第063話 古代遺跡へ
「何してるんだ?」
「にゃーん(あ、おかえり~。なんだか小さい女の子が果物くれたよ~)」
俺の質問に食事から顔を上げ、口元に食べ物のカスをつけながら答えるイナホ。
ん?小さな人?
ああ、アレナか。どう見ても只の幼女だからな。
「そっか。よかったな」
「にゃーん(うん)」
撫でる俺に対して返事が終わると、また出された果物類をバクバクと食べ始めた。
「さて、今日は古代遺跡に入る許可を貰ってさっそく潜ってみるか」
「そうね、楽しみだわ」
「俺たちも朝食食べたら、アレナに謁見させてもらおう」
「わかったわ」
俺はリンネと予定を決めると、外に待機しているエルフメイドに言伝をして朝食を用意してもらった。
ワクワクしてるリンネが可愛い。
「アレリレーナ様の準備が整いました」
朝食を食べ終え、しばらくするとメイドがやってきて、俺たちを謁見の間に案内する。
「イナホはどうする?」
「にゃーん(いくよ~)」
イナホに尋ねると、ご飯以外にあまり興味を示さないのに今回は行くことにしたようだ。ぴょんとソファーから飛び降りて、俺の肩に飛び乗った。
はぁ……最高過ぎる……。
「あいたた……。お目覚めのようですね、お二人供」
謁見の間に辿り着くと、玉座には頭を押さえて苦しむ幼女の姿があった。
二日酔いだろう。昨日は皆が皆飲み過ぎていた。整列している兵士も少なく、並んでいる兵士も苦々しい表情を浮かべている。
そんな状態で出てこなくていいだろうに。そんなわけにもいかないのかもしれないが。
それにしても見た目幼女が二日酔いとかシュールすぎる。
「とりあえずこれを飲め」
ひとまず話をするのも辛そうなアレナに治療薬を渡す。
「これは?」
「まぁいいから。楽になるだろ」
「そうですね。ケンゴなら私を害する理由もないですし、いただきましょう」
アレナは毒見も無しに瓶に入った治療薬を呷った。
普段は毒見役が確認してからなんでもかんでも口に入れるんだろうな。
大変な立場だなぁ。心が休まる時がなさそうだ。俺は死んでもごめんだな。
「あら?痛くない?」
アレナは痛かったはずの頭が急に軽くなったのが不思議なのか、振ったり叩いたりして確認している。
なんていうか見た目のせいか、なんか微笑ましいシーンだ。
温かい目になってしまう。
「もう大丈夫だろ?」
「ええ、それにしても朝も世界樹の方が騒がしかったようですが?」
自分の頭を確認しているアレナに声を掛けると、頭痛が治った途端ジト目で俺を睨む。
幼女の睨みなんて怖くないぞ!!
「ははは、なんのことだろうな」
「丸見えだったのですが、国を救った英雄ということで見なかったことにしてあげましょう」
「おう、ありがとな」
とぼけてみるも、完全に城から見えてたらしい。
いや~、あれだけデカい光り輝くものが降ってきて轟音を響かせてたら、そりゃバレバレですよねぇ。
今回は目を瞑ってくれるらしいので感謝しておく。
「それで古代遺跡への入場許可でしたね?問題ありませんよ。見張りはいますが、すでに通達してるのでいつ行っても問題ないです」
「おおそうか、ありがとな」
「いいえ、むしろこちらがお礼を言わないといけません。国を救ってくれてありがとうございました」
そう言ってアレナは頭を下げた。
周りもそれを咎めることはないようだ。
「気にするな。俺たちはヤれることをヤッただけだ」
「ぶっ!?」
俺が一国の王に頭を下げさせたという事実に、絶妙な発音で不敵に笑うと、リンネが隣で噴き出した。
「あら?どうかしましたか?」
突然噴き出したリンネにアレナは不思議そうな表情で問いかける。
「いいえ、なんでもないわ!!」
リンネ腕組んでそっぽを向いて答えた。
それはなんでもあるって言ってるようなもんだぞ?
「なんだか顔が赤いですね?」
「なんでもないって言ってるでしょ!!!さっさと古代遺跡に行かせなさいよ!!」
さらに追及するアレナに、リンネは絶対譲る気がない。
「分かってますよ。全くしょうがないリンネちゃんですね。エルフはこの恩を忘れません。何か困ったことがあったら言ってください」
ヤレヤレと手のかかる妹を見るような優し気な表情を浮かべてアレナが言った。
ああなったらリンネは意地でも何も言うことはないだろう。
それがわかってるんだろうな。
「了解。またな。古代遺跡で冒険し終えたらまた来るわ」
「ええ、待っていますね」
俺はアレナに返事をして、リンネとイナホを連れてその場を後にしようとした。
しかしその時、
「待ってください」
と、彼女が俺たちの背に声を掛けたので俺たちは振り返る。
「あの遺跡は私達の間で罠の迷宮と呼ばれています。何日も彷徨ってようやく出られた者の言葉ですと、罠が大量にあってかなり危険度が高いです。本当に、本当にお気をつけて……」
アレナが悲しみをこらえるような表情で言葉を続けた。
何かあったのかもしれない。
「ちゃんと帰ってくる」
「心配いらないわよ!!」
俺たちは振り返って出来るだけ明るく手を振って応え、遺跡へと向かった。
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