一匹見かけたら二十匹はいるって言われるようなモンスターだからね。そんな孤島に居ても何もおかしくはないわ」

「マジか。Gより性質が悪いな。まぁとりあえず見てから決めよう。邪魔そうなら駆除しよう」

「そうね」


 リンネが肩を竦めて仕方がないとばかりに答えるので、ゴブリンのヤバさを実感した。Gでさえ、寒い地域ではほとんど見かけないというのに、全くとんでもない奴らだ。


 しかしまぁ駆除するだけなら簡単だし、島ということであれば全部倒してしまっても生態系が崩れるなどの心配をしなくてもいいだろう。


 むしろ全滅させた後で、どこかから獣などを連れてきて繁殖させるのも悪くないかもしれない。


 夢が広がるな!!


「わかりました。早速その島に向かいます」

「ああ、頼んだ」


 俺達は話していた島へと向かった。


「お、主君と奥方様、どこかに行くのか?」

「ああ、無人島でスローライプしようと思ってな。ちょうどその候補の島に着いたところなんだ」


 ものの数十秒ほどで島に着いたので、俺とリンネが船から降りるため船の搭乗口へと歩いていると、カエデと子供たちと遭遇した。


「島?」

「スローライフ?」

「面白そう」

「肉ある?」


 俺の返事に子供たちが興味津々といったよう様子で答える。


「無人島?それは面白そうだ。子供たちも興味があるみたいだし、私たちも一緒に行こう」

「おう。むしろ声を掛けようと思っていたから、手間が省けたな」

『やったぁ』


 子供たちの返事を聞いた後、俺たちは船を降りた。


「まさに無人島って感じだな」

「そうね、人の気配や技術の後がどこにも見られないわ」

「確かに。それにモンスターの気配も近くはない。子供たちは鍛えてはいるが、彼らだけにするのは不安だ。でも、こうやって脅威がないと分かる場所であれば私も安心できる」


 島に降り立った俺達は島の様子を見て語り合う。


 俺たち降りたのは平原だったが、どこにも人間の手が入った様子がなく、まさにフロンティアって感じで楽しみになってきた。


「それじゃあ早速、開拓始めますか」

『了解』

『はーい』


 俺達のスローライフが幕を開けた。

 





◼️◼️◼️


いつもお読みいただきありがとうございます。

また新作投稿しました。

こちらもよろしくお願いします!!


能無し陰陽師は魔術で無双する〜霊力ゼロの落ちこぼれ、実は元異世界最強の大賢者〜

https://kakuyomu.jp/works/16817330649374806786

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