【書籍化・本編完結】おっさんと超古代文明〜巻き込まれて召喚され、スキルが言語理解しかなくて追放されるも、超古代遺跡の暗号を解読して力を手にいれ、楽しく生きていく〜
第207話 救世主?(ユウキ・コウノSide)
第207話 救世主?(ユウキ・コウノSide)
「おら!!起きろ!!」
「うっ!!」
気が付けば視界に俺を蔑むような眼で睨み付けるヒュマルス王国の兵士の姿があった。わき腹にジンジンとした痛みが襲ってきて、兵士に蹴られて起こされたという事実を理解する。すでに反抗的な態度を元気すらない。
また、朝が来てしまった……。
今日も夢の中で魔王種の影のような物に追われ、飲み込まれ、糾弾され続ける夢を見た。全てのみ込まれる前に住んでの所で蹴り起こされたわけだけど、感謝する気なんてない。
寝ても覚めても悪夢のような時間を過ごすことになるけど、現実はより地獄だ。夢の中は感触や匂いまで再現されるというのはないだろうけど、実際には手に残る感触や自分を恐怖の色を目に浮かべてみる魔王種と呼ばれる種族の顔や悲鳴、そして血の臭いや動かなくなった躯というのは夢とは違い過ぎる。
「さっさと起きろ!!後5分で集合だ」
兵士はそれだけいうと俺達のテントから出て行った。隣に健次郎の姿はなく、すでに起きて外に出ているようだ。起こそうしてくれたのだろうけど、命令されたかして起こしに来ることが出来なかったのかもしれない。
俺は身支度を整えてテントの外へ出た。クラスメイトの多くがすでに整列させられており、俺もそれに倣うようにグループ分けされた自分たちの所に並ぶ。
「おはよう」
「ああ、おはよう」
「おはよう……」
「おは……」
幸いにも元々活動していたパーティがそのまま自分のグループになっているため顔なじみしかいないが、その幼馴染達も全員一様に暗い顔をしていた。あのチャラチャラして明るい健次郎でさえ、なんていうか全身から生気というものが感じられない。
真美は比較的大丈夫そうに見えるが、それでも疲労が色濃く見える。一番ひどいのは基本的に真面目な聖だった。元々容姿が整っているのは、幼馴染として贔屓目に見てもハッキリわかっていたけど、今ではその見る影もない。
食べ物が喉を通らないのか、急激に痩せ、頬はこけ、目の下に隈をつくり、夜に遭遇すれば幽霊のようにさえ見える。瞳は何を映しているのか分からないように濁っていて、髪の毛はボサボサ、手も足も荒れ放題という状態になっていた。
励ましてやりたいところだけど、任務以外の時間はほとんど一緒にいることはできないし、任務中も雑談は禁止されていて、コミュニケーションをとることが難しく、実行できていない。真美がケアしてくれてたりするのかもしれないが、彼女の声が届いてない可能性もある。
それほどに聖は憔悴していた。
「次の巣へ移動する。遅れずついてこい!!」
クラスメイト全員が揃うと、兵士が周りを囲むように布陣して、また次の魔王種の集落へと向かって走っていく。兵士たちは馬に乗っているけど、俺達は生身で走らされる。まぁ当然のごとく易々とついていけるだけの体力と身体能力があるのだから疲れはほとんどないのだけど。
「とまれ!!」
そして体感にして2時間も走ると、次の目的地が近いのか俺たちを止める。それを示すかのように視線の先には村が見え、これまでと違い武装している集団が目に移った。
どうやらここ最近いくつもの集落を潰してきたことによって、ついに他の集落も襲撃者に感づいたらしい。連絡が取れないとか、実際に行ってみたら滅んでいたとか、魔法や種族の能力で調べられるとか、いろいろ方法はあるけど、とにかく俺達に気付いているんだ。
でも魔王種は確かに普通の人間に比べれば圧倒的に強いけど、俺達ほどじゃない。俺達なら相手が数千でも勝てる程度には差があるだろう。だから今日もいつもと同じようにあの嫌な感覚を五感全てで味合わなければならないと、暗い気持ちになってしまう。
「人間を脅かす化け物ども!!我らが鉄槌を下す!!かかれ!!」
『おお!!!』
俺たちは魔王種の集落に向かって駆けだした。しかし、突然俺達の前に3人の人影が現れたことで足が止まる。
そして二人の人間を抱えている謎の黒ずくめの30代くらいの男がこういった。
「おう、助けにきたぞお前ら!!」
見も知らぬ男にそんなことを言われても誰か分からない俺たちは、『誰(だよ)!?』と口をそろえて突っ込んでいた。
この人が俺達の救世主なのだろうか……。
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