第3話
「佐久間くん。どこか寄りたいところあるー?」
下校の途中、美桜が僕に尋ねてきた。
「そうだなあ……。ムックとか?」
「ムック! いいねー。ちょうどハンバーガー食べたかったんだ。」
僕が提案すると、美桜は笑顔で賛成してくれた。笑顔が可愛すぎて、反射的に目を瞑ってしまう。
ムクドナロド。それは全国チェーンのハンバーガー屋だ。ネーミングセンスはないと思うが、ハンバーガーの味はどの店にも劣らない。ハンバーガーは、だ。
「美桜はどこかある? 僕は時間あるから、寄りたいところあるなら言ってよ?」
「ううん、特にないよ」
「ん、そっか」
「うん」
僕が黙っていると、美桜は突然手を握ってきた。
驚いて手を振り払うと、少し拗ねた表情をした。
「なんで手繋いでくれないの? 繋ぎたくないの?」
「ううん、違うよ。びっくりしただけ」
「そうなんだ。まぁいいけど」
彼女はぷいっと顔を逸らしながら言うと、再び手を握ってきた。
僕が握り返すと少し照れているのか、顔が赤くなっているように見えた。
数十分後、僕たちが歩いているとき。美桜は突然何かに躓き、転びそうになった。
僕は慌てて手を引き、転ばないようにと考えた。
それによって美桜は転ばなくて済んだ。
「佐久間くん……あ、ありがとう」
「ううん、美桜が転ばなくてよかったよ」
「うん……」
美桜は少し恥ずかしそうに俯くが、その後僕に視線を戻した。
「佐久間くん。ごめんね」
「え、うん。え?」
突然の謝罪に、僕は動揺してしまう。改めて、自分の気持ち悪さに気付かされてしまった。
「私が告白した理由、知りたい?」
彼女の突然の発言に、僕の心臓の鼓動が早くなる。
嫌な予感がする。
「えっ、うん……」
「実は、エイプリルフールだったからなんだ」
やっぱりそうか……。
「そう、だよね……」
僕が思っていた通りだった。だから期待したくなかったんだ。
しかし彼女は、続けて言う。
「でもね、好きなのは本当。私が不通に佐久間くんに告白したら、きっと迷惑をかける。そう思って……。」
彼女は涙を零しながら、僕の目を見つめて言った。
美桜からの予想外の発言に、僕は驚いたあまり反応に遅れる。
「そうだったんだ……」
「うん、ごめんね。こんなの、彼女にしたくないよね……」
彼女は涙を拭うと、そのまま走り去ろうとした。
このまま止めなくていいのだろうか。
いや、いいわけがない。
僕は彼女の名前を大声で呼ぶ。すると彼女は、驚きながら振り向いた。
「なんで、なんで止めるの……!」
「だって、僕も美桜のことが好きだったから」
彼女に似合わない泣き顔を見ながら、自分の気持ちを伝えてみる。
すると彼女は、僕に飛び込むように抱き着いてきた。
「うれしい……! ありがとね、佐久間くん」
「うん、こんな僕でもよければだけどね」
「ううん、佐久間くんがいいの。これからもよろしくね」
彼女は満面の笑みを浮かべると、僕の手を握ってきた。
僕も握り返し、途中まで一緒の帰り道を帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます