第177話 運命の出会い
ワイスがピコピコとウィンドウを操作すると、硬質な重厚な扉のセキュリティが解除されたらしく、扉の中心辺りが百八十度回転し、その後、中心に向かって伸びるいくつもの杭のような機構が、プシューッと蒸気音が鳴った後に、ガシャガシャと中心部から外側に向かって外れていく。
―ゴゴゴゴゴゴゴゴッ
そして最後の杭が抜けると、地鳴りのような轟音を響かせながら奥に向かって自動的に開いていく。
「めっちゃ凝った扉だなぁ」
俺は目を輝かせて扉が開いていく様を眺めていた。
「うむ。前所有者もこの扉は大事なものを守る場所には重厚な扉は必須だと言っていた」
その様子を満足そうに眺めるワイス。
期待感を煽るのにこういう演出は重要だよなぁ!!
―ゴーンッ
ゆっくり開いた扉が止まり、中が見え……ない。
中には霧のような粒子が漂い。見通しが悪かった。しかし、俺にはインフィレーネの探知がある!!
俺は探知を巡らせた。でも探知で内情を知ることはできなかった。
「ふふふ、中を覗き見ようとするなど無粋であるぞ、我が親愛なる主よ」
俺に向かってチッチッチと顔の前で人差し指を左右に振る。
確かに覗きはご法度か。
俺たちは霧が晴れるのをじっと待った。霧が薄れるにつれて浮かび上がるシルエット。それは良く知っている物に似ていた。
「あれはまさか!?」
そのシルエットに否が応でも俺の期待感が高まる。
いかにも大事なものが仕舞ってありそうな扉に、中を見通せない徐々に晴れていく霧。くそっ!!なんて人の心理を上手く突いた演出なんだ!!
そして霧の大半が消え、そこにうっすら見えたのは男なら憧れてやまないアレだった。
「うぉおおおおおおおおおおお!!」
俺はアレが見えた瞬間に駆け出した。
「あっ!!ケンゴ!!ちょっと待ってよ!!」
「主君!!待て!!」
「俺を置いていくな!!」
後ろから何か声が聞こえたが、俺の頭に入ってこない。
今俺の頭の中を支配しているのは視線の先に仁王立ちしているアイツ。一歩一歩使づくたびに心臓が高鳴り、血流が速くなっているのを感じる。
まさか、異世界に来てアレに出会えるなんて!?
もちろん船なんてものがあるから少しは期待していた部分はある。この世界には、魔法やスキルと言った異世界ファンタジーによくある物だけに限らず、超古代文明の科学と魔法を融合した技術による未来的な兵器の数々が存在していた。
それでもまさか本当にあるとは思わなかった。
誰もアレに乗りたいと、一度はそう思うであろうSFファンタジー物や戦隊物では非常に高確率で登場する兵器。
「二足歩行ロボットきたぁあああああああああああああ!!」
そう、ドックような場所に聳え立っていたのは高さ二十メートルを越える有人操縦式の人型機動兵器だった。
その人型機動兵器は黒塗りで、機動性が高いのか細身でスッキリとした体形で造られていて武術を実践するのにいかにも使いやすそうな見た目をしていた。
まさに『鬼道戦士ガンゾム』『機動警察ポリレイバー』『オバハンゲリオン』『ゼロギアス』『覇王大系タイガーナイト』などをはじめとした、おじさんが子供のころに愛したゲームやアニメ作品に登場する兵器そのものだ。
ついに!!ついに出会えた!!やったぞ、俺はやったんだ!!
俺はその兵器の真下までやってくると、足を止めると、その姿がぼやけ出した。
「ちょっと!!どうしたっていうのよ!?」
何が起こっているのがよく分からずに立ち尽くしていたが、後ろから声をが聞こえて、ふと我に返り振り向いた。
「え!?なんで泣いてんのよ!!」
ギョッとした顔で俺に駆け寄ってくるリンネ。
「おれ、泣いてたのか……」
俺は自分の頬に手を添えると、そこには確かに湿った感触がある。そこで初めて俺は感動で涙を流していることに気付いたのだった。
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