第2話
「明日エイプリルフールだね〜」
派手な髪色に少し厚めの化粧の女の子が言った。
彼女の名前は明石 結。私の親友であり、唯一心を許せる相手だ。
「そっか、もう明日から4月かあ」
「そうだよ〜。エイプリルフールだし〜、なにかしたいよね〜」
彼女はクルクルと巻いてある髪を弄りながら言った。
「うーん、そうだけど……。もうエイプリルフールにすることがないよ……」
「確かにね〜。高1の頃は先生に変装して授業をしたし〜、高2の頃は入れ替わって〜、お互いの彼氏を騙してたしね〜。正直ネタ切れかも〜」
「今年はどうするの? 変装とか、正直飽きたよ」
私がそう言うと結は唸り、暫くすると閃いたように手を叩いた。
「じゃあさ〜、クラスの中の誰かに嘘告白をするとかどう〜? 告白する相手はくじ引きをして選ぶ感じでさ〜」
正直私は乗り気ではなかった。勿論、私が告白に失敗すると思ってはいないが。
「えぇ……。嫌だよ。変なやつに告白して、付き合うことになったらどうすんの」
「その時はその時だよ〜。嘘だったってカミングアウトして、すぐに逃げ出せば多分大丈夫〜」
「またそうやって言うのね。今年も先生に文句言われるのは嫌だよ」
「大丈夫大丈夫〜。何かあったら私が助けるから〜」
彼女はふんわりとした声音で言うと、まるで説得力がない。
しかし、ふと思ってしまった。
普段派手な格好をしている子と絡んでいる私は、彼からしたら近付き難い存在だろう。
つまり、これはチャンスだ。彼に告白する口実を作ることができる。
「うう……。わかったよ。今年も結の提案に乗るよ」
「そう来なくっちゃね〜。やっぱり美桜はわかってるね〜」
「違うよ、断ると結が拗ねるからだよ」
「え〜? 私拗ねたことあったっけ〜?」
結は「あれ〜?」と可愛らしく言った。きっとこういうところでモテるのだろう。
「美桜これ引いて〜! くじで出た名前の人に告白する感じで〜」
「ええ……」
「はやく〜」
私は言われるがままにくじを引く。そして祈りながら引いた紙を開くと、そこには彼の名前が書いてあった。
「誰だった〜?」
「芋沢 佐久間」
「あっちゃ〜! あの子か〜。美桜頑張れ〜」
「ええ……」
嬉しい気持ちを隠しながら、わざと嫌そうな表情をする。彼女は笑顔で私を見てきた。笑顔だが圧を感じた。
結局その後、結の圧……いや、後押しで私は告白をすることになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます