第186話 再び

 遊びまくった次の日、俺は重大なやらかしに気付いた。


「やべぇ。夢中になり過ぎてまた報告に帰るの忘れていた」

「確かに。衝撃的で忘れていたわ」

「私もだ」

「ワシもだな。兄貴に何言われるかわかったもんじゃないな」


 そして皆が俺に言われて初めてここに来た状況を思い出していた。


 こりゃあすぐにでも帰るべきだろう。


 俺たちは帰った後の言い訳を考えたり、口裏合わせをした後、元々いなかったメンバーを船へと送り届けてから、満を持して奉納した神社へと舞い戻った。


「あ!!皆さま!!よくぞご無事でぇえええええええええええ!!」


 戻った瞬間、祭壇のある部屋にいた合法褐色ロリ巫女のローリーが俺達に駆け寄って号泣した。すぐに戻ってくればいいものを何日も長居して心配かけてしまった。


 大変申し訳ない。


 やべ、そういえばこの子にはいろいろ見られてたなぁ。

 あ、この子でいいのかは分からないが。

 どうにも見た目に引きずられてしまう。


『問題ありません。彼女はケンゴサマ達が消えた事以外何も覚えておりません』


 唐突に答えるバレッタ。


 おいおい、一体何をしたんだ?


 相変わらず手回しの良いことだ。

 少々恐ろしくなってまいりました。


『私は何もしておりません。起動した術式に範囲外にいる生命体への記憶消去が組み込まれていただけです』


 マジか。そんなものがあの魔法陣に組み込まれていたって?

 あの時ちゃんと見たわけじゃないけど、そんなことありえるの?

 めちゃくちゃ怪しい……。

 ふぅ……まぁいいか、これ以上突っ込んでも誰も喜ばない。

 よし、これは知られてなかったと素直に喜んでおくとしよう。


 ご都合主義万歳!!


「それで皆様はどちらに行っていたのですか?」


 ひとしきり泣ききったローリーはぐすっぐすっと嗚咽を伴いながら俺たちに尋ねた。


「俺たちは気が付くと、ダンジョンらしき場所にいてな。近くに出口らしきものがなかったら、出口探して中を探索した。そして今日ようやく出口を見つけて帰ってこれたってわけだ」

「なるほど、そんなことがあったのですね。今まで一度も今回のような現象が起きたということは伝わっていないので大変心配しましたが、ご無事で何よりでした。国王様もとても心配されていた様子なので、早く王城区画へと向かってほしいのですが……」


 おっと確かにここには巫女と毎回の受賞者しか入ることを許されていない区画だった。


 巫女以外誰もいないな、なんて安堵している場合じゃない。


「わかった。すぐに向かおう」

「ありがとうございます」


 巫女が礼をするにも簡単に返答して俺たちは社から出ると、鳥居の前に兵士が立っていた。


「おぉおおおおおおおおおお!!よくぞお帰りになりました!!ささ、すぐに王城区画へまいりましょう」

「あ、ああわかった」


 巫女同様、感極まったように喜ぶ兵士にうろたえながらも、俺は同意して後ついていく。


「おぉあああああああああああ!!よくぞ帰ってきた、勇者たちよ!!」


 いやいやいや、勇者ってなんだよ?

 俺をそんなものにしないでほしい。

 誰かのために社畜のように働くなんてもう真っ平御免だ。


「いや、俺達勇者じゃないから」

「う、うむ。一度言ってみたかったのだ。ゆるせ。それはそうと本当に無事でよかった。奉納殿で何があった?突然目の前から消え去ったと巫女から報告を受けているが……」


 俺が絶対零度の視線で拒絶すると、バツの悪そうに苦笑した後に気持ちを切り替えて真面目な表情になり、俺達に尋ねる。


 俺達は、巫女に話したことを、俺だけでなく、みんなで補完しながら報告を行った。


「なんと……いったいどうしてそのようなことが……」

「わからない」


 俺達の報告を聞いたグオリスが困惑の表情を浮かべながら呟いたので、俺は首を振った。


「そうか……。ひとまず今は無事に帰ってきたことを喜ぼう。今まで掟に従ってきたが、これは掟を破ってでも調査せねばなるまい。お前たちは疲れているだろう?今日の所は休むがよい」

「了解」


 俺の様子を見たグオリスは、しばし腕を組んで目を瞑っていたが、これからの予定と俺達に指示を出した。


「なんとかやり過ごせたな」

「そうね」

「そうだな」

「うむ。心苦しいが仕方あるまい」


 王城区画にある部屋に戻ってきた俺たちは、扉を閉めるとフゥ~深いため息をついて顔を見合わせた。



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