第146話 調査
俺は集中するために、目を瞑ってインフィレーネの欠片達の最大操作範囲限界まで飛ばして探知を行った。
流石に並列思考が100以上になるとわけわからなくなって混乱するからな。落ち着いて集中しないとすぐに乱れてしまうのだ。
「ひとまず俺たちから数百メートル圏内にそいつがいる可能性は今のところはない。安心するといい」
「それは良かった」
調査した結果を男に伝えると、男はホッと何度目か分からないため息を吐いた。
余程恐ろしかったらしいな。
「それでお前はどうする?俺たちはダンジョンの調査を依頼されたからもっと奥に行くつもりだ。ついてくるなら守ってやれるが、帰るなら一人で帰ってもらうことになるが……」
「それなら手間をかけるが、連れてってもらえるか?帰ったら礼をするからよ」
「いや、礼なんかいらないぞ。調査のついでだしな」
「そうか?正直助かる。すまないな」
男は申し訳なさそうに頭を下げる。
仲間は全滅、装備も破損が激しく、アイテムも全部使い切ってしまっているだろう。これから冒険者を引退するにしても入用になるはずだ。そんな相手から何かをもらおうなんて思わない。お金やアイテムに困っているわけでもないし。
何より本当についでそのものだからな。
「気にするな。頭を上げろ。おっと自己紹介がまだだったな。冒険者のケンゴ。こっちはリンネだ」
「冒険者のリンネよ。これでも一応SSSランクね」
「孤高の女神だと……!?」
いやだから止めて差し上げろ?
「お前は?」
「あ、ああ。俺はCランク冒険者のホゼだ」
俺はリンネの更なる追及を遮るように尋ねると、我に返ったようにホゼは答えた。
6階層は低階層。このくらいのランクが普通だろうな。
「ほら」
「ああ、悪いな」
俺はホゼに手を貸して立ち上がらせる。
「んじゃ、ホゼは俺たちについてきてくれればそれでいい」
「いや、俺も仮にも斥候だ。偵察は任せてくれ」
「申し訳ないが、正直足手まといだから必要ない。勝手に動かれると守れるものも守れなくなる。死にたいというなら止めないが」
「くっ……そうだな……分かった」
はっきりというと、ホゼは悔しそうに口を引き結んだが、少し考えた後息を吐いてから答えた。
まぁ冒険者がこんなこと言われたら悔しいよな。でも今はそれどころじゃないからな。船の牢屋に送ってもいいけど、出来れば手の内は晒したくないし、まだ俺たちの力で全然対処できる範囲内だ。この程度で切り札を切る必要はない。
「それじゃあついてこいよ」
「ああ」
それから俺たちは洞窟ダンジョン内の調査を続けた。まず5階層と同様にモンスターがあちこちに沸いていて、エンカウント率が半端なかった。
「ありゃあAランクモンスターのクリムゾンスネーク!!し、しぬぅ!?」
「ぐぎゃあああああああ!!」
「こっちはAランクモンスターのブラックアナグマー!!ひ、ひぃ!?」
「ぐぎゃあああああああ!!」
「あ、あいつはSランクモンスターのアシュラキマイラ!?終わりだぁ!?」
「ぐぎゃあああああああ!!」
ホゼがモンスターの説明をしてくれるたびに瞬殺して回収する俺とリンネ。
「お前らの方がヤバいな!!」
俺たちの戦いを見ていたホゼからはそんな風に言われてしまった。
その目には若干怯えが浮かんでいる。
そんなに怖がらなくてもいいのに。
でも、自分が恐れるモンスターを瞬殺してしまう人間はがそばにいると思うと、いくら味方とはいえ、怖いのは仕方ない事か。
それから、五階層での崩落とは別に至る所で崩落が起きたり、ホゼに確認したところ新しい道が出来上がったりしているらしい。崩落に関しては俺がドリルで穴をあけて道を修復し、新しい道はインフィレーネでマッピングしておいた。
ついでに見つけた生存者たちはホゼと一緒に引き連れて歩く。
それを続けること十階層。
ついにそれらしき反応を発見する。
「いたぞ」
「ダンジョンイーター?」
「おそらくな」
「ほ、本当に大丈夫かよ」
「問題ない」
怯えるホゼ達低ランク冒険者たちに聞こえるように自身ありげに笑うと、俺たちは元凶の元へと歩を進めた。
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