第206話 合流

「おかえり、主君」

「おかえりなさいませ」


 俺たちが船に帰ると、カエデとバレッタが俺を出迎えてくれた。


 さっそくブリーフィングルームのような場所に移動し、カエデに魔族の国での結果を聞くと、どうやら魔族の集落を人にあだ名す魔物の巣として、人間代表としてヒュマルス王国が兵士とそれに従う勇者たちが襲っているということで間違いないようだ。


 また、魔族側はすでに国境近く町まで兵を進めていて、斥候部隊が先行して異変の起こった辺りの調査に向かい、そこで集落を襲っているヒュマルス王国の兵士たちと勇者達を目撃したらしい。


 これは急がないと高校生たちと魔族軍が激突してしまうだろう。


 ひとまずキメラにされた魔族たちは現状死ぬことはないし、バレッタが治せるというんだから急ぎじゃないはずだ。そうなると、遺跡も気にはなるが、先にあいつらを助ける必要がある。


 すぐに高校生たちの所へ向かおう。


「リンネ、カエデ、すぐに魔族の国の国境付近に向かうぞ」

「ええ」「うむ」


 俺は船を国境付近に動かしてバレッタに高校生たちを探させた。


「いました」


 数分もしない内にバレッタは高校生たちを見つける。


 カメラに映し出されたのは、まさに新たに魔族の集落を襲撃しようとしている彼らの姿だった。その表情は感情が抜け落ちて、まるで幽鬼のように見える。その上、体もやせ細っており、栄養状態は良くなさそうだ。それに体中が汚れていて衛生状態も悪い。


 こりゃあマジであいつらの意志じゃないな。


 それがありありと分かる映像だった。


「よし、さっそくあいつらのところへ行く。ハッチを開けてくれ」

「分かりました」


 バレッタに指示すると、俺達は船のハッチ部分へと移動した。 移動した俺は解放されたハッチの前にリンネとカエデに挟まれるように立っている。


「ケンゴ……まさかと思うけど……」

「主君、私もちょ~っと嫌な予感がするぞ」

「気のせいだろ」


 リンネとカエデは何やら冷や汗をかいてるようだ。

 なにかあったのだろうか。


「それじゃあいくか」

「え!?」

「はぁ!?」


 そんな彼女たちを無視して二人の腰を抱き、武装意外に特になんの特殊装備もつけないでハッチから外へとダイブした。つまりフリーフォールだ。


「ひゃっほぉおおおおおおおお!!」

「いやぁああああああああああ!!やっぱりぃいいいいいいいいい!!」

「しゅくぅううううううううん!!流石の私もこれは怖いぞぉおおおおおおお!!」 


 ジェットコースターが落下する時のように独特な感覚が全身を襲う。身体の内側からゾクゾクとした寒気のような気持が湧いてくる。


 助けにいくって時に不謹慎だが、世界樹の上で見た時のように世界が太陽に照らされて物凄く綺麗だった。地球と違って人が住んでいる場所も、人口そのものも圧倒的に少ないせいで緑が多いせいもあるだろう。


「おい、ちょっと見てみろよ!!」

「しぃいいいいいいいぬぅうううううううう!!」

「私はここで死ぬんだぁああああ!!子供たちすまないぃいいいい!!」


 風で何を言っているか聞こえないが、どうやら二人とも世界の美しさに感動して泣き叫んでいるようだ。二人の言葉が聞こえないから、俺の言葉も聞こえてないかもしれないな。


 うんうん、その気持ちは分かるぞ二人とも。


 上空数千メートルという位置にいたというのに圧倒間に地面が近づいてくる。そろそろ800メートルと言ったところだろうか。パラシュートがあればそろそろ開く距離になるが、俺達にそんなものはない。


 速度を上げて高校生たちがいる付近の地面へと突き進んでいく。


「うーん、そろそろか……」


 残り200メートル。そこに来たとき、俺は叫んだ。


飛行フライ


 非行魔法によって俺の落下速度を相殺するようにスピードが落ち、地上に着くころにはちょうどゼロになって、ゆっくりと着地できた。


 ふぅ、なかなか楽しかったな。


 辺りを見回すとちょうど高校生たちの前だった。


「おう、助けにきたぞお前ら!!」

『誰(だよ)!?』


 俺はかっこ良く決めたはずなのに、なぜか突込みを入れられる結果となった。


 どうしてこうなった?

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