第149話 世紀末
「ちっ。しょうがないか。できれば使いたくなかったんだが……」
『私たちの時代ではあの程度のロボットは当たり前に消し飛ばせるものですけど……』
「ホントにバレッタが生きてた時代って一体どんな地獄なの?」
『あの頃はあの方と姉妹たちで色んな物を消去……コホン……破壊したものです』
「特に言い直す必要性を感じないからな?」
過去を懐かしむような声色で答えるバレッタだが、内容は非常に殺伐したものだった。
古代の時代には絶対行きたくないものだ。
フリじゃないからな!!
あ、やっべフラグが立つ可能性を考えていなかった。
俺は今何も考えなかった、いいね?
今はともかく目の前の敵をどうにかしないと。
「リンネ、スイッチ!!」
「スイッチ!!」
前衛の俺に代わるように、リンネが前に出てダンジョンイーターの攻撃を引き受ける。剣でアゴしたから切り上げてダンジョンイーターを天井へと激突させた。
へへへ、このスイッチ。
実は一度はやってみたかったんだ!!
こんな時だってのに少し興奮してしまうな。
「あの技を使う!!しばらく時間を稼いでくれ!!」
「えぇ~!?あれ使うの?」
リンネは修業時に見たことがあるからかあからさまに嫌そうな顔をする。
その気持ちは俺も同じだ。
「しょうがないだろ。俺だって嫌なんだ。バレッタによると、現状あの攻撃じゃないとあいつを止められそうにないんだ」
「はぁ~……仕方ないわね……」
思いきりため息を吐いてリンネは肩を落とした。
「キシャアアアアアアアアアア!!」
そこに天井にぶつかってめり込んでいたダンジョンイーターが戻ってくる。
「それじゃあ、頼んだぞ!!」
「分かったわよ……」
あからさまに嫌そうな態度のままリンネはダンジョンイーターに向かっていった。
「んじゃやるか……滅気解放!!」
まずは竜気を体を覆うように纏わせてとどめる。そこから竜気を思いきり放出し、一気に体内へと圧縮する。
「ぐっ……」
すさまじい苦しみが俺の体を襲った。
この苦しみも修行が足りない証拠。まだまだ未熟だ。
今後はもっと精進しないとな。
「キシャアアアアアアアアアア!!」
「行かせないわ!!」
俺の竜気に脅威を感じたのか、ダンジョンイーターが俺の方に向かってこようとするが、リンネがそれを阻んだ。
ナイスだリンネ、その調子で頼むぞ!!
俺は瞑想し、自分の内側へと入り込む。そこは静寂の包む闇の空間。しかし、前方に淡い光源がある。
俺は上からゆっくりと浮遊しつつ降りてきて、床にフワリと着地する。淡く照らされた地面に水面のように波紋が広がっていく。
そして前方にあるのは門。
建物や城壁などがあるわけでなく、ただ門だけが存在していた。
その扉は禍々しい赤黒い色をしていて、地獄の門というのに相応しいおどろおどろしい装飾が施されている。俺の深層意識の中だから俺があの門をそういう風に認識しているともいえるかもしれない。
「はぁ~……ホントに気が進まない……」
『頑張りましょう!!』
あれ?幻聴かな?俺の深層意識の中のはずなのにバレッタの声が聞こえた気がした。
きっと気のせいだろう。
『気のせいじゃないですよ!!』
いやいやこれは気のせいだ。
考えちゃダメな奴なんだ!!
俺は何もなかったことにして門へと向かって歩き出した。
それじゃあ嫌なことはさっさと済ませますか。
俺は門へと近づいていき、その巨大な門の扉に手を触れる。
「ぐぁあああああああああああああ!!」
その瞬間、俺の体を思わず叫び声を上げてしまうほどの激痛が駆け巡る。体が実際にあるわけじゃない精神体なのに痛みを感じるのは、実際に肉体が痛みを感じているからなのだろう。
「くっそ!!力をよこしやがれ!!」
その激痛でさらに叫びたくなるのを押し殺し、思いきり門を押し開いた。
扉の先にあるのは渦。それは力の奔流であった。
俺の青白い竜気が門の色に侵食されるように赤黒く変色していく。それと同時に竜気以上に荒ぶる力が俺の中に流れ込んでくるのが分かる。
そしてそれと同時に現実へと帰還を果たした。
「ヒャッハー!!あの糞虫野郎!!俺の拳でボコボコにしてやるぜ!!」
俺の新しい黒歴史という地獄の窯のふたが開いた瞬間だった。
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