第187話 共同開発
その日はのんびりと過ごした俺達。
「さて、ドワーフの国でやることは終わったと思う」
「そうね。古代遺跡には行ったし、奉納祭も堪能したわ」
「そろそろ次の目的地に行ってもいいかと思っている」
「次は天空島だったか、主君」
「そのつもりだ。グオンクはどうする?」
「ワシは店に戻ろう。これ以上店を閉めてはおけん」
「了解」
俺たちは今後の予定を話し合っている。すでにドワーフの国での当初の目的は達成された。奉納祭に参加し、古代遺跡に向かい、船の修理が完了している。さらには二足歩行の機動兵器まで手に入れた。
ぐふふ、使いどころがあるかわからないが、ロボットは憧れの兵器なので、もっていることがステータスなのだ。
そういえば憧れの兵器といえば、ドワーフなら魔道具作りに詳しいだろうか。
「グオンク、誰か魔道具作りに長けた職人を知らないか」
「ふむ、そうじゃな。ワシはそっちは専門外じゃが、心当たりはある」
「おう。じゃあ教えてもらってもいいか」
「うむ。名はデミテル。一応この国でも屈指の魔道具師じゃ。変わってなければ第一区画で魔道具店を営んでいるだろう」
「ほほう、俺はそこに行ってみるか。リンネとカエデはどうする」
俺の予定は決まった。二人は何かすることがあるか。
「私はもうちょっとロボットの感覚を確かめたいのよね」
「私はダンジョンに行って少し体を動かしてくる」
「了解」
カエデは一人でそのままダンジョンへと向かい、俺はリンネとグオンクを転送でおくる。
「そんじゃあ、またな」
「うむ。今回は感謝するぞ、念願叶ったし、なかなか楽しめたわ!!」
「おう、それはよかった。元気でな」
「お主もな」
グオンクを送り届けて別れを告げた俺は、リンネをバビロンに送った後、件の魔道具店へと向かった。
「こんにちはー」
店内は薄暗く、いくつかのランタンらしき紫の光が淡く輝き、辛うじて店内の様子を窺うことができる。
中に入っても返事ない。留守にしているんだろうか。
「こんにちは!!誰かいないか!!」
「うるさいのう。誰じゃ」
もう一度強めに叫ぶと、気だるげな幼子のように高く軽やかな声が聞こえた。
―ズリッズリッズリッ
何かを引き摺るような不安を煽る音を響かせながらそいつは店の奥から現れる。
褐色の肌を持ち、魔女然としたとんがり帽子をかぶり、マントをはためかせ、もとい地面に引き摺って、中には過激な水着とそん色ない服を着た露出度の高い女。
「あんたが、デメテルか?」
「いかにも妾がデメテルなのじゃが、お主はだれじゃ?」
「俺はケンゴ。グオンクの紹介で来た」
「あんのバカ者生きておったか。連絡もよこさずに何をしておるんだか。まぁあ奴の紹介ならおかしな奴でもあるまい。何か魔道具がほしいかの?」
「いや、これを見てほしい」
俺はそう言って考えていた図面を見せた。
「こ、これは……」
俺が見せた図面を見てデメテルは目を見開いて驚く。
「どうだ?」
「なかなか面白いのじゃ。しかし全く分からない部分もある。これを妾に造れと?」
デメテルが手渡された図面から視線を上げて俺に尋ねる。
「いや、俺と一緒に作って欲しいんだが、可能か?」
「ほほう。この妾と共同開発したいというのか」
俺の提案にデメテルは口端を吊り上げ、挑戦的な表情を浮かべた。
「ああ。対価は払うし、さらにはこの付与をしている所も見せる。どうだ?」
「なんと!?確かにこの付与の部分は分からぬのじゃが、その技術を開示するというのか!?」
条件を提示すると、目が飛び出そうなくらい目を見開いて驚愕を表すデメテル。
「ああ。デメテルならおかしなことに使ったり、安易に広めたりしないだろ」
「妾をやけに買ってくれるな」
「グオンクの紹介だからな。おかしな相手を紹介するはずもない」
「さっきのおかえしかの?よしわかった。その開発一緒にやろうではないか!!妾の知らぬ技術があるなど胸が躍るのじゃ!!」
俺がニヤリと口端を吊り上げ、肩を竦めると、仁王立ちしてデメテルが答えた。
やっぱり職人。未知の技術には興味深々と言ったところだ。
上手くいったな。
それはそうと……。
「早速開発を始めるのじゃ!!」
「その前に一言いいか?」
「う、うむ」
俺を店の奥に引っ張っていこうとするデメテルを有無を言わさぬ顔で止めると、
「のじゃロリきたぁあああああああああああああああ!!」
そう叫んでいた。
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