第22話 たくらみ
綾香side
今私はとてもヤバイ。
夏樹君の元部屋?にある小さな机を挟んで対面して座っている。
沈黙が続く...
「はーいお茶持って来たわよ~」夏樹君のお母さんがお茶を小さな机に2つ置く。
「ありがとうございます」
また沈黙だ。
すっかり辺りは黒く覆われていく。
すると下の階から「ただいま」という夏樹君に少し似た低い声がした。
「父さんだ」
私はあいさつに行くため階段を下る。リビングに行くとそこに体格のいいどこか夏樹君に似た人がいた。
「こんばんは。天花寺 綾香と申します。夏樹君と一緒に住まて頂いております」
威厳のある夏樹君のお父様は少しの間黙って
「...そうか。君たちが良いと言うのなら口出しはしない」と言った。
認めてくれた気がして嬉しかった。
ドアの前でじっとこっちを見ている夏樹君。
台所でこちらの話を聞いている夏樹君のお母さま。
「ところで、夏樹が変なことしてないか?」
「俺そんな信用されてないの!?」
夏樹君が割って入る。そんな夏樹君は笑っているように見えた。
「さぁ夕飯にしましょ!」夏樹君のお母様が大皿をダイニングテーブル置いた。
テーブルを4人で囲むのは記憶上初めてだった。
「これが家族か」
「天花寺さん何か言った?」
「ん?何でもない。いただきます」
自然と瞼に少し雫が乗った。
夏樹side
風呂に入り自分の部屋に戻ると天花寺さんが何か本を読んでいた。
「男の子ってこう言う女の子が好きなの?」
読んでいたのは唯一実家に置いてきた漫画『五等分の花嫁』だった。
もちろん保管用のやつだよ?同じ巻を3冊は買う。
「それは、その...」
「夏樹君の部屋にもこれなかったっけ?」
バレてたーー。
「何か悪いか?」
「いや。全然いいんだけどさこの中に推しとか居るの?」
「あんま言いたくないんだが」
「いいからさ」
「この、赤髪の子だよ」
「そ、そうなんだ。良いと思うよ?」
完全に気を使わせた。。。
その後俺と天花寺さんはお風呂に入った。
もちろん別々だよ?
「髪濡れてるね。乾かしてあげる」
天花寺さんは洗面所からドライヤーを持って来た。俺がベッドに寄りかかり天花寺さんはベッドの上に座った状態で髪を乾かしてくれた。
「ありがとう。天花寺さんの髪も乾かすよ」
「えっ?私?いいの?」
俺の髪を乾かし終わったので場所を交代した。部屋着なので当然私服よりも露出が目立っている。白くて透明感のある肌はとても美しかった。
「ん?どうかした?」
「いや、女子ってこんな髪長いのによくやっていけるなと思ってな」
「結構慣れなんだよね~毎日可愛くなりたいって思えば出来るもんだよ~」
「もう可愛いと思うけどな」
「えっ?」
素直に感想を言ったところ天花寺さんは顔を一瞬で赤くした。
天花寺さんの髪を乾かし終わったところで俺が床に敷かれた布団に、天花寺さんが前の俺のベッドに横になった。
喋らなくなってしまった天花寺さんと同じ部屋で寝るのは何回目だろうか。
横になってからしばらく経った。
「夏樹君?」
「ん?なんだ?」
真っ暗な部屋の中で俺の名前を呼ぶ声。
「寝れない」
「そうか」
「今日夏樹君のお母様とお父様が優しくしてくれて本当に嬉しかった。」
「それは良かったよ」
「こんな生活してみたかったんだ。どこか普通の生活に憧れてたんだ」
今にも泣きだしそうな声で続けて言った。
「だから、夏樹君には本当に感謝しきれないほどありがとうって思ってるしこれからもずっと居たい」
その後に天花寺さんは立ち上がってこう言った。
「『月が綺麗に見えます。少し歩きませんか?』」
紛れもない赤髪の子のセリフだった。急いで天花寺さんの声のする方へ眼をやった。優しい瞳。天使のような笑み。優しい声につられ俺も立ち上がった。
「寒いな」外に出て歩いているのは良いものの夜は流石に冷える。
「そうですね。さっきのセリフ心に来ましたか?」
「そこ掘り返すんだな。確かに心に雷が降ったみたいだったよ。でも本物はもっと気持ちが籠ってた。」なんて言いつつも本物と瓜二つぐらいレベルが高かった。
「ダメだしですか?結構頑張ったんですよ?」
「明日どうするか~?」
「海に行きたいです!」
「そうだなぁ。」
「行きましょうよ~青い海に飛び込みましょ~」
「うーん」
正直泳ぐのは大嫌いだ。泳げない訳ではないがわざわざ泳ぎたいとは思わない。
「行くかぁ」
「やったー!」
深夜なのに子供のようにはしゃぐ天花寺さんはとても可愛らしかった。
近所を一周して戻って来た。
「夏樹君ありがとう。ずっと一緒に居られるといいな」
「えっ?今なんて?」
「何でもないよ!ドンカン君」
「へ?」
眠りにつこうとするが天花寺さんの言葉が頭から離れなかった
『月が綺麗に見えます。少し歩きませんか?』
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今回も読んでいただきありがとうございますます!
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