第14話 笑顔でいて

「もう補導されちゃうぞ」


「夏樹君」


「ずっとここにいたのか?」


「うん」


「じゃあこれ飲め」

と言って袋からあったかいミルクティーを出す。


「いつもありがとう」


「家から荷物持ってこなくていいのか?」


「そうだね...」


「俺も手伝ってやるからさ、一回帰ろう」


「うん」



天花寺さんの部屋に初めて入った。甘い香りとぬいぐるみがたくさん置いてあった。


女子の部屋感がすごかった。そんな中目に入ったのは


天花寺さんの家族写真だった。4人で撮っている写真の天花寺さんのらしき人は幼かった。


片付けが終わった頃にはもうすぐ日が変わろうとしていた。


「今日はさ俺の家に泊まっていいからさ」


「ありがとう」と言う天花寺さんは今にも涙が溢れそうだった。





次の日、月が替わり契約満了した。


「俺も今日バイトだからさ学校終わっても家に帰れないんだ。だから...」


「分かった。気を使ってくれてありがとう」




バイトが終わり電車に乗り駅に着いた。



駅の前で駅員さんに囲まれている人がいた。


通りかかる人もそっちを見ている。




近づいて駅員さんの隙間から見えた顔は泣きながら下を向いている天花寺さんだった。



俺は一度見て見ぬふりをした。俺には関係のない事だと言い聞かせて立ち去る。


最低だ。分かっている。




   綾香side


私は帰る家もないので駅のベンチで座っていた誰もがこっちを見てくる。しまいには駅員さんが話しかけてきた。



どれだけ経っただろうか。駅員の話なんて聞く気も答える気力もなかった。



すると改札口の方から夏樹君らしき人が出てきた。


自然と涙が出てくる。涙でシルエットしか分からなかった。


「夏樹君助けて」




目をこすり顔を上げるとそこに夏樹君は居なかった。


やっぱり違かったのか。



しばらくして警察が来た。

「親御さんは居るのかな?連絡出来る?」

「警察署まで来てもらわなくちゃいけなくなっちゃうのよ」



警察に手を取られ連れて行かれそうになった時に


「天花寺さんお待たせ!遅れてごめん」


さっきのは本当に夏樹君だった。



警察は手を放したが私は行く気が無かった。迷惑をかけてしまうから。



夏樹君は歩み寄り私の手を握って言った

「一緒に帰ろう家に」


「で、でも」


「いいんだ。断った理由も全部どうでもいい」


「私迷惑かけちゃう」


「そんなのお互い様だよ。俺と住もう天花寺さん」


「ありがとう夏樹君」



涙。


崩れ落ちた私の手をずっと握ってくれる夏樹君の手は暖かかった。



「ごめんねあんなこと言って。彼氏面もしてごめん」


何も言えない。




夏樹君の家に着いた隣の家を見てしまう。



「お邪魔します」


「ご飯何が食べたい?」


「なんでも」


「じゃあカレーにするよ」



「結構時間かかってすまない」


「ありがとう」



「さっきは変な真似してすまなかった。嫌なら嫌でいいんだ」


「夏樹君には感謝しかないの。だから夏樹君と過ごしたいの」


「なら良かったよ」

優しいとしか言い表せることができなかった。


「なら明日生活用品とか買いに行こうか」


「荷物も持ってきていいですか?」


「敬語はやめてほしい。俺も手伝うからさ学校終わったら行こう」


「ありがとう」


「いつか笑顔になってね」


「分かった。でも今日はごめん」



お風呂に浸かりながらもれた言葉

「夏樹君」



2人は同じ部屋で夜を過ごしたのであった。



   夏樹side


「最近顔色悪くね?」


「あぁ寝れなくてな」


「ついに卒業したのか?あの夏樹が」


「おい、してない。童貞だ」


「そうだよな~いつでも相談乗るからよ」


「お前にはもう聞かない」


「そんな事言うなよ~」

こいつのアドバイスは絶対信用しない。



学校終わりにショッピングモールで待ち合わせをした2人はすっかり気まずさがなくなっていた。



フロントから大きな箱がたくさん出てきた。


「預かってもらっていたの」


「そ、そうなんだ」驚きだった。



部屋にすべての箱が運ばれた。


使っていない部屋のドアを開けて

「この部屋を使って」


「分かったありがとう」


「じゃ俺は夜飯の準備をするから」


「ちょっとこれからの事について話さない?」




決まったことは


「家賃は折半」


「家事は当番制」


「プライベート優先」



という事ぐらいだ。


「今日は2人で作るか」


「うん」



2人で台所に立つのは2回目。




夕食を食べ終えた俺にはミッションがあった。


「もしもし?」


「なんだい?こんな時間に」

両親への電話だった。


「あのさ、同居することになったんだ」


「はい。で?」


「女性と」


「うん。で?」


「お許しをください」


「明日行くからその女の子と待っていて」

ブチッと切られた。




「明日俺の親が来るってさ」


「分かりました。覚悟は出来ています」


「俺の両親面倒くさいから。ごめんね」


「住ませてもらっている身なので」


「じゃおやすみ」


「あのまだ慣れないので一緒に寝てもいいですか?」


「いいけど、俺なんか信じていいのか?」


「助けてくれた人を信じないなんておかしいですよ」


「そうか」



ベッドの上背中合わせで眠りにつく



そんなはずがない眠れるわけない。



寝ている間に何をするか分からない。ずっと睡魔と戦っていたらカーテンの間から光が差し込んできた。


ソファで少し寝ようと思いベッドから出ようとしたその時

「夏樹君」と天花寺さんの声がした。


寝言の様だった。しかしどんな夢を見たのだろうか。



ソファで寝ていると誰かの声が聞こえた。


「夏樹君!起きてください!遅刻してしまいます」


「なんだ?」


「もうすごい時間ですよ」



飛び起きて時計を見ると8:25だった。つまり登校時間まであと5分。


確定で遅刻だ。



遅刻してそれぞれの教室で2人を待ち構えていたのは!?






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