第23話 海

  綾香side


朝、声がした


「いつまで寝てるんだ~?もう朝だぞ」


早起きするって決めてたのに。失態だ。


「夏樹君ありがとう。おはよう」


「海行くんだろ?」


「えっ?やった!」素直に一緒に行けることが嬉しかった。






南中した太陽の熱に照らされた海。綺麗だった。Instagram用の写真を一枚パシャリと撮り、私と夏樹君は水平線に向かって走り出す。私たち以外に人はいなかった。


「夏樹君って泳げるの!?」


「あぁ、まぁ一応」


「そうなんだ。意外だね」


「意外とはなんだ!」


「それっっ」

私は夏樹君に向かって両手で掬った海水を掛けた


「冷たっ。やったな?」

夏樹君は私に仕返ししてきた。


「きゃっ」


ずっとこんな楽しい時間が続けばいいな




「もう帰らないと。明日学校だし」


「そうだね。楽しかった~」



私と夏樹君はいつもより会話を弾ませながら歩いた。



「2日間あっという間だったな~」


「そうか?でも天花寺さん楽しそうだったね」


「うん!めっちゃ楽しかった!」


「それは良かったよ」


「夏樹君ありがとう」


「おう!」



荷物の整理をしていると夏樹君の部屋の棚に置いてある写真が目に入った。


「なにこれ?」


「その写真か?」


写真には夏樹君らしき人の隣に夏樹君のお母さんともう1人、ある『少女』がいた。


「その写真に写ってる人はね、俺を助けてくれた人なんだ」


「そ、そうなんだ」

どこかで見たことがある顔だと思った。



「まぁ流石に違うよね」


「もう行くぞ~」と夏樹君の声がしたので急いでバッグを肩にかけ、『写真』もそのままバッグに入れてしまうのであった。





「本当に楽しかった~」


「あんな楽しそうな天花寺さん初めて見たかもね」


「そうだっけ?」


「うん。」


「そっか」



「楽しそうに笑ってる天花寺さん、可愛かったよ」


ドクンと一回大きく心臓が動いた。


「そ、そう。ありがとう」



そう言うことを何も考えずに言うから夏樹君は...



「なんでこんなになってるんだろう。」


と胸に手を当てる少女がいた。



  夏樹side


土日は楽しかったけど疲れた。


「夏樹お前彼女出来た?」

だがこうして雄太に喋り掛けられるのが一番疲れる。


「出来て無いが何か?」


「いや、お前変わったよな」


「そうか?」


「うん。前までは死んだ魚見たいな目してたけど今はなんか女の子考える目してる」


「それ、結構傷つくんだが。」


「ダブルデート出来る日を待ってるぜ」

と言って自席に戻った雄太を見て考えた。


「女子の事を考えるかぁ。」



思い当たる節があり過ぎた。。。





学校が終わって俺はある高等学校に向かった。



  花音side


「おまたせ~」


「おう。今日はなんだ急に」

夏樹は疲れているように見えた。


「なんでそんなつまらなそうなの~?」


「至って普通だぞ?」


「そう?今日はスイーツバイキングに行きたいの!」


「何で俺と?お前友達死ぬほどいるだろ?」

よくぞ聞いてくれました。


「友達とだとお腹いっぱい食べれないじゃん?」

私は胸を張って堂々と言った。


「要するに俺は気を使わない要員って事ね?」

理解が早くて助かった。。。




今、スイーツバイキングのお店の前に2人で入った


何皿もスイーツの乗ったお皿を持っていく。それを見て夏樹は少し引いていた。


「いっただっきまーす」

口を大きく開き持って来たケーキをフォークで運ぶ。


舌触りがよく甘い生クリームを上手く中和する甘酸っぱいイチゴ。そしてふわふわと食べ応えのあるスポンジ。とっても美味しかった。



「花音ってそんな食べるのか?」


「わ、悪い?」


「いや全然。」

少し前よりも会話が弾まなくなってしまったと思った。




「家まで送るよ」


なんだかんだで優しいところがある。そんな所が好きになっちゃったのかな。




「送ってくれてありがとうね」


「またな」


「ちょっと待って!」

心の準備が出来て無かった。呼び止めたのは良いものの。。。



「なんだ?」



「あの...その、」






次回期待でっす!






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