第27話 仮?

  夏樹side


急な花音の言葉に俺は反応が出来ない。


はっきりと聞こえた。聞こえたから反応出来るってわけじゃない。


「花音?どう言う意味だ?」


「あっ、その色々あって。付き合ってほしいな~ってさ」


「色々?」


その後色々の正体を何から何まで全て話してくれた花音をもう一度見つめる。


花音はどこか恥ずかしそうで

でも本気で言っていたようにも見えた。


一応俺はある1つの可能性を潰して置いた。



「ま、まさか『嘘コク』ってやつじゃ...」


「そんな訳ないじゃん!私は本気なのに...」

強い口調で遮った花音。下を向いた花音。


コンクリートの上にぽつりと涙が垂れた。



「ごめん!悪かった。」


「うん、で?」

上目遣いで後ろに沿った俺の身体に体を密着させて来る花音。やわらかい感触。ぷるんとした唇が近づいてくる。それに甘い香りが俺を包み込んだ。


うわぁぁぁぁぁ!!


「なーんてね」


「はぁ良かった。」

俺がこう言ってもう一度花音を見ると深刻そうな顔で


「偽の恋人になって欲しいの」と言った。理解が出来ない。この次元にそんな物が存在していいのであろうか?


「なんでだ?」率直な疑問をぶつけた。


「うーん、だって今日の顔合わせを通り抜けるには彼氏いるって言えば終わるじゃん?」


「そうなのか?」


「うん。多分だけど」


「じゃ、じゃあ。。。とはならないよな」


「え」


「そんなの面倒だしお前に迷惑かけるのは俺の方だ。だから直接お父さんに無理って言った方がいい」


「そうだよね」


俺は今まで花音に助けて来てばかりいた。今度助けるのは俺の番だと思っていた。けれどこの話は流石に...


雄太からLINEが来た。


【男見せろよ】

何こいつ怖。見てんの?


雄太から初めていい言葉が聞けた気がする。女の子を助けるのが男の役目なんだ。アニメよ本当にありがとう。


それを初めて教えてくれたのはアニメだったんだ。いつもヒーローに憧れ、ヒロインを助けるその姿はかっこいい。



俺は信号を渡ろうとする花音の右腕を取った。


「分かった。俺が彼氏になる!」


思いのほか強くて顔と顔が近かった。その瞳からは涙が溢れていた。


「ごめんな。花音」俺は強く花音を抱きしめて花音の耳元で言った。


「バカ夏樹」





花音の家族が待つレストランに着いた。黒いスーツを身にまとった店員さんが席を案内して俺と花音は...






  綾香side


「遅いわね。LINEも既読つかないし。昨日の今日よ!?」


私は夏樹君の実家から持ってきてしまった写真を手に取り見ていた。



今の夏樹君にどこか似ている写真の夏樹君はかっこいいと言うよりは可愛いかった。するとスマホが鳴った。


すぐに手に取りLINEのアプリを開くと


夏樹:すまない。今日も遅くなってしまって。今から帰る


嬉しいような悲しいような複雑な思いだった。


やっと帰ってきてくれる。



ガチャと言うドアが開いた音に反応して私はすぐに玄関へ行った。



「おかえり~」


「へっっ!?」



私に向かって倒れてきた夏樹君を抱きしめた。


「どうしたの!?」


「色々疲れすぎてもう...」



どうなるのやら。



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