第12話 デートってやつ

   綾香side


今日は待ちに待ったデート、否初めて男の子と遊ぶ日。


化粧に一時間、髪のスタイリングに一時間、1人ファッションショーを一時間かけたので大丈夫。


「よし行くか!」


時刻は12:45。隣の部屋のドアの前で大きく深呼吸をして人差し指をボタンを押す。


ピーンポーン


ガチャとドアを開けて出てきたのは寝ぐせで髪がボッサボサの男の子だった。夏樹君だ


「ごめん寝てた。今から準備するから入ってくれ」


「早くしてよね」


「まだ15分前じゃないか」


「そうだったの。こんな時間まで寝てるってどういう事よ」


「あぁちょっとな」


夏樹君は風呂に入った。その後ドライヤーの音がした。


私はソファの上で音を気にせず姿勢よく座っている


「お待たせ~」と言って声を掛けてきたのはさっきドアを開けてくれた人とは別人の様な人だった。


セットされた髪、今流行りの黒いワイドパンツにオーバーサイズのTシャツ


カッコよかった。


「遅れて悪かった。何黙って見てるんだ?映画行くんだろ?」


「あっいやそのかっこ、何でもない」


「そ、そうか」



映画館まで歩いて行く最中


「昼ごはん食べたか?」


「食べてない」


「じゃあやき、いや、ファミレスでも行くか?」


「うん」


やっぱり私たちの会話は続かない。




お昼ご飯を済ませた私たちは映画館に着いた


「なんの映画を見るんだ?」


「『花束みたいな恋をした』ってやつ」


「分かったちょっと待ってて」


「あっ」



少しするとチケット片手に夏樹君が走ってきた。


「はいこれ」


「いいの?お金は」


「いいんだ。見栄張らせてくれ」

と言って入場口まで歩いて行く。



二枚の映画チケットを隠すように右手に握ったまま...




「ってここカップルシートって書いてあるわよ?」


「多分ここで合ってるよ?安いっておすすめされたんだ」


「もう座りましょ」


「すまなかった」


「謝らないで」


一般のシートのようなひじ掛けが無く2人用にしては小さいこのシートは嫌でも体が触れてしまう。


「俺もう1枚チケット買って来る」

私は言葉よりも先に体が動いていた。


「いいの」


「本当にいいのか?」


「私は気にしないから」なんて意地を張っても全身が熱くて仕方がなかった。


「そ、そうか」


映画どころではなかった。一方夏樹君は光る瞳からポロポロと雫が落ちていた。



「感動して泣いちゃったよ~」


「そうだね~あはは」と話を合わせる。


「そんなことより天花寺さんすごい熱かったけど大丈夫だった?やっぱり無理してたんじゃ」


図星だった


「あ~うん~大丈夫」




少し食い違ってる会話はまるで付き合いたてのカップルの様



「このあとどうします?」


「何か食べたい」


「じゃああのパンケーキ屋にしますか?」


「ん」



入ってすぐに注文した私たち。映画終わりのこう言う時って映画の事話したりするのが普通だと思うが私たちは互いに無口。


沈黙はつらいのでこっちから話の話題を作る。


「好きな人とか居るの?」


「えっ?い、いないですよ」少し動揺した夏樹君。


「ほんと~?」


「からかうのはやめてください。そう言う天花寺さんは彼氏とか居るんですか?」


「わっ、私?そんなのい、いないよっ?」


「顔赤くなってますよ」


「これはちがうの」


「そうですか」

こんなに話が続いたのは初めて


そこへパンケーキが2つ来た


店員さんが一言添えて

「お似合いなカップルですね」



「そっ、そんなんじゃありません!」


「あらあらこれは失礼。ではおゆっくり~」



顔がとても熱い。目線をゆっくり夏樹君の方へ向けると夏樹君も顔が赤くなっていた。


「もうっあの店員さんなんてことを」


「本当にごめんなさい。俺なんかと居なければ」


「夏樹君が悪いんじゃないの」



私はInstagram用の写真を撮ってパンケーキにナイフを通す。




「何から何までごめんね。ありがとう」


「全然いいんです。僕も楽しかったんで。またどこか行きましょ!」


「私も楽しかった。本当にありがとう」


「言うの遅れましたけど今日は天花寺さん印象違ってとてもかわいいですよ」


「えっ、ありがとう」

いきなりそんな事言われたら反応出来ないじゃない。友達もいなかった私はこんな事言ってくれるのはInstagramと花音だけだった。


顔なんて見せれない。私はマンションまで顔を上げることができなかった。



部屋のドアの前に着いた2人は目線が合った。

「今日は本当にありがとう。またね」


「こちらこそ。今日みたいな夏樹君、か、かっこいいよ」

照れる前にドアを開け玄関で座り込んだ



胸に手を当てても静まらない。


この気持ちは初めてだった。モヤモヤして胸が少し痛くなってしまう。



またどっか行きたいと強く思った。




「綾香。帰ったか?」



リビングから声がした





久しぶりの声に少しびっくりした



それは突然に訪れるのであった。





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