第13話 突然に
夏樹side
「結局全然遊べなかったな夏樹」
「そうだな雄太」
「まあ、夏休み頑張ろうな」
「ゴールデンウイーク終わったけど1か月後はテストじゃん」
「雄太今回はせいぜい頑張ってくれ前回4位」
雄太を何でもできると言ったが勉強は周りよりは高いが俺の方が順位は高い。
「そう言う夏樹も2位じゃんか」
「そう言えば1位って誰なんだろうな」
「確かに」
平沢高校では自分の順位だけ見ることが出来る変なシステムがある。
「自分で言わないってことは陰キャなんじゃね?」
「そうかもな」
綾香side
「今月限りでこのマンションとの契約を解除する」
と言う父の言葉に疑問しかなかった。
「え?なんで???」
「私は家にいる時間が少ないし、母さんも海外ばかりだからだ」
「パパとママとお姉ちゃんの家は?」
「私は会社の隣のホテルと契約する。母さんが帰国する時は空港近くのホテルに泊まるらしい。美咲は大学の近くで1人暮らしをするらしい」
「で、私はどうしたらいいの?この部屋は?」
「もう2か月前から話がついてるから来月からの入居者は決まっている」
「だから?」
「だから、新しい家を自分で見つけて欲しい。金は出す」
「無茶言わないでよ。お金の問題じゃないよ」
「そこは本当に申し訳ないと思っている」
この部屋ともお別れか~この部屋好きなのに。
これからのことを考える綾香だった。
夏樹side
ゴールデンウイークが終わって学校が終わり家に帰るとマンションのフロント前で天花寺さんとばったり会った。
いつもと様子が違う。元気がなさそうだった。
「部屋上がってもいい?」
「い、いいよ」
こんなやり取りがあって今天花寺さんがソファの上に座り俺がフローリングの上に正座している。
「こっち座ってよ」
「あ、あぁ分かった」
「夏樹君に言わなくちゃいけないことがあるんだ。」
「なんだ?」
「私、来月から家変わっちゃうの」
天花寺さんからお父さんとのやり取りを聞いた。
「お部屋探し手伝う?」
「違う」
「お父さんを説得してほしい?」
「違う」
ずっと首を振る天花寺さんが何をして欲しいのか分からなかった。
すると「バカ」と言ってドアを開け出て行ってしまった。
翌日
「何だったんだろう」
「どうした?悩みこんで夏樹らしくないぞ?」
「俺ってそんなに能天気?」
「いや前はずっとアニメの事しか考えてなかったじゃん」
「まぁそれはそうかも」
「認めちゃうの?恋愛マスターの俺に言ってみ」
「今のところ全部失敗してるよね?説得力ゼロだぞ?」
「経験がある」
昨日のことを名前を隠して言った。
「それは間違いなく一緒に引っ越してほしいって事だな」
「本当か??」
「あぁ間違いない」
「持つべきは女たらしのヤリチ〇だな」
「おい」
「ありがとな。話してみるよ」
ピーンポーンとお隣さん家のインターホンを鳴らすと天花寺さんが出てきた。
「ちょっと話さないか?」
「うん...入って」
「え?入っていいのか?俺の家でいいぞ?」
「入っていいて言ってるでしょ?」
「誰もいないのか?」
「いないわ。そこに座って」
部屋の構造がほぼ同じと言う感想と高級感溢れるシャンデリアを見て本当にお金持ちなんだなと思った。
「で、話って何??」
「昨日から1日考えたんだ。でも俺は両親にもらったあの部屋を手放せない。ごめん」
「え??何言ってんの?」
違った。
「一緒に引っ越して欲しいんじゃないの?」
「どういう事?」
あのバカ野郎。俺が信じたのが悪かった。
「いいや、やっぱ何でもない忘れてくれ」
立ち上がり帰ろうとすると
「待って」
と呼び止められた。
「なんですか???」
「私が言いたかったのは...」
急に黙り込む天花寺さんの言葉を待つことしかできなかった。
その沈黙の時間は短いようでとても長く感じられた。
「夏樹君の部屋で一緒に住ませて欲しいの」
思いもよらぬ一言だった。
黙り込むしかなかった。
「無理言って本当にごめん」
「いや、謝ることじゃないんだ」
「いま返事が欲しいわけじゃないの。だから...」
「分かった少し考えるね」
「ありがとう」
ずっと1人で悩む夏樹であった。
天花寺さんが家の契約が切れるのは今月いっぱいと言っていた。
そして迎える5月31日。
いつも通り1人で帰っている。1つ違うと言えばアニメの事ではなく天花寺さんの事を考えていた事だろう。
悩みに悩んだ末に出た答は『NO』
流石に女子高生と同居は僕の両親も許さないだろうし良心も保つか分からない。
それに俺みたいなモブキャラと同居している事が知られたら俺の居場所がもっと少なくなってしまうし家から出られなくなってしまうだろう。
心が痛むがしょうがない。
するといつも通りかかる公園に1人ベンチに座っている人を見かけた。
目が合った。夕焼けで目から溢れる雫が光っていた。
ベンチの隣に座りハンカチを渡した。
「ありがとう」
「今日までらしいね」
「うん」
「あのさ、すごい悩んだんだけどさ一緒に住むことは出来ないよ。天花寺さんの為にも」
「やっぱりそうだよね」
「本当にごめん」
「いいの」
「じゃ帰るね」
胸が痛い。天花寺さんが勇気を出して言ってくれたのに。
その日の夜コンビニの帰りに気になって公園の前を通り過ぎた。
ぽつんとある1つの街灯に照らされるベンチを見ると人影が見えた。
時刻は22:40もうすぐ補導される時間。
俺は人影に近づいて行くのであった。
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