第153話 奉納祭への参加
緊急依頼を受けた俺たちは再び洞窟内へと入り、ダンジョン内の瓦礫の撤去作業を行いながら洞窟ダンジョンに潜って行方の確認が取れていない冒険者たちの捜索、救助活動を行った。
その日の帰還後、カエデたちと合流を果たし、彼女が見つけた宿に泊まることに。
「どうやって見つけたんだ?」
「ふふふ、蛇の道は蛇だよ、主君」
めちゃくちゃ人の集まっているこの時期にどうやって宿を見つけたのか気になった俺が尋ねると、カエデは意味ありげにどや顔で答えるだけだった。
めっちゃ気になるんですけど?
それはともかくこの時期に宿を取れたことは僥倖である。
その宿に向かうと、その宿は結構立派でこの時期絶対に部屋が取れ無さそうな宿であった。
「い、いらっしゃいませ~」
俺たちが宿に入るなり、口元をヒクヒクとさせながら苦笑いを浮かべて店員が俺達に向かってお辞儀をした。
ホントに一体何をどうしたんだ?
「うむ。連れを連れてきた。部屋のカギを頼む」
「は、はひ!!」
カエデが店員に声をかけると、店員は慌てて鍵を取りだしてカエデに渡した。
店員のうろたえように流石に気になった俺。
「何か法に触れたり、脅迫するような真似はしてないよな?」
「誇り高き黒猫族である私がそんあことするわけないだろう。ちょっと無体を働こうとした輩を懲らしめた礼に部屋を取ってくれただけだ」
「そ、そうだよな」
ジト目で凄んでくるカエデに頭を掻きながら苦笑いで答えた。
ま、まぁそれなら大丈夫かな……。
俺は遠い目をして考えるのを止めた。
それから1週間程ダンジョン内の瓦礫の撤去や冒険者の捜索救助活動を行いながら、夜はドワーフの町の味わったことがない食事に舌鼓を打って過ごした。それでようやく諸々のめどが立ったので俺たちはようやくお役御免となったのだった。
「この度は本当にありがとうございました。非常に助かりました。それで報酬なのですが、白金貨1000枚を予定しております。そちらから何かッ容貌はございますか?」
白金貨100枚とは大きく出たな。金貨で10000枚だ。
金貨10枚でリンネが泊っていた最高級ホテルに泊まることができる。
高級ホテルに1000回止まることが出来ると考えればその価値も分かるだろうか?
そしてそれだけに飽き足らず、他にも要望があればくれるらしい。
なんとも太っ腹な事だ。
「うーん。そうだなぁ。可能であればこの国で管理している古代遺跡に入らせてもらいたいんだが?」
「申し訳ございません。国を救ってくれた英雄ですからぜひともご案内差し上げたいところですが、あの古代遺跡は代々奉納祭に行われる鍛冶大会に優勝した武器の鍛冶師のみが入る事許されております。」
ダメもとで頼んでみると案の定却下されてしまった。
それじゃあ、こっちはどうだろうか?
「それなら今から鍛冶大会に参加することは可能だろうか?」
「え、ええ、それでしたらなんとかねじ込んで見せます」
「おお。なら、それを追加でお願いできますか?」
「本当にそんなことでよろしいので?」
「むしろそれがいいんです」
「そうですか。わかりました」
宰相が少し申し訳なさそうに尋ねてくるが、俺が心からの笑顔で答えると、何か腑に落ちたような表情になって許可してくれた。
おお、やった。これなら何とか出来る気がする。
「ちょっと、ケンゴ大丈夫なの?」
俺の提案を聞いていたリンネは小声で俺に尋ねた。
鍛冶師に伝手はあるし、鍛冶の製法に関してもどうにかなると思う。
後は相手にどこまで秘密を開示するかどうか、という部分だが、あの人なら大丈夫だろう。
「大丈夫。まかせておけ」
俺はリンネに小声でサムズアップしてニヤリと笑みを返した。
「そ、そう。ならいいんだけど」
リンネはやけにしおらしげに姿勢を正すと、「よろしいですか?」と宰相に促されたので問題ないと答える。
それから詳細を詰めた俺たちは、奉納祭の鍛冶大会への参加権を得て城区画から宿へと帰って、再びカエデたちと夕食に舌鼓を打つのであった。ちなみにその日はバレッタ製の料理だった。ドワーフ料理よりも皆喜んでいたのはここだけの話だ。
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