第151話 気付け
「ここは……」
目を覚ますと洞窟のゴツゴツした天井が目に入った。
そういえばダンジョンイーターをぶっ壊した後、逆に俺はリンネにぶっ飛ばされたんだった。命に別状はないということでインフィレーネの自動防御も働かなかったのだろう。
「目が覚めたようね」
リンネが俺が目を覚ましたことに気づいたらしく、顔を覗き込んできた。金色の髪の毛が滝のように俺の顔に垂れてきてなんだか色っぽい。
「ああ、悪かったな」
「仕方ないんだけどね、ムカつくから殴ってしまったわ」
「あれは俺も仕方がないと思う」
人の言うことを全部無視して自分勝手に進めてしまったからなぁ。
殴られても文句は言えない。
「それで俺はどのくらい寝てたんだ?」
「ほんの数分よ。これからどうするの?」
そんなもんか、何時間も寝続けていた、という事態にならなくてよかった。
魔導ナノマシン君がいい感じに気絶処理してくれたんだろう。
ひとまず元凶っぽいのを倒したから戻って報告し、今度はドワーフ側の調査が入って、その後終息宣言がなされて今回の事件の終了って感じになるのかね。一般人には知らせずに只の崩落として処理されるのかなぁ。
一応巻き込まれている冒険者が多数いるから、それは難しいか。
今後どうなるか分からないが、とにかく一度報告に帰ろう。
「おそらく今回の元凶であるダンジョンイーターを倒したし、一旦あいつらを連れて帰るか」
「分かったわ」
俺たちはインフィレーネで囲われて弾き飛ばされて気を失っている冒険者たちの元へと向かった。
「おい、起きろ」
「う、うう……」
俺はインフィレーネの障壁を解いて、冒険者のホゼの顔をペチペチと叩いて覚醒を促す。ホゼは中々起きる気配がない。
全くこいつはしょうがないな。
「おい、起きろって」
俺は強くゆする。
「むにゃむにゃ……それ以上は駄目だって……」
どうやら何か幸せそうな夢を見ているらしい。
顔がにやけている。
「おい、いいかげんに起きろよ」
「むにゃむにゃ……あ、で、出る!!」
さらに強くゆすると、何か堪えるような表情になって体に力が入った。
こいつこの野郎!!何を出す気だ!!
それ以上先はさせないぞ!!
「喰らえ!!強力気付け薬!!」
俺は倉庫から古代時代に開発された『俺の考えた最強の気付け薬』を取り出して、インフィレーネでホゼの周りを囲ってから鼻の穴に押し込んでやった。
「うほぉおおおおおおおおおおおおお!!ぐげっ!?」
すると、ホゼは意味不明な叫び声を上げて飛び起きて走り出し、インフィレーネの障壁にぶつかって仰向けに倒れた。
「うほぉおおおおおおおおおおおおお!!」
しかし、鼻に刺された気付け薬によって気絶することを許されない。
しばらくの間、ホゼは障壁にぶつかって倒れては起き上がるということを幾度か繰り返した後、俺は気付け薬を鼻から取り外して、浄化した後倉庫に仕舞った。
後はバレッタが処理してくれるだろう。
『お任せください』
バレッタからの通信での返事がきた。
これで問題ないな。
「ひどい目にあった……」
「自業自得だろ……。それよりさっさとここから出るぞ」
俺は落ち込むように呟くホゼを無理やり立たせた。
全くホゼのせいで時間を食った。
「あの恐ろしい化け物はどうなったんですか?」
「ああ、あれならぶっとばしたらもういない」
「そ、そうですか。そうですね、早く地上に戻りましょう」
あの恐ろしい化け物を俺が倒したと聞いてホゼは俺に対して恐怖のような感情を抱いたようだが、頭を振った後笑顔で俺の指示に応じた。
俺たちは手分けしていまだに気絶したままの冒険者たちをたたき起こす。どいつもこいつも洞窟ダンジョンから街への帰路を歩みだした。
「お、ケンゴじゃねぇか。どうだったんだ?」
帰りの途中でボルボルにあったので顛末を離すと、
「じゃあ、俺も付いていくわ。なんだかモンスターたちも落ち着いてきたみたいだしよ。後は部下たちに任せるわ」
と言って俺達と同行し、ボルボルを迎えた俺たちは洞窟ダンジョンから街へと帰りつくのであった。
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