第303話 宝石ザックザク

 俺達が探索からテントを張っていた拠点に帰ってくると、他のメンバーは既に帰還していた。


「おかえり」

「ただいま」


 リンネが俺を出迎えてくれる。


「今日の成果はどうだった?」

「その話もいいけど、ご飯にしましょ?」


 俺が話し始めると、リンネは子供たちとカエデ、そして頭の上に居るイナホに視線を移しながら提案してくれた。


 それもそうだな。


 俺達は朝から晩まで調査をしていた。もちろん昼食や、途中ちょこちょこ休憩をはさみながらだったが、かなり夢中になって採集や狩りをしていたので、今気づけば滅茶苦茶腹が減っているのに気付いた。


「それもそうだな」


 俺はリンネの提案に頷いて食事を先に済ませることにした。


「それじゃあ今度こそ、今日の成果を発表しよう!!」

『わぁあああああああああ!!』


―ドンドンパフパフッ


 俺が進行し始めると、皆が道具を持って効果音を出して盛り上げる。


 誰もいないのに意味があるのかそれ。

 気にしたら負けか。


「それではまず最初はカエデチーム」

「うむ」


 食事のテーブルの前方に、みんなが見えるように舞台のようなセットを用意してあり、カエデとお肉大好きなキースはその上に登る。


「私たちが見つけたのはこんなものだ」

「ほらよ」


 カエデとキースが舞台の上にある台座の上に、風呂敷のようなものを閉じたまま置いた後、皆に見えるように広げてみせた。キースは投げやりな雰囲気を醸し出している。


 そこに乗っていたのは果物と野菜。


「あれ?」


 ただし、なんだか丸みが足りない。その上、宝石のようにキラキラと輝いている。


 リンネがその果物と野菜を見て声を漏らした。


「うむ。奥方様が気づいた通り、これは食べられない」

「なるほど。そういうことなのね」


 リンネが漏らした声を肯定するようにカエデ頷き、リンネはその意味するところを理解する。俺も子供たちが戦ったモンスターを回収する時に検分して分かっていた。


 キースが投げやりなのは肉じゃなかったからだろう。


「ああ。奥方様も調査で気づいたと思うが、これは果物と野菜の宝石だ。半分に切ってみたが、中も本物の果物同様の造りになっていて、私が進んだ方にはこういう植物が至る所に生えていた」

「どれどれ」


 俺はその野菜と果物を分析してみる。すると、表示されたのは、色に応じた宝石で構成されている。赤い部分はルビー、青い部分はサファイアなんて具合に作られていた。


 それにも関わらず、不思議なことに生きているように成長し、モノによって大小様々で本当に植物のような生態をしている。


 名前はジュエル○○や宝石○○が多い。

 例えば、ジュエルパイナポとか宝石草とかそんな感じ。


「やっぱり面白いな。完全に宝石なのに生きてる」

「へぇ。ホントに不思議ね」


 俺の言葉にリンネが興味深そうに見つめる。


「うむ。私の所の成果はこんな所だ」


 そう言って、カエデたちは舞台から降りた。


「次はリンネチーム頼んだ」

「分かったわ」


 次に舞台に上がったのはリンネとヘインズ。


「私たちのはこれよ!!」

「じゃーん!!」


 二人がテンション高めに風呂敷を広げる。


 そこにあったのは瓶。中に入っているのは色とりどりの液体や砂、石らしき形の物。


「ふむふむ」

「あれもまさか?」

「そう言うことみたいだな?」


 分析してある程度分かったが、俺はリンネに問いかける。


「ええ、そうよ。この辺りの川、土、石、そう言ったものを集めてきたの」


 やっぱりそういうことだ。


 川のには細かな宝石が水として流れ、土や石、そういった自然にある物に至るまでこの辺りは宝石で構成されているということだ。なんとも不思議だよな。


「そのどれもが細かな宝石や宝石の塊で出来ているみたいだったわ。宝石の産地としてとんでもなく優秀よね。ここは」

「確かにな」


 ここは不思議な生態をしているが、お菓子や宝石の産地としてはかなりいいところである。


「私のはこんな所ね」

「わかった」


 リンネはそう言って、舞台から降りた。


「最後は俺達。ケンゴチームだ」

「いぇーい!!」

「ふぅ~!!」


 俺が自分のチームを指名すると、リリとルーンがテンション高めに叫びながら、一緒に壇上へと登る。


「俺達が見つけたのはこいつだ」

「いっくよ~!!」

「そりゃあ!!」


 俺達が袋から出したのは狩ってきた動物をメインに、後は様々な植物だ。


「ということは、それも当然あれなのね」

「そういうこと」


 リンネ達も俺達が出して物の正体に気付く。


「そのモンスターも宝石で出来てるってことだな?主君」

「まぁな。血みたいな部分まで細かい宝石で出来ていた。硬度がかなり高いモンスターだった。ただの宝石ならリリとルーンの攻撃で弾かれるわけないからな。でも死んだら簡単に傷つくくらいに硬度下がって、ほとんど唯の宝石と変わらなくなった」

「ホントに不思議な所ね。天空島って」


 リンネはお菓子モンスターを思い出しているのか、しみじみと呟く。


 これは本当に各所にもっといろんな特徴を持った生態系が沢山ありそうだな。

 

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