第205話 治療
教会の研究所を制圧した俺は、ヒュマルス国王にばれないように表面上はいつも通りの運営をさせつつ、研究は凍結させた。
「バレッタ、こいつらは元に戻せないか?」
『ここの技術では無理ですね』
「そうか……無理か……」
どうやら融合させられた魔族はもう元に戻すことはできないらしい。
まぁ『黒鉄の錬金術師』でもそうだったしなぁ。仕方ないのか……。
『ここの、技術では、ですよ?』
「ん?ここじゃなければ治せるのか?」
『もちろんです。宇宙に行って星の全地形と国の分布と私たちの居た頃の地形や国の状態を比較して、遺跡の場所は全て把握しました。魔族の国にある遺跡に行けば、助けられるでしょう』
「そういうことか。それなら船に行ってカエデたちと合流して情報共有した後、魔族に国に行くか」
「そうね。助けられるのなら助けにいきましょ」
バレッタさんたら思わせぶりなことを言うんだからもう。
「テスタロッサ、そっちはどうだ?」
『おう、ちょうど船に戻る所だぜ』
「そうか。じゃあ先に戻っててくれ」
『了解』
テスタロッサに指示を出した俺たちはやり残したことをしに、研究所の奥に向かった。そこにはボロボロの服を来て、体中傷だらけの魔族たちが牢屋に押し込められている。そして、首にはチョーカーのようなものが着けられていた。
「ひっ」
魔族が俺達を見るなり、怯えた声を上げる。
俺たちがしたことじゃないが、そう怯えられると心に来るものがあるな。
「怯えなくていい。俺たちはお前たちを助けに来た」
出来るだけ優しい声色で牢屋越しに声を掛けた。
『ひぃ~!?』
いや、流石にそんな怯えなくてもよくないか。別に怖い顔でもなかろうに。まぁでも人間が恐怖の象徴みたいになってトラウマになってるんだろうから仕方がないか。ここは少し強引に行こう。
「とにかく、代表者こっちに一人こい」
命令するように呟くと、一人の年かさの男が俺の近くにやってきた。青白い肌を持ち、ミディアム程度の長さの白髪に、額に2本の角を生やしている。鬼という表現が近いだろうか。
「ど、どうか、ワシで勘弁してくだされ」
「とりあえずこれを飲め」
鬼は俺が何か酷いことでもするかのように答えるが、無視して治療薬の瓶を渡す。
「これは……?」
「飲めばわかる。いいから飲め」
「わかり、ました」
怯えを含んだ困惑した表情で差し出された瓶と俺の顔を交互にみると、恐る恐る俺の手から瓶を受け取り、フタを開けて一息に治療薬を飲みほした。
「おおぉおおおお!!」
その効果は劇的でボロボロだった体が淡い光を放ったのち、一瞬で綺麗さっぱり元通りの状態に戻った。
「こ、これはポーションですかな」
自分の体の状態を確かめながら、驚きの色を顔に浮かべて尋ねる鬼。
「似たようなものだ」
「ありがとうございますありがとうございます」
俺の答えに鬼は跪いて拝むように何度も礼をいった。
「礼はいい。ひとまずこれを全員に飲ませろ」
「ははっ」
治療薬を人数分出してやると、彼らは全員に配って飲ませた。全員完全回復し、顔色などもよくなったので、さらに追加でインフィレーネの浄化機能を使用し、汚れなども落としてやった。
「この者達を代表してお礼申し上げます。おかげさまで皆元気になりました」
「いい、気にするな。助けに来たんだからな」
「ははぁ。ありがとうございます」
「それはさておき、お前たちをすぐここから出すわけにはいかない。申し訳ないがもうしばらくここにいてくれ」
「わかりました」
「ひとまずこれを渡しておこう」
元気になった魔族たちは俺に対する警戒心と恐怖心を下げ、少し安堵した表情になった。俺は倉庫から食料や飲み物と簡単な着替え、寝袋などを牢屋の中に出す。人数はかなり多いが、それでも1週間以上もつだろう。
「おおなんと、こんなものまでいただけるとは……」
「気にするな。それじゃあ、後少しここで大人しくしていてくれ」
「わかりました」
他の牢の魔族たちも同様に治療を行い、必要な物資を渡した俺たちは船へと帰還した。
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