第172話 鍛冶競技会?⑤

『ロリコ!!ロリコ!!ロリコ!!ロリコ!!ロリコ!!』


 会場中から声援が流れ続けている。


「ロリコ!!ロリコ!!ロリコ!!ロリコ!!ロリコ!!」


 そして目の前でも熱狂的に声を張りあげている男がいた。


 髭もじゃでずんぐりむっくりの体。圧倒的に"肉"が詰まっている筋肉ダルマの鍛冶大好きな種族ドワーフ。そうグオンクであった。


「次が私たちの最後の曲!!」

「皆もこの曲は知ってるよね!!」

「最後は皆で一緒に歌おう!!」

「私たちのデビュー曲!!」

「『褐色ロリが止まらない!!』」


 ふう。呆然としていたら三日も経ってしまったが、それもどうやらついにフィナーレらしい。


 この三日間ライブと休憩中に鍛冶を行う、というルーティンを繰り返していた。もうどっちかというとライブが完全にメインのイベントだった。


 あまりに意気込んていた俺が馬鹿らしいが、ライブはライブ、鍛冶は鍛冶で皆真剣だった。とはいえこの二つを合わせるのはどうかしてるとしか思えない。


「はぁ……」


 俺は呆れでため息を吐くしかなかった。


「今日は皆私たちのライブに来てくれてありがとうね!!」

「また四年後に会いましょう!!」

「応援いつもありがとう!!」

「皆愛してるわ!!」

「じゃあねぇ!!」


 最後の曲を演奏し終えると、『ロリドワクローバーZ』面々は現れた時と同様に舞台がせり下がり、共に去っていった。


 しかし……。


『アンコール!!アンコール!!アンコール!!アンコール!!アンコール!!』

「アンコール!!アンコール!!アンコール!!アンコール!!アンコール!!」


 会場中から、もちろんグオンクも含めアンコールが叫ばれる。


 十秒、一分、五分……経っても全く彼女たちが戻ってくることはなかった。


 終わりか……。


「皆ぁ!!ホント私たちのこと好きすぎじゃない!?」

「アンコールありがとね!!」

「次が本当の本当に最後の曲だからね!!」

「私たちの最新曲を聞いてください!!」

「『小さくても女なの』」


 そう思っていたが、十分経つ頃、彼女たちは再び舞い戻った。それも新しい衣装に着替えて……。いやライブ中何度も着替えてたけど、アンコールのためだけに着替えなくてもいいんじゃ?


 いや新曲用の衣装なのかなぁ。


 そして彼女たちはアンコールに答えた後、言っていた通り本当に去っていった。


「よし、仕上げをやるぞぉ!!」

「はぁ……わかったよ……」


 グオンクがやる気満々な反面、俺のテンションは最低値まで下がっていた。


 別に可愛くないわけじゃないだが、そこまで熱狂的に好きと言う訳でもなく、前世でもライブに行きたいとか思ったことがない程度だったので、乗ることができなかったのだ。


 ライブが終わると、俺達以外の参加者が次々と剣を完成させて開催者に提出していく。


 もうなんかどうでもいいなぁ……。


 俺はそんな気持ちに支配されてしまっていた。


「これで完成だ!!」

「おう……提出してくる」

「頼むぜ」


 もういいでしょ……。


「栄えある、へパス鍛冶競技会の最優秀作品は……」


―ドゥルルルルルルルルルルルッ


 会場中にスネアドラムロールのような音が鳴り響く。


―ゴクリッ


 誰もがその喉を鳴らして発表を待った。


「ゼッケン17、グオンク工房!!『エクスキャリパー~俺の考えた最強の剣~』!!」


 何十分にも思える溜めの時間の後、発表されたのは俺たちの剣だった!!


『うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!』


 会場中の人間が湧いた……。


「なんということでしょう……発表している私も驚きを隠せません。まさか……まさか大会が始めるまで全くの無名だったチームが最優秀に選ばれるとは……国王様どういうことなんでしょうか?」

「どうもこうもどれもこれも甲乙つけがたい出来の剣ばかりであったが、最初の工程が響いたのであろう。美しさ、頑強さ、切れ味。どれをとっても最高の逸品と言わざるを得なかった。それだけだ」

「な、な、な、なんと!!それだけの評価得たというのですか!!それは凄い!!今競技会のダークホースグオンクチーム。まさに世界の頂点に選ばれました!!皆様盛大な拍手を!!」

『うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!』


 キュクロンと国王の総評の後、再び会場中に野太い声が響き渡ると同時に、パチパチパチパチッと拍手の嵐が巻き起こる。


「君には負けたよ、完敗だ」

「お前の技術すげぇな。今度酒飲みながら話でもしようぜ」


 そんな中、アルバトロンとアニマを筆頭に他の参加者がゾロゾロとやってきてグオンクを讃えた。


「ガハハハッ!!そりゃ当然だ!!物心ついた時から練習していたんだからな!!」

「それは凄い!!」

「マジですげぇな!!」


 100%のどや顔をかますグオンクの背中をバシバシと叩く二人。


「すげぇだろ!?ガハハハッ!!」

「凄い!!」

「すげぇな!!」

 暫くそのやりとりを繰り返した後、全員でこういった。


『お前のオタ芸は世界一だ!!』

「はぁ!?」


 俺は何を言ってるか分からなくて間抜け面を晒して天向かって叫んだ。


 本当にこれは一体なんの競技会だったんだ……。


 俺はガックリと肩を落として項垂れるのであった。

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