第150話 予定調和
「おらぁ!!」
俺の赤黒い気の纏った拳でダンジョンイーターを殴りつける。
「グギャギャギャギャギャアア!!」
奴は横っ面を殴りつけられて、派手に吹き飛んでいき、壁に激突。それでも止まらずにダンジョン壁に穴をあけながらさらに奥へと飛んで行く。
身動きも取れず、なすがままに吹き飛んでいく姿は哀れで滑稽だ。
「はははははぁ!!ざまぁ!!」
俺はダンジョンイーターを指さしながら大笑いする。
別に面白いとは思っていないのに口端が勝手に吊り上がり、声が出てしまう。
はぁくっそ!!
「ケンゴ、さっさと遊んでないで決着つけてきなさいよ」
「ああん?あんな雑魚いつでも倒せんだよ!!ちょっとくらい遊ばせろよ」
そんなことを言いたいわけじゃないのに、リンネに喧嘩腰で返事をしてしまう俺。
目的自体は達成するように体を動かすことはできるが、その凶暴性ゆえに戦闘で遊ぼうとしてしまう癖が勝手に出てしまうんだよなぁ。しかも気持ちとは別の言葉を吐いてしまう恐ろしい副作用まであるのだ。
「はぁ……これだからケンゴのこの技は嫌いなのよ」
リンネが片手で頭を押さえて首をふった。
俺も嫌いだよ。
「ギジャアアアアアア!!」
これまでよりも鳴き声が滑らかじゃなくなり、明らかに機械音のような物が混じって深いな音をたてながら、ダンジョンイーターが戻ってくる。
「ほらなぁ!!あの糞無野郎も俺と遊びたいらしいぜ!!かまってやらないとなぁ!!」
「あ、こら待ちなさい!!」
ダンジョンイーターが戻ってくるなり、俺の体が勝手に動いてダンジョンイーターとの距離を詰める。リンネが俺を止めようとするが、俺の体は止まらない。
ダンジョンイーターに近づくとその顔には欠けた部分がそのまま残っていた。つまり俺の攻撃はきちんと効いているということだ。
「ギジャアアアアアア!!」
「面白いじゃねぇか!!」
俺の攻撃で体が修復しなくなっているにも関わらず俺に恐怖することなく、向かってくる。
「オラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」
「グゲッグゲッグゲッグゲッグゲッグゲッグゲッグゲッ!!」
今の俺は竜気を扱っている時の比じゃない動きが可能だ。もはやスローモーションで動いているようにさえ見える。
襲い掛かってくるダンジョンイーターの攻撃を躱し、連撃をこれでもかとぶちこんでいく。やれるままに俺の拳を身に受けるダンジョンイーターは、徐々に外装が剥がれ落ち、しまいには中身に飛び出だしてきた。
「グゲッグゲッ……グゲゲッ!!」
声も途切れ途切れになってしまい、機会にも関わらず弱弱しさを感じる。
そんな時俺は突然攻撃を止めてしまった。
おい、なんで攻撃を止めるんだ!!
「おい、この芋虫野郎!!さっきまでの威勢はどうしたんだ!!根性見せろや!!」
俺はなぜかダンジョンイーターを挑発するような言葉を言い放つ。
ダンジョンイーターに知能ってあるのか?
『ありません』
バレッタのような声が聞こえた気がするが、気のせいったら気のせいなのだ。
しかし、俺の挑発に呼応するようにダンジョンイーターはその大きな口を開けた。
やっぱりあるんじゃ?
『ありません』
気のせいったら気のせいだい!!
そうこうしている内にダンジョンイーターの口の先にエネルギーが収束していく。
「何挑発してんのよ!!なんかヤバそうなの放とうとしてるじゃない!!」
「うるせぇ、今いいところなんだよ!!」
俺に追いついたリンネが文句を言ってくるが、投げやりに返してエネルギーと相対する。
この体はあの攻撃を真っ向から受けるつもりだ。ビリビリと肌に感じる威圧感。かなりヤバそうな代物だが、体は微動だにしない。
「こいやぁ!!」
そのエネルギーが臨界点に達した時、俺が叫ぶ。
「ゴガァアアア!!」
次の瞬間、ダンジョンイーターの叫び声と共に目の前が光に覆われた。
「きゃあああああああ!?」
「しゃらくせぇ!!」
リンネはあまりの威力に悲鳴を上げるが、俺はその光に向かって闇の炎に覆われたような拳で渾身のストレートをぶち当てた。
バチバチバチバチと、お互い一進一退の状況が生まれるが、それもほんの束の間。
「どっせい!!」
さらに力を込めて光をぶん殴ると、サァーっとレーザーのような光はあっさりと霧散してしまった。
「ふぅ……まぁまぁだったな」
俺は呟いてニヤリと笑うと、ダンジョンイーターはすでに満身創痍。今のレーザーを打ったせいか、元々ボロボロになっていた体がさらにボロボロになり、体のあちこちからバチバチという火花が散っていた。
「グゴ……ガ……」
鳴き声ももはや鳴き声の体をなしていない。
「まぁ今回はここまでか。んじゃ往生しろよ!!龍功拳 裏秘伝 絶無冥道波!!」
俺はすでにボロボロになってしまったダンジョンイーターに向かって拳に纏った滅気を収束して放った。赤黒い光線に飲み込まれたダンジョンイーターは、その黒い光が消えた時跡形もなく消え去ってしまっていた。
それと同時に俺の滅気覚醒状態も消えた。
「死にたい……」
俺は地面に四つん這いになって項垂れる。
「いっそ死になさい!!」
「ほげぇ!!」
俺はリンネに蹴り飛ばされて壁に貼り付け状態でガクリと気を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます