第21話 遠出
綾香side
夏樹君の実家に行く日の前日
「結構遠いんですか?」
「全然遠くないよ。何駅か先の海の前が最寄り」
「では水着を用意しないとですね」
「水着!?」
「何か考えちゃった?」
赤くなった夏樹君に追い打ちをかける?
「ち、ちがうんだ。まだ6月だし寒いかなと思ってな」
「たしかに、まだ早いかもですね」
私たち二人の会話にぎこちなさが追いつけない程度にはなっただろうか。
そして迎えた出発当日。不安そうな夏樹君と一緒に部屋を出る。私は白のワンピースと、夏を意識した服装。一方の夏樹君はパーカーに下はジャージだった...
「その服なんだ」
「何かおかしいか?」
きっと毎日いるようになってしまったせいで女子に私服を見られるという焦りがなくなってしまったらしい。
「ちょっとその服装通用するのは小学3年生ぐらいまでかと」
「そっか」
え?それで終わり?着替えてくるとか無いの!?
私は夏樹君の腕を取り駅までの途中で通りかかったおしゃれな服屋さんに入った。
「「いらっしゃいませ~」」
店員さんの合わさった声が私たちを迎えてくれた。
「試着室の前で待ってて」
「お、おう」
私は友達がいないけど流行には敏感なので今はやっているコーデを思い出し何個か夏樹君の待つ試着室の前に持って行った。
「着替え終わった~?」
「一応ね」
カーテンを開きこちらを向く夏樹君と目が合った。
「か、かっこいい」ぐらいの感想しか出てこなかった。
「ん?なんて?」
「な、な、何でもないの。さぁ次の服も着てみて」
私ながら服よりも顔を見つめてしまった。。。
「結構気に入ったからどっちも買うね」
「そ、そう。」不愛想な反応をしてしまったが、自分の選んだ服をどちらも気に入ったって。
本当に嬉しかった。
私の選んだ服に着替えてくれた夏樹君と私は『カップル』と言うのやらに見えるのであろうか。
理想の身長差などをウェブサイトで見た時に何でも夏樹君に当てはめてしまうのもまだ私って子供だな~なんて思ってしまう。
肩を寄せ合いながら電車に揺られる私と夏樹君。たまに肩と肩が当たる。だがそんな時間もあっという間に過ぎて
「次の駅で降りる」
電車が駅のホームから発車した。私たちの視界を遮っていた電車がいなくなるとそこには...
「「綺麗」」2人の言葉が合わさった。
2人の視界の先には青く光る海があった。
「ここで泳ぐのかぁ」
「え?ホントに海入るの?」
???
夏樹side
実家の玄関の前で迷える子羊が2匹いた。
「母さんは前会ったから分かると思うけど父さんもなかなかだから気を付けて」
「それはどう言う?」
天花寺さんの言いたいことを聞かずにドアを開ける。
「ただいま~」
「あら今帰ったの?」奥から母さんの声がした。
「お邪魔します。」と堅い天花寺さんに
「いらっしゃい綾香ちゃん。さぁ上がって」と母さんは声を掛けた
築17年の一軒家。俺が生まれると同時に建てたらしい。3人で暮らすには大きすぎるくらいで物置と化した部屋が2部屋程ある。
リビングで出された紅茶を飲みながら談笑をしている。
「本当に夏樹に何かされてない?」
「俺を信用しろ」
「怖いくらい何も...」
「天花寺さんも答えなくていいの!」
「あらそう。」
母さんは俺の事を無視して話を進めている。
「夏樹のこと好きになっちゃった?」
「ひぇっっ!?」
「ぶっっっ!」
含んでいた紅茶を吹き出しそうになってしまった。
「本人前にして何言ってんだ。気にしないで天花寺さん」
天花寺さんの方に視線を移すと...
顔が真っ赤な天花寺さん。微動だにしなかった。
「天花寺さん!?どうしたの??」
「はっ!?何?夏樹君」
「顔真っ赤だよ?」
「いやこれは違うの。図星だったからとかじゃ全然ないの」
「図星?何が?」
「何でもない!」
明らかにおかしい天花寺さんを本気で心配する夏樹であった。
「これは時間の問題ね...」
何かを企む人がいた。
✄----------------------------✄
今回も読んでいただきありがとうございますます!
面白い!可愛い!と思った方はフォローとレビューよろしくお願いします!
辛口レビューもよろしくお願いします🤲
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます