第33話 雨

  夏樹side


今日は雨らしい。毎朝早くからやっているニュースバラエティー番組が大きな液晶テレビ一面に映し出されている。天気予報なんて見なかった俺が今日の天気を知っているのは間違いなく生活の変化のせいだろう。


台所に立つ千夏さんが言った。

「今日雨らしいから傘忘れずにね?」



そこで俺はある異変に気付いた。天花寺さんがいなかった。まぁ人にも人の事情があり、干渉すべきでないと思いそのまま...


「花音、いつまで寝てるんだ」


「あとちょっと...」


「遅刻するぞ?」


花音は飛び起きて枕元にあるスマホの電源を付けて

「やばいぃぃぃぃぃ」


部屋に響いた花音の声は俺をノックダウンさせた。



茶番はそこまでにして、このような朝が日常化されている。


千夏さんが朝ご飯を作って、花音が寝坊して



俺は傘を持ち学校へ向かった。




「夏樹おはよ~」


「おはよう」


「今日雨だってな~さすがにデートドタキャンだわ~」


相変わらずのクズっぷりを見せる雄太は楽し気にしている。


「何かあったのか?」


「夏樹が質問なんて珍しいな~」


「だってお前ずっと笑顔で訴えてくんじゃん」


「昨日な~3番目の彼女と合体したんだよ~」


「合体って言い方やめろ」


「じゃあなんて言えばいいんだよ」


「不純異性交遊」


2人の間に笑みが生まれた。

男子高校生はこのような会話で盛り上がれる。高校生ってホント無敵だよなと思ったりした。




学校も終わり帰路につく。マンションの手前まで来ると1人の女子高生が目に入った。その女子高生は傘も刺さずにびちょびちょの制服を着ていた。



「はぁ、忘れたのかよ」


「夏樹君!?」


濡れた制服が肌につき、少し透けたワイシャツを身にまとう天花寺さんを見ることができなかった。



「風邪ひくぞ?」


「大丈夫だし」






次の日



朝になっても天花寺さんが部屋から出てくることはなかった。また朝早くに学校に行っていると思い昨日同様スルーした。


千夏さんも見ていないらしく心配になって千夏さんが天花寺さんの部屋のドアを開ける。



「すごい熱!」


朝ごはんを食べながらその言葉を聞き俺は天花寺さんの部屋まで駆け付けた。


顔を赤くして体調が悪そうな天花寺さんが体温計を取り出して測った。


「38.1!?」


「今日は学校に行けないな」


「私、今日大学あるのよ。面倒見ることができない」


「千夏さんは大学に行ってください」


「でも綾香が。。。」




俺は息を大きく吸ってこう言った




「僕が看病します!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る