第147話 ダンジョンイーター
ダンジョンイーターは現在寝ているか休んでいるかしているらしく動きがない。
「移動は?」
「今はしてないみたいだ」
「寝てるのかもしれないわね」
リンネも同じような考えに至ったらしい。
俺たちは一歩また一歩、ダンジョンイーターへと近づいていく。
「お、おい。俺達はこの辺でやめておいた方がよくないか?」
ホゼを筆頭とした低ランク冒険者たちが完全に及び腰になっている。
「来なくてもいいが、ダンジョンイーターが逃げてお前たちの方に行っても責任はとれないぞ?」
『ひぇ!?』
振り返る俺の言葉に遭難していた冒険者達の中で、辛うじて生き残っていた者たちが野太い悲鳴をあげて震えた。
「それに、結構入り組んでいるが、まっすぐ帰れそうか?」
「あ……」
俺の止めの言葉を聞いた冒険者たちは絶望の表情を浮かべる。
「まぁぜひにとは言わないが、ついてきた方が生き残る可能性が高いと思うぞ?」
「うっ……」
呻くように声を上げて結局俺たちの後に続いてダンジョンイーターへと近づいていった。
―ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
ちっ。動き出しやがったか!!
「ひぃ~~!?」
恐怖がぶり返したのか逃げようとする冒険者達。
「勝手に動くな!!」
俺は逃げようとする冒険者の前に障壁を張って移動を制限した。俺は殺気を全開にしてダンジョンイーターにさらに近づく。
俺の殺気を受けてダンジョンイーターはどこに向かう?
俺たちの方か?
それとも逃げるか?
「~~!?」
ダンジョンイーターは迷うことなく俺たちの方に向かってきやがった。
こいつには動くものを喰らいつくすという本能しかないのかもしれない。
「来るぞ!!」
「ええ!!」
リンネもダンジョンイーターの動きを察知して構えた。俺は冒険者たちを障壁で覆う。地中や側面、上部からの攻撃に備えて全方位に障壁を張った。念のため三重構造にしておく。これなら余程の攻撃が来ない限りは問題ないはずだ。
そうこうしている内に近づいていた地鳴りが消えた。
「うわぁああああああああああ!!」
すると、後方から悲鳴が聞こえた。
「何!?」
振り返ると、巨大なサンドワームのような姿をしたメカニカルなモンスターが障壁を側面からその口でかみ砕こうとしていた。
くっそ。インフィレーネの探知をごまかしたのか?
ありえないだろ!!
障壁は幸いかみ砕けていない。しかし、ダンジョンイーターがそのまま飲み込める大きさだ。俺は急速に障壁範囲を広げて口に収まらない程の球体へと変えた。
ガリガリガリッとダンジョンイーターの歯と障壁がぶつかり合い、お互いを削り合うような音がダンジョン内に反響する。
「リンネ!!」
「ええ!!」
俺の言葉にリンネが反応して先行して駆け抜ける。
「グラヴァ―ル流奥義、光翔剣!!」
下段から上段へと光輝く剣が振りぬかれた。
SSSランク冒険者一撃、俺は完全に問題なく、胴体?と言っていいのか分からないが、胴体と頭がサヨナラすると思っていた。
―ガキンッ
しかし、予想とは裏腹にその硬質な外装に阻まれ、リンネの攻撃が弾かれてしまう。それでも胴体は大きく湾曲して障壁ごと口から放り出される。
「なんだと!?」
俺は酷く驚いてしまった。
それでも当初の予定は達成された。それは冒険者達をダンジョンイーターから奪い取ることだ。
「うわぁあああああああ!?」
「しぬぅううううううう!?」
「ぐわぁあああああああ!?」
障壁ごと放り出された冒険者たちは障壁内であちこちへと飛んだり跳ねたりする羽目になっている。
ひとまず引き離すことに成功したので今度は俺の出番だろう。
「リンネ離れろ!!」
「分かったわ!!」
切り上げて着地したリンネがその場から飛びのいて後退する。
「龍功拳&グラヴァ―ル流合体奥義、龍功千烈波!!」
俺から一瞬で何発もの突きを放つ攻撃。龍功拳との合わせ技で竜気の突きがダンジョンイーターを襲う。
「グギャアアアアアア!?」
俺の攻撃は通ったようだ。
でも叫び声を上げた。それは叫び声を上げる余裕があるとも取れる。
そう。ダンジョンイーターは、俺の竜気を帯びた攻撃を受けてなお原型を止め、致命傷にまでは至っていなかったのだ。
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