第15話 噂

   夏樹side


学校に到着したころには授業が始まっている時刻だった。


「じゃまた放課後な」


「はい!」



階段に一番近い俺のクラスのドアを開ける。


ガララララ


授業に集中していた生徒の目線が一斉にこちらに向かう。


それと同時に開いたドアの隙間から黒髪の少女が通りかかる。



「夏樹どうしたんだ」


「なにがだ?」

クラスのみんなの冷たい視線が俺に向けられた。


「天花寺さんと一緒に来たのか?」


「あ、いやっ違うたまたま会っただけだ」


「そらそうだよな。あるわけないよな」


一矢報いた。


昼休みになっても噂は止まらなかった。


どうしてだ?



「夏樹~お前嘘つくなよ~」


「どうした?」


「やっぱり一緒に来てたんじゃないか」


「は?なんで?」


「天花寺さんが言ってたらしいぞ」



あ、まじか。


  

   綾香side


今日は朝からよく話かけられた。


「なんで遅刻したの?初めてじゃない??」

「男の子と来てたんだって?」



なんでいつもは話かけてこないくせに何かあったら聞いてくるの。


追い返すのもいい手だと思ったけれど理由を話す。

「寝坊したの」

「えぇそうよ」




別に大丈夫でしょと甘く考えていた私がいた。




どこで待ち合わせなんだろうか。



とりあえず昇降口で待っていると体格のいい人2人に肩を組まれ体育館の方へ連れて行かれる夏樹君がいた。


夏樹君を追って行くと人目に付かない体育館の裏で怒鳴っている人がいた。



「お前今日天花寺 綾香と来たらしいな」


「えぇまあそうですけど。なにか?」


「お前みたいなクソチー牛が釣り合うわけ無いだろ?」


「それもそうかもしれないですね」


「分かってんじゃん。これから近づくなよ」

強く何かが叩かれる音がした。


バンッ!




「ちょっとあんた達なにしてんの!?」


「噂をすれば天花寺 綾香さんじゃないか」


「なんでなつ、青井君に手を出しているわけ?」




「天花寺さん逃げて。。。」

鼻から血を流し目には既にあざがある夏樹君が言った。



「そんなの出来ないよ!」


「いいから逃げて!天花寺さんまで巻き込みたくない!」



私は一発夏樹君の胸ぐらを掴んでいる方に殴った。


だが勝てるわけもなく

「天花寺 綾香さん。俺に勝てる訳ないだろ?」と言われ肩を強く押されコンクリートの地面に転がってしまった。


「天花寺さんっっ!」



「悔しかったらやり返して見ろよ」


意識がもうろうとするときに風向きが変わった感じがした。



   夏樹side


天花寺さんにまで手を出した事で俺の怒りは最絶頂。


久しぶりに胸から込みあがる怒りを感じた。


「女の子に手は出さないって教わらなかったか?」

俺は俺の胸ぐらを掴む手の手首を握り片方の拳で顔面向かって殴った。


そいつは倒れも一人のモブも腹パン一発で倒れた。


すぐさま倒れこんだ天花寺さんのもとへ向かい手を差し伸べる。



涙を流しながら

「ごめんね夏樹君。私のせいで」


「もう終わった事だ。一回俺たちの家に帰ろう」


「うん。」

天花寺さんの涙の雨が止むことは無かった。



「うわ~ひどい傷だな」


「ひぇっっ!」


「我慢してくれ」


「夏樹君も目すごい。」


「あぁ俺は大丈夫だ心配するな」


「じゃ日用品買いに行こ?」


「いやぁそれは厳しいかもな~あはは」



「顔見せて」


「ありがとう」



2人見つめ合っているとインターホンが鳴った。


「はーい」と玄関に向かうと同時に


ガチャとドアが開く音がした



「あら夏樹久しぶりね~」


「よう母さん」


「顔どうしたの?で同居しているお方は?」


「は、初めまして。天花寺 綾香と申します」


「そんな堅苦しくなくていいのよ」


「はい」



「少し3人で話しましょう」


「あぁ」

「はい」



この会議がこれからを大きく動かすことになる。



4人用のダイニングテーブルに天花寺さんと隣に座り母さんと対面になるように座った。



「ウチとしては住んでも良いのだけれど、綾香ちゃんと親御さんは許してくれるのかしら」


「まだ言ってないのですけれどおそらく大丈夫だと思います」


「じゃあ綾香ちゃんがいいならいいよ~それより夏樹はどう??」


「それよりじゃないよ!!心配とかないの?」


「綾香ちゃんがいいって言ってるんだからいいでしょ?」


「はい!」

目を光らせながら威勢よく返事する天花寺さん。



「綾香ちゃん一緒に夕ご飯を作りましょ!」



夕ご飯を済ませ2人は仲が良いようでお風呂に入っている。話している声が嫌でも聞こえる。



「きゃ~綾香ちゃんおっぱい大きい~」


「そうですか?」


「スタイル良いし夏樹のお嫁さんになって欲しいよ~」


「おっ、お嫁さんですか!?」



思春期男子高校生ってことを忘れるな。



2人で出てきてこう言った。


「残り香楽しんでね」


「うっせ」



俺が風呂から上がった頃にはソファの上で2人話していた。


「夏樹信用できる?性欲モンスターかもよ?」


実の息子のことをそんな風に言うな。


「大丈夫です!信用してない人の家に住みたくないですから」


「つまらなくなったり、襲われたらいつでも私に言ってね」


そんなに俺襲いそう??


「昔は夏樹、人間不信だったの」


「そ、そうなんですか」


「でも綾香ちゃんがいれば大丈夫そうね」


「頑張ります」





こうして俺の親には認められた2人暮らしがスタートしたのであった。




「はかどらないな~」テストまでの時間が迫ってくるのであった。







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