444.本物と偽物


 どうも、聖教会のパチもん軍団に突撃するジルバギアスです。


「帝国の敵に死を! 神意をここに示さん!」

「貴様の首を凱旋門に晒してくれる!」

「帝国万歳! 皇帝陛下万歳!」


 目を血走らせた狂信者どもが口々に罵りながら、不気味なほど統制が取れた動きで突っ込んでくる。


 クソッ、なんて口の悪さだ!


「テメェら全員生きて帰れると思うなァ!! 皆殺しにしてやるッ!!」


 俺も負けじと叫び返す!!!


『いやそこは張り合わんでいいじゃろ』


 言われっ放しはしゃくなんで……



 激突。



 銀色に光り輝く武装集団の、先頭のひとりに剣槍を突き入れる。盾ごとブチ抜いてやるつもりだったが、思いの外硬い。


 これ、魔力による強化もさることながら、武装の質もかなりいいな。最低でもドワーフ鍛冶の数打ち物は使っていると見た。アダマスの先端が接触した瞬間、これまでにないガツンとした感触が伝わってくる。


 ので。


「ふンッ!」


 さらに魔力を込めてゴリ押す!


 俺の刺突を受け止めて、一瞬、勝ち誇ったような顔をした光刃教徒は、眼前の盾と己の腕を突き破ってくる刃に「え!?」と目を見開いて、そのまま貫かれた。胸当てをブチ抜き、胸骨を粉砕し、脊髄もイった。即死、ぐにゃりと体から力が抜ける。


 だが密集隊形ゆえ、後続に押されて突撃の勢いは鈍らない。先頭の野郎を貫いた刃は、真後ろのひとりも貫く。そしてさらに背後のもうひとり。計3名が仲良く串刺しになって死亡する。刃の長さが足りなくてそこで止まったが、周囲の光刃教徒は相変わらずの猛突進。


 結果的に、光刃教徒が俺を圧しながら取り囲む形になった。


「うおおお!」

「死ねぇええ!」

「帝国万歳! 皇帝陛下万歳!」

「「【聖なる輝きよヒ・イェリ・ランプスィ この手に来たれスト・ヒェリ・モ!!】」」


 四方八方から剣を振り下ろしてくる狂信者ども。刃を受け止める防護の呪文がガンガンガンガンガンとやかましい音を立てる。


「【腕萎えよ!】」


 串刺し死体三兄弟からどうにかアダマスを引っこ抜き、呪詛をバラ撒いてみた。俺を中心に、漆黒の塗料をぶち撒けたかのように、闇の波動が広がっていく――しかしそれは、銀色に光り輝く狂信者どものオーラを上滑りしていって、弾かれた。


「ふはは! そのような呪詛は効かん!」

「神意は我らにあり!」

「帝国万歳! 皇帝陛下万歳!」

「「【聖なる輝きよヒ・イェリ・ランプスィ この手に来たれスト・ヒェリ・モ!!】」」


 さらに勢いづいて、ガンガンガンガンと俺に剣を叩きつけてくる光刃教徒。


 なるほどなぁ。


 こいつら――だいたい100人くらいか。聖教会でいうところの勇者を、先ほどの重装歩兵のように一部隊として運用しているわけだ。魔力を一体化させ、魔法抵抗を引き上げる人族歩兵戦術に、聖銀呪をまるっと上乗せしている――


 ……贅沢な戦力の使い方だな。聖教会は、勇者ひとりが30~50人くらいの一般兵を強化し、広く浅く全体の力を底上げする戦術だったから、光刃教とは運用思想がまるで異なる。


 そこそこ強い奴に普通の奴らを強化させ、全体をそこそこ強くするのが聖教会。


 そこそこ強い奴を集めてめっちゃ強い奴らにして、普通の奴らは捨て駒にするのが光刃教、ってとこか。


 聖教会も、強敵と戦うために数十人の勇者や神官を精鋭部隊として運用することはあるけど、光刃教はそれをもっと極端に、徹底した形だ。


 俺のような突出した個と相対するには、有効な戦術と言わざるを得ない。光刃教徒は確かに、人族とは思えない強固な魔法抵抗を獲得していて、身体強化もなかなかのものだ。歩兵集団としての完成度は、同盟圏でも指折りかもしれない。


 帝国が調子に乗ってる理由がわかった気がする。そりゃあ、こいつらは同盟圏なら無敵に思えるだろうよ。なんたって大公級の俺の呪詛を弾くくらいなんだもん。


『では、こやつらはなかなかに将来有望かの?』


 うーん。


 一般兵に足止めさせて、要所要所を光刃教徒こいつらで叩いていく、って運用法なんだろうが……


 一般兵が無防備すぎて、足止めする前に文字通り全滅するだろうなぁ。


 光刃教徒があと何人いるか知らねえけど、魔王軍相手に戦い切れるとは思えない。今しがた、俺と接触しただけで3人死んでるし。


「……ふンッ!」


 俺が強引に槍を振るって、押し合いへし合いする光刃教徒を押しのけ、さらに二度三度と槍をねじ込めば、そのたびにひとりふたりと死んでいく。


 うん、ダメだわ!


 確かに人族とは思えないくらい手強い!!


 でもそこそこの魔族が同数で密集したらもっと手強い!!!


 っていうか、馬鹿の一つ覚えみたいに聖句だけしか唱えてないんだけど、他の魔法はどうした!? もっとこう……あるだろ! 【戒めの鎖】とか【大いなる加護】とか、決戦用の【英雄の聖鎧】とか!!


「ええい、鬱陶しい!!」


 俺は槍をブンブンと振るって、まとわりつく光刃教徒たちを跳ね除け、一旦距離を取った。


「おい貴様ら! さっきから同じまじないを唱えて、馬鹿みたいに剣を振り回すだけじゃないか! もっと他にないのか!? 聖教会は色々使ってくるだろ魔法とか!」


 俺が問うと、光刃教徒たちは顔を見合わせる。


「聖教会のことなど知らん!」

「拝金主義者の手品に興味はない!」

「我らには我らのやり方があるのだ!」


 ほほう……。


「ならば見せてみろ、その光刃教のやり方とやらをな!」

「言われるまでもない!」

「覚悟しろ魔王子!」

「我らが秘奥義を見せてやる!」

「「【聖なる輝きよヒ・イェリ・ランプスィ この手に来たれスト・ヒェリ・モ!!】」」


 再び聖句を唱えた光刃教徒たちが、一斉に剣を天に掲げる。


「【我ら、敬虔なる光刃教徒!】」

「【光の神々の下僕にして、栄えある皇帝陛下の剣なり!】」

「【帝国の祖、勇者カイザーンよ、とくとご照覧あれ!】」



 グオオッ、と魔力を束ね上げ、そして――



「「【光あれフラス!!】」」



 ……んん!?


 一斉に剣を振り下ろし、銀色の光を放ってきた。


 さながら、それは巨大な光の剣のようだった。俺は闇の魔力をまとい、焼け付く聖銀呪の刃を防ぐ。


 ――大人数で束ねただけの【光あれフラス】じゃねえかコレ!!


 いや、確かに、俺がよく使う【光あれフラス】とはもはや別物と化してるけど! 大出力ではあるから、不意を打たれたり、闇の魔力で咄嗟に防壁を形成したりできなかったら、大ダメージを受けるかもだけど!


 ……ま、まあ、小手調べとしてはなかなかのものだったかな。


「ばっ……馬鹿な!」

「無傷だと……!?」

「【聖帝の光剣】が……!?」


 えっ何その反応。


 まさか今のが必殺技!?


「おい、秘奥義を見せてくれるという話ではなかったか。ただの目くらましの手品に興味はないぞ」


 俺が無傷っぷりをアピールすると、光刃教徒たちはさらに愕然としていた。


「たっ足らぬ足らぬは気合が足らぬ!」

「もう一度だ! 行くぞ!」

「【我ら、敬虔なる光刃教――」


 こいつら……


「そんな悠長な詠唱を待つ奴がいるかァ!!」


 俺は全身に魔力をみなぎらせ、容赦なく斬りかかる。儀式じゃねえんだぞオイ、今は実戦だ!! 叩き込んだ刃がひとりにめり込み、ガキンッと手が止まる。クソッ、無駄に硬えなマジで!


「おおおおおァァァ――ッッ!」


 インパクトの瞬間、剣先に魔力を集中させる技法を使う。こいつらの火力はショボいから、防御に割り振る魔力を攻撃に転用しても問題ない。おかげで光刃教徒の盾や鎧も、普通に切り裂けるようになった。


「オラオラオラオラァ!! どうしたどうしたァ!!」


 雑兵のように一振りで十数人をまとめて屠る、とはいかないが、一振りするごとに確実にひとりふたりは死んでいく。


 削り取っていく――!


 さあ、どうする光刃教!?


「【ひ、光の神々の下僕にして、栄えある皇帝へい――グギャッ」

「ダメだ!! このままでは!!」

「防御隊形――ッッ!」

「「【加護よプロスタシア!】」」


 一斉に盾を突き出し、グオオッと聖銀呪の輝きを身にまとう光刃教徒たち。


 うん……基礎の守りの魔法だね。俺の攻撃が受け止められた。盾に刃がめり込んではいるが、さっきみたいにスパスパ切り裂けはしない。光刃教徒たちは冷や汗を流して、魔力を放出し続けている。……一時的に敵の大攻撃を凌ぐための陣形か? でも守りに徹してるだけで攻撃はできない?


 ハァ~~~~。


 亀が甲羅に閉じこもってるようなもんじゃねえかよ……


 確かに、硬いは硬い。だが……


 それしかできないようじゃ、未来はない。殻に閉じこもった亀は、より大きな天敵に掴まれたら、逃げも隠れもできず弄ばれるのみ……



「【我が名は、ジルバギアス】」



 俺もまた、再び闇のオーラをまとい直す。



「【汝らに試練を与える者なり】」



 ――さあ、真価が問われるぞ。



「【絶望せよ!!】」



 踏み込み、大上段に構えた剣槍を、全力で振り下ろす。



 剣先に魔力を集中。さらに、どす黒く練り上げた呪詛を流し込む。



 狂信者どもの銀色に輝く防壁を、漆黒の呪詛が侵食する。バチバチと飛び散る銀と黒の火花、まさに稲妻のように、凄まじい勢いでひび割れが走り、そして――



 悲鳴のような軋みとともに、防壁が木端微塵に砕け散った。



「…………ッッ!!!」


 愕然と目を見開く光刃教徒たち。


 先頭、俺の一撃を直に受けた奴が、身体にめり込む刃を中心に裏返るようにして、自身の存在に耐えかねたかのようにバラバラに弾け飛んだ。バッチャァッと凄まじい勢いで血と臓物が撒き散らされ、周囲の仲間たちの顔を、赤と、絶望の色に染める。


「ひっ……ヒィィ!」

「うっワ、わァぁ!」

「あああああッッ!」


 あー。なんか、俺の前世の死に様を思い出すなぁ。


『許容量を超えた魔力を流し込んだらこんな感じになるのぅ』


 なんか実体験に基づいてそうな感じやめて?


 それにしても、新境地を見出しちまったよ。


 呪詛撃……とでも呼ぼうか。魔力を集中させて威力を高めるだけじゃなく、相手の魔法抵抗まで侵食して、丸裸にしてブチのめす。物の理への冒涜、ここに極まれりって感じだ……。



「――さあ、さっきまでの威勢はどうしたァ! 光刃教!!」



 気を取り直して、とりあえず煽る。



「ばっ……化け物め!」

「そうだ、化け物だ。お前たち帝国軍が『征伐する』と豪語した魔族だぞ? 征伐してみろよ。どうした? 手品ももうネタ切れか?」


 剣闘士のように、両腕を広げて「かかってこい」と挑発するが、狂信者どもは青ざめた顔で何も答えない。おいおい……無意識か? 後ずさってるぞ。目の前に人類の敵がいるってのに、いただけねえなァ……!


 仮にも、討魔の銀の光をまとう者が。


 そんな体たらくじゃあ、許されねえよなァ……!!


「貴様らァ! 光刃教徒は、まるでなってない! 聖教会の勇者どもの方が、よほど手強かったぞ! 俺からすれば児戯に等しかったが、それでも、手品のレパートリーも豊かでなかなか楽しませてくれた! ……それに対して貴様らはなんだ。聖教会の見習いが使うような基本の技を、延々と性懲りもなく……つまらん!!」


 吐き捨てるように。


「だが……ここで、お前たちをただ殺し尽くすのも惜しい。一応、基礎はしっかりできているようだ。お前たちは、鍛えればもっと強くなれる。お前たちがもっと歯応えのある獲物になれば、魔族おれたちはもっと戦を楽しめる……!」


 そんな「何言ってんだこいつ」みたいな顔やめてくれる? 我に返っちゃいそうになるからさ。


「そこで、お前たちにひとつ提案がある」


 俺は努めて、模範的な魔王子の振る舞いに徹する。



「――お前たちも聖教会の一員にならないか?」



 手招きするように手を掲げ、光刃教徒たちに向かって、言い放った。


「「……は?」」

「聖教会に教えを請え。聖教会に宗旨変えとまでは言わずとも、人類の敵と戦うためであれば、奴らは喜んで技と知識を伝授するだろう。お前たちは、とにかく応用力が足りない。そこを補えれば――聖教会が培ってきた技を吸収すれば、きっと今よりも強くなれる。……どうだ?」


 正直、ポテンシャルは感じる。帝国軍はクソだけど、光刃教徒だけは対魔王軍戦線でも活躍できるかもしれない。このまま鍛えれば、そこそこの氏族の軍団とでも渡り合えるようになるだろう。



『人類の敵』と戦う者なら――返事は決まってるよなァ?



「「――ふざけるな!!」」



 が、狂信者たちは、俺への恐怖を忘れたかのように怒鳴る。


「我らの教えを冒涜するつもりか!」

「腐敗した聖教会から、真の神々の教えを見出したのが光刃教だ!」

「旧態然とした堕落者どもに関われば、我らの身も穢れるであろう!」


 ん~~~~?


。お前たちは、信仰の形と実際の力、どちらが大切なのだ?」

「そんなものは決まっている!!」

「「信仰だ!!!」」


 異口同音に。


 あ、……そう。


 薄々勘づいてはいたがね。光刃教の布教を図るために、聖教会との徹底的な差別化が行われているであろうことは。そして光刃教を帝国にとって都合のいい勢力にするため、聖教会をこき下ろして心理的に分離させつつ、教義の先鋭化が進んでいるであろうことも……。


 でも、そうか、これほどか。



 アンテ。



『うむ』



 ――こいつら、ひとりも逃がすな。



『相わかった。【逃走を禁忌とす】』



 ズンッ、と異質な魔力の圧が、戦場にのしかかる。



「【連携を禁ず】」


 さらに俺も追い呪詛で、狂信者ども――いや、盲信者どもの連携をかき乱し、魔法抵抗をさらに下げてアンテの呪詛の効き目を高めておく。


「お前たちの考えはよくわかった。ならば、その教えに殉じるがいい」


 フゥ――ッと細く長く息を吐いて、魔力を活性化させる。


 ハッ、と光刃教徒たちが息を呑んだ気がした。今までの、闇のオーラを見せびらかすような魔力使いとは一線を画す、必要最低限の身体強化。どこまでも最適化された魔法の行使に、これまでと異なる空気を感じ取ったのかもしれない。



 事実、俺は切り替えていた。



 演舞から、武へ。



 純然たる殺人術へ。



「【絶望せよ】」


 ――手近な光刃教徒を、斬り捨てる。ついでに呪詛撃の練習もしよう。


 俺の刃を受けた人体が、ぶぱっと血煙となって四散する。


「【絶望せよ】」


 間髪入れずにもうひとり。


「【絶望せよ】」


 さらにもうひとり。


「【絶望せよ】」「【絶望せよ】」「【絶望せよ】」「【絶望せよ】――」


 闇夜の戦場に、赤い花が次々に咲いていく。


「うわああ! うわああああああ!!」

「たっ、たすけっ!! たすけてくれぇ!」

「陛下ーっ!! 神様ーっっ!!」


 豪快に、かつ淡々と刃を振るい始めた俺に、恐慌状態に陥った光刃教徒たちが四方八方へ逃げ――ようとしたが、アンテの【禁忌】により、ほとんど動きが取れない。


「ひっ、ひぎっ、足が! なんでぇ!!」


 あ、無理やり逃げようとして、足が引きつって転んだ。流石に転がった奴にまで、呪詛撃はいらないかな。


 軽く刃を振るう。スッと首筋を撫でて頭ポーン!


『随分と思い切りがいいのぅ、殺すに惜しいのではなかったのか?』


 惜しくは思った。


 でも、もうダメだよコイツら。


『人類の敵と戦う使命』より、何の益もない『信仰』を優先させやがった。聖教会の紛い物より、なお酷い。国にとって都合よく教義を捻じ曲げたせいで、完全に別物に成り果てている。


『信仰』なんかより、『人類の敵と戦う力』の方が大事に決まってるだろ?


 こいつらは、人類の庇護者の立場を投げ捨てたんだ。


 当然、銀色の光を身にまとう資格は、ない。


 そして聖銀呪は、人族の集合意識を源泉とする力だ。聖銀呪の使い手が希少なのは確かだけど、同時に、聖銀呪は有限の力でもある。


 ならば、こいつらに浪費させるより、他の勇者や、これから誕生するであろう新たな使い手に分配されるべきだ。


『こやつら当人、光刃教徒たちが生み出す力もあるじゃろうがのぅ。まあ無駄に基礎がしっかりしていて出力が高いだけに、殺した方が結果的にはマシかもしれん』


 そういうこと。




「たっ、たすけ……たすけて……!」

「いやだ! こんなところで、死にたくない!」

「神様……お助けください、神様……!!」


 あーあー。


 呪詛撃の余波でガリガリ精神が削られているせいもあるが、正視に堪えない様相だなこりゃ……。


 泣き喚く者、命乞いする者、ただただ祈りを捧げる者――アンテの【禁忌】で体が硬直してしまい、それでも芋虫のように這いずって、必死で逃げていこうとする者もいる。


 本当に、見るに堪えない。


 ブチ殺すと決めたが、流石に後味は悪いな……。


 だけど……やっぱダメだよコイツら。いや、光刃教は、ダメだ。


 聖教会で見習いが真っ先に教わるような、基礎の基礎がなってねえ。


『ほう? なんじゃそれは』


 聖銀呪を発現して、教導院に入ったら、まず習うことだ。



【絶対に諦めてはならない】



【どんなに絶望的な状況でも、戦いを放棄してはならない】



【剣が折れたなら、獣人のように噛みつき引っ掻いてでも傷をつけよ。必要とあらば森エルフのように森に潜み、ドワーフのように火中に身を投げ出し、ドラゴンのように獰猛に、そして悪魔のように狡猾に、自らの命を引き換えにしてでも敵を討て】



【もしも敵を討ち果たしきれずに、息絶えようとも、その勇気ある行動は決して無駄にならない。なぜならそうして傷ついた敵を、次なる勇者が必ず討ち果たすから】



【だから、決して戦いを諦めてはならない】



【心が折れてもなお、敵を討て】



 ――ってのが、勇者や神官の卵が、教導院でまず叩き込まれる『基本』さ。



 こいつら、それがなってねえや。俺は、もぞもぞと逃げていこうとする光刃教徒にトスッと刃を突き立てる。



『なるほどのぅ。所詮は紛い物ということか』



 アンテは感心したように言った。



『聖教会こそ、真の狂信者よ』



 ん? 何が?



『そういうとこじゃ』




――――――――――――――――

※勧誘ジルくんのイメージは「お前も鬼にならないか?」です。

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