第148話 正体
攻撃の余波が晴れて姿を現したのは体中に穴をあけている黒光りする漆黒ボディの蛇のような形をした生き物、というよりはいくつもの節がくっついて出来上がったおもちゃの蛇を連想させる機械的なモンスターだった。
もちろんもっと洗練されていてより生き物に近く出来上がっているが。
しかし、その穴が徐々に小さくなっていくように見える。
まさか機械的な見た目に反して回復しているのか?
『どうやらあれは古代遺跡の遺物のようですね』
俺の疑問に答えるにバレッタが応えた。
なるほど。そういうことならああいう機能があるのも頷ける。
「一体どういうモノなんだ?」
『どういうモノと言われますと、端的に言って前所有者が幼い時に興味の赴くままに制作した蛇型のロボットというのが近いでしょうか。その頃は失敗も多かったらしく、一度起動するととにかくなんでも食べてしまい、再生を繰り返すロボットになってしまったとか。倉庫の奥で埃を被っていたのを見つけた時に懐かしそうに語っておられましたよ』
おいおい、前所有者よ、なんてはた迷惑な物を作ってくれたんだ!!
しかも幼い頃からそんな物を作れるとかどんな天才なんだ?
その上、俺の攻撃を防ぐほどの装甲を持っているとか……マジで前所有者謎過ぎる。
「ギシャアアアアアアアアアッ」
復活したダンジョンイーターは頭らしき部分に着いた赤い瞳を光らせて、完全に俺に意識を向け、突撃してくる。
速い!!
「ちっ」
俺はギリギリで躱して、その横っ面を思いきりぶん殴った。
後ろに通すと冒険者たちの方へ向かってしまうかもしれないからな。インフィレーネの障壁が破られるとは思わないが、万が一があるかもしれない。
ダンジョンイーターは壁へと激突する。
「ギシャアアアアアアアアアッ」
しかし、大したダメージもなく、再び起き上がって俺へと攻撃を仕掛けてきた。それからもリンネと共に幾度となく攻撃に対して撃退するが、その度にダメージは何事もなかったように元通りになってしまう。
これじゃあキリがないな。
「はぁ……はぁ……それで?止める方法はあるのか?」
『そうですね。幸いマスターコードを入力することで止められるようです』
なんだと!?そういうのは早く言ってほしいよな!!
「じゃあそれを教えてくれ」
『知りません』
俺が尋ねると、あまりに無機質な声で答えが返ってきた。
その答えを脳が受け入れるのを拒否する。
「は?」
知らない?どういうことだってばよ!!
俺は意味が分からなくて素っ頓狂な声を上げた。
「おわぁ!?」
驚いた隙をついてダンジョンイーターが俺に襲い掛かってきたので慌てて躱す。
『知りませんと言いました!!』
「いやいや聞こえなかったわけじゃねぇよ!!」
ちっげぇよ!!
それに威張って言うことか!!
「じゃあ撃退するにはどうしたらいいんだ?」
『圧倒的な火力で消し飛ばすか、以前竜気に飲まれた時に使った力を使うかですね。あれなら再生能力さえも消し飛ばせるはずです』
確かにエクスターラやあの力なら滅ぼすことが可能だろう。だが……。
「あれなぁ。師匠にはもっと修行してから使うようにと言われてんだよなぁ」
『なんと、あの力を完全に御しているお方がいたのですね。それは凄い。人類の進化とは予想以上のようです』
「ああ、師匠はあの力を完全に使いこなしていた。でも俺はまだ6割から7割ってところだ」
流石にこんな洞窟の中でエクスターラをぶっ放すわけにもいかない。古代魔法の時空魔法などもあるが、人の居ない場所へ飛ばすには魔力がまだまだ足りない。
となると、何もかもを消滅させるあの力。あの力を師匠は滅気と呼んでいた。アレを使う他ない。思いきり滅気を溜め込んでから打ち出せばエクスターラ級の威力になるが、竜気のように纏って攻撃を放つ程度の威力に抑えれば問題ない。
しかし、滅気を使おうとすると性格が凶暴というかもうバーサーカーみたいになってしまうという副作用があった。修行の結果、ある程度副作用を抑えることに成功しているが、完全にではなくて攻撃的な性格になるのは変わらなかった。
しかも準備にそれなりに時間がかかる。今の俺にはすぐには使えないという欠点があった。
ただ、こうして考えている間にも攻撃の手が緩むことがなく、それどころか逆にこちらの動きに対応し始めて、俺やリンネが徐々に傷を受けるようになってきていた。
どうやら四の五の言ってる場合ではないようだ。
俺は覚悟を決めた。
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