第32話 女子会

「夏樹君寝てるわよね?」


「さっき見たけれど寝てたよ」


「夏樹君にばれちゃったらまずいですね~」




夜な夜な女子大生1人と女子高生2人が一つ席の空いたダイニングテーブルを囲んで話していた。



「まだお2人にお会いして間もないのですが、私は大学生の成田 千夏ですこれからよろしくお願いします」


「千夏さん敬語はやめてくださいよ~千夏さんの方が年上なんですし」


「ではお2人は何と呼べばいいですか?」


「私は綾香でいいですよ!」


「私は花音で!」


「分かったわ。ところで綾香と花音は夏樹君のことどう思っているの?」


一瞬びくっとする2人。先に口を開いたのは


「私は前から同居させていただいてる身なので...」と綾香は言った。


「千夏さんに教えてあげる、綾香ちゃんが話しているときに髪を触っているときは本心と違うことを言ってる時なんですよ~」


「あらそうなの?覚えておくわね」


「ちょ花音!?そんなんじゃ...」


3人の間に笑いが生まれた。


「そう言う花音はどうなのよ?」


「まぁ嫌いと言ったら嘘になるかも...」少し照れながら言う花音を見て千夏が


「花音も綾香も可愛いわね」と言った。すると花音の顔はさらに赤くなり綾香は花音に負けないほどに急に赤らめたのであった。






  夏樹side


長かった週末が明けてまた憂鬱の1週間が幕を開けた。


「夏樹知ってるか?」


「知らない」

今週もまた雄太が話しかけてきたので追い返した。だがこいつも人の話を聞かない男である。


「女の子のこと知りたいと思わないのか?」


「思わないかもな」


「女の子同士の会話って90%がお世辞なんだって」


「それは女子には失礼じゃないか?」


「だってよく耳にする~ちゃんかわいい~とかってさもう挨拶の一環レベルって感じないか?」


「それは確かに。」


「そこで俺はこの説を唱える。『おっp』」

キーンコーンカーンコーン


チャイムの音に遮られた雄太の説は人類の退化を表すようなものだろう。



俺は廊下で天花寺さんが同学年の女子と話しているのを見た。


あの会話の中にも90%お世辞が詰まっているのか。

そこにはあの3人に当てはめてしまう自分がいた。仲が悪くなったらどうしよう、そんな事を防ぐために考えたのが




『お世辞禁止』だった10%を100%にしようと思った。




ダイニングテーブルの真ん中の紙に大きく書かれた『お世辞禁止』と言う文字を見て



「なにこれ」

「どゆこと」

中には無言で無視した人もいた。





今日、今この瞬間から『お世辞禁止』生活が始まったのだ!




自室の椅子に座って本の33ページを開けると

「恋とは空からの贈り物」


と書かれていた。



















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