第302話 硬い草原
スイーツ回収部隊との遭遇を終えた俺たちは北に向かって飛んでいたが、そろそろ日も暮れてきたので、これ以上の飛行は止めて、下に降りて野営することにした。
何分出発したのは、魔道具を作っていたこともあって昼過ぎてからだったからな。今日中には町につかなかった。
地面に降りて辺りを見回すと、そこには緑色に輝き光沢のある草のような何かが生い茂っていた。
「なにこれ!!」
「きれー!!」
「ぴかぴかだ!!」
「ふっ。肉じゃないなら知らん」
子供たちも地面に降りるなり、夕日を反射しているその草のような物体をしゃがんでつついたり、観察したりしていた。特に危険性は発見されなかったので、大丈夫だろう。
どうやら草でもお菓子でもなくて今度は鉱物の類らしい。
「お前たちそういうのは後だ。まずはご飯にするぞ」
『はーい』
俺達は夕食の準備に取り掛かった。
「思ったよりも移動に時間かかるわね」
「そうだな。やっぱりこの大陸がそれなりのスピードで移動しているってのが大きいんじゃないか」
「確かにね」
他の面々がご飯に夢中になっている間、俺とリンネは雑談しながら食事をしている。
「この辺もなんだかおかしな感じだし、明日は少し調べてみるか」
「それもいいわね。急ぐ旅でもないんだし」
あんなヘンテコな森があり、この辺に鉱物みたいな草があるくらいだから、この大陸には他にもおかしな生態系があってもおかしくない。
俺たちは明日はこの辺りを調べることにした。
次の日。
「それじゃあ今日はこの辺りにもお菓子のモンスターみたいなのがあるかもしれないから探して見るぞ」
『はーい』
俺の掛け声で、この前と同じメンバーに分かれて付近を散策する俺達。この辺りは草原のように見えて、その実、そのうっそうと茂っている草は、かなり硬い鉱物のようなもので出来ているようだ。
幸い俺たちの装備はこの程度の硬さの好物に負けないので刺さったりしないことだ。それにインフィレーネもあるので、少なくとも幼女たちが傷つく可能性は少ない。
「キュキュー!!」
二人の幼女を先頭にして暫く探索していると、草鉱物の茂みの中から何かが飛び出してきた。それは草鉱物を背中に取り付けたような見た目で、ハリネズミというのが最も近いモンスターだった。
「はぁ!!」
「やぁ!!」
―キンッキンッ
「キュキュキュー!!」
子供たちはいち早く気づき、切りつける。しかし、硬い物同士がぶつかるような高い音が聞こえると、ハリネズミは何も傷ついていない。
「うわっ!!かたーい!!」
「いったぁ!!」
二人は返ってきた衝撃に思わず顔を顰める。
「おお、かなり硬いモンスターみたいだな」
「うん、硬いよ~!!」
「凄くかったい!!」
俺が二人に声を掛けると、モンスターから目を話すことなく俺の言葉に返事をした。
「どうする?変わるか?」
「ううん、イケるよ!!」
「うん、このくらいへっちゃらなんだから!!」
子供たちには既に次の手があるらしく、俺と交代を拒んだ。
「キュキュキュー!!」
再びハリネズミが二人の方へと突進してくる。
「次は負けないよ!!」
「いくよ!!」
二人は先ほどと同じようにハリネズミに躍りかかった。
「はぁ!!」
「やぁ!!」
―ザシュッザシュッ
二人の刃がハリネズミを切り裂く。
「ギュー!!」
ハリネズミは値は流していないが、苦しそうな悲鳴を上げた。
先程の攻撃となんら変わらないように思える攻撃だったが、そこには決定的に違う部分があった。
それは二人が武器に魔力を纏わせていたことだ。それによって攻撃力が劇的に向上して硬いモンスターでも切り裂けたというわけだ。
「いいぞ、二人とも。止めを刺せ」
「はーい!!」
「分かったぁ!!」
動きの鈍くなったモンスターは逃げようとするが、二人がその後を素早く追いかける。
「せいっ!!」
「たぁ!!」
―ザシュッザシュッ
「ギュギュギュー!!」
背中をぱっくりと切り裂かれたハリネズミは最後に断末魔を上げて、その場にパタリと倒れて動かなくなった。探知でも見ても生命反応は失われている。
「お疲れ様。よくやったな」
「やった!!」
「わぁーい!!」
二人の頭を撫でると、嬉しそうに笑う。
「少しだけお菓子より強かったね!!」
「うん!!」
二人の言う通り今回の敵は高い防御力を誇っていた。しかし、二人は魔力を纏わせる技術を持っていたので問題なく倒すことが出来た。本来であれば魔法系で対処するところだが、それも立派な解決方法の一つだろう。
「よし、それじゃあ、この辺りの植物とか他のモンスターも倒して持って帰ろう」
「りょうかい!!」
「はーい!!」
俺の指示に二人は元気よく返事をして答えた。
俺達は日が暮れるまで辺りの探索をした。
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