第152話 緊急依頼
俺たちは地上に戻ると、ボルボル案内の元、国の上層部に会い、崩落の原因とその原因の排除について直接報告することになった。
連れて帰ってきた冒険者達はギルドに連れていき、ギルド側から聴取を受けることになるらしい。
「今度必ずお礼しますから!!」と、ホゼを含めた冒険者達とギルドで別れた。俺も後程ギルドで聴取があるらしいが、国の上層部が先ということだ。
「面倒だがしゃーないか」
「そうね。力のある高ランク冒険者の義務って奴ね」
俺とリンネはこそこそと愚痴りながらボルボルの後をついていく。
大通りを通り抜け、山の中心部へと進む。先に行くにつれて壁面と扉の装飾が精緻かつ大きなモノへと変化していった。
「ここらへんはドワーフの偉い人が住んでるのか?」
「おっ!よく分かったな。この辺りはドワーフの貴族が住んでる。とはいえ、今では貴族という階級自体名ばかりだがな。今では平民と扱いはほとんど変わらないが、面倒事と責任を押し付けられるという難儀な称号だ」
「そりゃあ嫌な称号だな」
エルフや獣人も貴族制度はあってないような感じだったし、ドワーフもそういうことらしい。権力や見栄、既得権益に固執するのはこの世界では人間だけってことなのかもしれない。
昔の名残の残った貴族街を抜けると、一際大きな門が目に入る。
「あそこが城の入り口だ」
その門は凱旋門のように巨大で、壁面に美しい紋様が彫られていた。これほど巨大な門と同等の穴を掘り、その大きさの建造物を山の中に掘る技術は流石ドワーフと言ったところか。
「おお!!凄く凄いな!!」
語彙力!!ちゃんと仕事して!!
「エルフは木製の物が多かったけど、こういうのもなかなかいいでしょ?」
「そうだな」
いつも通り感動している俺に茶目っ気たっぷりにウインクする。
「ボルボル隊長おかえりなさい!!」
門番らしいドワーフがボルボルへと挨拶してきた。
「ダンジョンの崩落はどうでしたか?」
「状況がいつもとかなり違ってな。あちこちで落盤してるわ、下層の強いモンスターが低階層にかなり出てくるわ。道が破茶滅茶になってるわ。こいつらが協力してくれたおかけであまり被害はないだろうが、異常だったわ」
「それはかなりまずい状況でしたね。それにしても、この二人がですか?」
ボルボルと話していたドワーフは俺たちを訝しげに見つめるが、
「サンド、こいつらを舐めたような態度を取るのは辞めた方がいいぞ。なにせ、SSSランクの孤高の女神と Sランク冒険者だからな」
「そ、そうなんですか!?これは失礼しました!!孤高の女神に会えるなんて光栄です!!」
などとサンドと呼ばれた門番を肩を組んで諭すように教えてやる。
孤高の女神という言葉にリンネは再び硬直することになった。
「私はボッチじゃないボッチじゃないボッチじゃないボッチじゃない…」
プルプル体を振るわせて死んだ魚のような目になって何か呟き出した。
怖い。
もう何度も言われてそろそろリンネも闇落ちしちゃいそうだ。
「とにかくこいつらに調査して貰ったからな。こいつらには宰相にあって貰って貰う」
「そういうことですか。それではお通りください」
門番に訳を話すとあっさりと通用口から中に入ることができた。ドワーフ侍女に俺たちを客室に案内させ、ボルボルは上司を連れてくるために城の奥へと向かっていった。
ちなみにドワーフの女性はロリっ娘タイプだ。ロリっ娘がメイド服を着て仕事をしている姿はなんだかとてもほっこりする。しかし小さいながらもドワーフということで力が物凄く強くて重い物を持ち運んだりするのも簡単にやってのける。幼女に見えてもしっかり大人なのだ。
「こちらでお待ちください」
応接室らしい部屋に案内された俺たちはソファーに腰かけ、出されたお茶を飲みながらリンネと超古代時代の携帯ゲーム機
―コンコンッ
ノックの後、こちらが返事をする間もなく、ボルボルを筆頭に部屋にゾロゾロと入ってくるドワーフたち。騎士甲冑を身に着けた他のドワーフより一回り大きい者、豪奢な衣装と縦長の帽子をかぶった者の合計3名が部屋の中に入ってきた。
相変わらずリンネは偉そうな相手にも礼の姿勢をとることなく、普通に座っている。俺もそれに倣って普通にソファーに腰を下ろして相手の出方を窺った。
「ほう。あなたがあの有名なSSSランク冒険者のリンネ様ですか。そちらのあなたもSランクだとか。ギルド内ではSSSランクと相違ない待遇をお受けだとお聞きしておりますよ。お初にお目にかかります。この国の宰相を賜っているアドラスと申します。以後よろしくお願いいたします」
縦長の帽子をかぶったドワーフ、アドラスが挨拶をして軽く頭を下げる。
「俺はケンゴ、こっちは知ってると思うので省こう。よろしくな」
「そうですね。それではさっそく今回の件についての報告をお願いできますか?」
「了解した」
俺はアドラスに促されるように洞窟ダンジョンでの報告をした。
「なるほど。ダンジョンイーターですか……。おとぎ話だとばかり思っていたモンスターでしたが、まさか実在していたとは。この度はドワーフの国の危機になるところを助けていただき、本当にありがとうございます」
話を聞き終わった宰相は深々と頭を下げる。
「今の話を信じるのか?」
俺は不思議そうに尋ねた。
「あなた方が私たちに嘘つく理由はなさそうですし、取り急ぎ冒険者ギルドからの報告で多数の目撃者や被害者がいますからおとぎ話と同一のダンジョンイーターかは分かりませんが、それに類似した何かは確実にいたことは把握しております」
なるほど、そういうことか。
俺達は走ってきたわけではないとは言え、冒険者ギルドは仕事が速いな。
「そうか」
「もちろん話を鵜呑みにして調査を終わりにするわけにはいきません。きちんとこちでも裏は取るようにしますから」
「そりゃそうだよな」
「ええ」
んじゃ、問題なさそうならこれで俺たちはお役御免って感じかな。
「それで非常に言いづらいのですが、ぜひお願いしたいことがございます」
おっとこれで終わりとはいかないようだ。
「ん?なんだ?」
「えっと、実は冒険者の捜索やケンゴ殿の情報の裏取り、ダンジョン内の瓦礫の撤去やなどに人員を回してしまうと、奉納祭の開催が危ぶまれてしまいます。奉納祭で使用する鉱石の採掘が進んでいない状態でして……あのできればダンジョン内のマッピングと瓦礫の撤去、冒険者救助にご協力お願いできないでしょうか……もちろん報酬は弾みますので……」
非常に申し訳なさそうに申し出る宰相。
そういえばそんなこと言ってたなぁ。
まぁ奉納祭って奴は楽しみだし、報酬ももらえるなら協力してもいいかな。
「ああ、その件は引き受けさせてもらうよ、いいよな?」
「ええ、問題ないわ」
俺がリンネの方を向いて一応確認をとると彼女は頷いた。
「そ、そうですか。それは良かった。それでは詳細を詰めさせてください」
「了解」
ホッと安堵の息を吐いた宰相。
それから俺たちが行う作業の詳細を話し合い、その日は城―というか岩山全体が城だから城というのも可笑しいが―、城、と呼ばれる場所で俺たちは一泊することになった。
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