第078話 続く異変
町を離れてしばらく走り続けると、追手はいなくなっていた。
「ふぅ……一体なんだったんだ?」
「そうね。何かあるとは思ったけど、あの様子は只事じゃないわ」
俺たちは走るのを止め、歩きながら会話をする。
「本当だな。まるで何かに取り付かれているような有様だ。目は血走っていたし、言動もおかしかった」
「あれは薬物を飲んだ人間のようだったわ。何かおかしな薬が流行っているのかしら」
「確かに。薬物と考えれば分からなくもないな」
ふむ。獣人は単純そうだからな。体に良い薬だと言われればホイホイ飲んでしまいそうだ。
まずはその辺から探ってみよう。
「ひとまず他の街とかも確認してみないと何とも言えないな」
「そうね。王都はこっちの方角であってるはずだから、途中の街に寄ってみましょう」
「そうだな」
俺たちは確認し合ってから次の街へと向かった。
「へへへ、上手そうな肉だなぁ」
「食っちまおうぜ」
「そうだな」
「ヒャッハー!!」
しかし、道すがら出会う連中出会う連中が俺たちを見かけるなり、目の色を変えて俺たちに襲い掛かってくる。しかも今回は比較的近くに居た仲間が次々と集まってきた。
後から後から湧き出てきやがって。
もうここまで来ると国全体がおかしいんじゃないかとさえ思う。
「待てやこらぁ!!」
「おい、そっちに逃げたぞ!!」
「こっちだ!!」
襲い掛かってくる獣人達を相手にしながら次の町に到着すると、前の街と同様に、昼はとても親切なのに夜になると住人は豹変して俺たちに襲い掛かってきた。
確かに出会い頭に襲い掛かってくる奴らも夜だった気がする。そう考えると、夜に何かが起こるのかもしれない。
一旦逃げた後、インフィレーネで姿を隠してやり過ごしつつ、街の中を探ってみたが、何か薬物らしいものやそれを扱う組織などは見つかることはなかった。
少なくとものそういった類の物を摂取していることはないってことか。
「うーん、何も見つからないな」
「ホントね。原因が見つからないと対処のしようがないわ。全員殺すわけにもいかないし」
「そうだなぁ。殺そうとしてくるんだから殺しても文句は言えないだろうけど、明らかに様子がおかしいからな」
「そうね、流石にあの状態で殺されるのは可哀そうだと思うわ」
俺たちは困った表情でお互い顔を見合わせる。
流石に原因も分からずに殺してしまえばいいとは思えない。出来るだけ穏便に済ませていきたい。ただ、サバンナで気絶させてるから野生動物か魔物の餌食になってる奴もいるかもしれないが。流石にそこまでは面倒を見切れない。
「にゃーん(眠いよぉ~)」
リンネに抱えられているイナホは相変わらず眠そうだ。
しばらく馬車をインフィレーネで隠蔽して移動するか。
歩いて移動するのは面倒になってきたしな。
姿を現さずに観察すると、道中の獣人の近くを通り過ぎたり、町の中ですれ違ったりしても豹変することなく、各々がそれぞれ普通に生活を続けている様子だ。それは夜も変わらなかった。
そこに狂気は一切感じられない。
ホントに何が起こってるんだろうなぁ……。
俺はソファに深く腰掛け、背中を預けて天井を見上げた。
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