第309話 よくあるパターン

「弱い!!」

「弱いわ!!」

「弱いな!!」

「よっわーい!!」

「よわよわ!!」

「よわい~」

「弱肉は食われるのみ!!」


 俺たちは天翼族のダンジョンにやってきて、依頼に会ったモンスターの素材やドロップアイテムの採取を行っていた。


 ダンジョン内のモンスターに関しては外の謎生態系の生物や植物と違い、地上のダンジョンと同じで、普通のモンスターが出現していた。その代り、地上のモンスターと違い、そのモンスター特有の素材や特殊なドロップアイテムを落とすタイプのダンジョンだった。


 俺たちは天空島の初めてのダンジョンだし、天翼族も最低でも人間のCランク程度の強さはあるし、外の謎生態系モンスターより強いので、子供たちには早いかと思ったのだが、子供たちが予想よりも強くなっていて俺達と一緒にモンスターを瞬殺。


 モンスターは何もさせてもらえず、なんの良いところもなしに蹂躙されていく。少々哀れな気もするけど、俺達の糧となってもらった。


「今何階層だっけ?」

「十一階ね」

「とりあえず、しばらく子供たちに任せるか」

「そうだな主君。正直この辺りでは歯ごたえがなさすぎる」


 ただ、あまりに弱くて俺達も一緒だとなんの経験も得られないので、ここからは子供たちに戦わせることに。


「やったぁ!!」

「やっちゃうよぉ!!」

「楽しみぃ!!」

「肉を落とせぇ!!」


 子供たちは自分たちに任されてやる気満々。危なくならない限りは任せることにしよう。もちろん戦闘だけでなく、ダンジョン探索もだ。幸い今のところ罠もなさそうだし、大丈夫だろう。


「よーし、みんな行くよ!!」

「はーい」

「りょうかーい」

「うぃ~」


 いつも元気な狐獣人のリリが皆のリーダ役だ。他の皆もそれを自然と受けて入れている。他の皆がそういうことに興味がないから、自分から買って出ているという感じだろう。


 子供たちは四人で隊列を組んで歩き出した。先頭は狼獣人のキース、次がたれ耳犬獣人のヘインズ、三番目が狸獣人のルーン、四番目が狐獣人のリリだ。 


 キースが少し先行して罠や敵の場所を偵察しながら進んでいき、敵を見つけたらキースが不意打ちを仕掛け、ヘインズが壁役、ルーンが幻惑系魔法で相手を攪乱し、リリが炎魔法でとどめを刺す感じで進んでいく。


 もちろんリリもルーンも近接戦闘も得意だけど、今はこのスタイルで行くらしい。普段近接戦闘ばかり訓練しているからか魔法を使いたいのかもしれない。


 しばらくの間、四人は連携しながらダンジョンを進んでいき、Bランクはあるであろうモンスターをものともせずにダンジョンを踏破していった。


「そろそろ戻ろう」

『はーい』


 時間的にもう良さそうな時間なので俺たちは地上に変えることにした。


「おっ。無事だったか、子供連れだからそこまで潜れなかっただろ?」

「そうだね、せいぜい三階層くらいか?」


 ダンジョンの門番たちが俺達が出てくるなり、揶揄ってくる。


「ああ、二十階層まで行けなかったよ。なかなか子供たちの鍛錬に丁度いいダンジョンだな」

「そうね、私たちが手を出したらすぐ終わるもの」

「うむ。私も子供たちの成長が見れて嬉しいぞ」


 俺が意趣返しに嫌味を言ってやると、二人もそれに便乗する。


「二十階層だぁ!?一日でそんなに潜れるわけねぇだろ!!しかも子供たちだけで!!」

「そうだそうだ!!歴代最高でも十階層なんだぞ!!」


 俺の挑発に乗って怒り心頭の二人。


「いやいや、本当だって」

「じゃあ証拠魅せろよ!!」

「そうだそうだ!!」


 俺が困惑しているふりをしながら肩を竦めると、門番たちは証拠を求めた。


「しょうがないなぁ……」


 俺はニヤリと笑って二十階層のドロップアイテムとモンスター素材を倉庫から大量に出してやった。


「はぁああああああああ!?」

「えぇええええええええ!?」


 二人はその量に唖然としているようだ。


 ははははっ。こういう顔を見るの楽しいよなぁ!!


「どうした?足りなかったか?」


 俺はニヤリと笑って問いかけると、


「い、いいえ、滅相もありません!!」

「失礼しました!!」


 二人は俺達の実力が分かったのか、冷や汗をかきながら頭を下げた。


 天空島でもやはり強さっていうのは一定のバロメーターになるようだな。


「まぁ気にするな。間違いは誰にでもある。ただ、見た目やランク、登録日だけで人を測らないことだな?」

「肝に銘じます!!」

「ます!!」


 俺が忠告すると、二人は真剣な表情で俺の言葉を受け入れた。


 案外素直な奴ららしいな。


「それじゃあ、報告に行って報酬をもらおう!!」

『おー!!』


 門番たちに忠告した俺たちは、冒険者ギルドへと報告に向かった。


「常駐依頼百五十回分!?少々お待ちください!!」


 俺たちはしばらく待たされた後、報酬を渡された。


「こ、これが今回の報酬百五十万シードです。お納めください」

「ありがとう」


 俺たちは初日から荒稼ぎをすることになった。

 今日の食事、二百回以上分を一日で稼いだのでしばらく安泰だろう。


「それと、皆さんの真冒険者ランクがCランクとなりました。こちら新しいギルドカードになりますので、古いものはご返却ください」

「了解」


 そして、俺たちは初日からあっという間にCランクの真冒険者となった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る