第5話 一緒に

  綾香side


「あ、ありがとう」


「別に気にすんな。俺はバイト先の店だからやったことだ」


「そ、そう」


「じゃあな」と言って彼は店に入っていく。


「あのっ、名前は?」

しかしその声はカランコローンと言う音に消されてしまった。


意地でも渡すと強く決意した私は紙袋の持ち手を強く握るのであった。



明日渡せばいっかと思いショッピングモールの出口へ向かう途中私はある人と会った。


「花音っ」


「あ!綾香ちゃん!」


「入学おめでとうね。今暇?」


「ありがとう!今用を済ませて来たから暇!」


「じゃあ少しお話ししましょ?」


「いいよ〜私いいお店知ってるんだ〜」まぁ流石にねと思っていた自分がいたけれど私は花音に付いて行くと店の前に着いた。


はい、フラグ回収致しました。


さっきあいつが入って行った喫茶店『あおば』の前だった。


「ここ前来た時美味しかったんだ〜早く入ろ〜お腹すいちゃった」

私は足が止まってしまっていた。


「あれ?綾香ちゃん入らないの?」


「ココハヤメヨウ?」


「え?なんて言った?」


「アノサアッチノオミセニシヨ⁇」


「ええ???なんて言った?」


「この店よりも、あ、あ、あっちのお店の方がい、いいヨ」


「もうしょうがないなぁ次は行こうね」


花音はかわいいし優しいし気配りができるので年下なのに負けた気がする。私が男だったら確実に惚れていただろう。


そんな無敵美少女と向かうお店はアジアンスタイルのハンバーグ専門店


女性の店員が私と花音の2人を席まで案内してくれた。花音と対面して座る私はグランドメニューとは別の期間限定と大々的にに書かれた紙を手に取る

注文する品が決まったらしい花音が切り出す。


「なんであのお店に行きたく無かったの〜?もしかしてだけど好きな人がいたとか?」と笑いながら花音は言う


「え、ちょま、ち、違うわよ」


「本当かな〜?」


「ほ、本当よ」

私は苦し紛れに事を誤魔化し年上としてのプライドを守ることができた。


「そ、そう言う花音は好きな人居るの?」

女子の会話なんてカッコいい男の子の話や恋バナばかりだ。男子と触れたことも無いし友達がいない私は人生で初めてこんな事切り出した。


「えっ!?私!?あのその、居ることには居るけど...」

顔が明らかに赤くなった花音は女子の私から見ても可愛い以外の言葉が見つからない本当にピュア。高校2年生になった私は一味違う。


「えーどんな人〜??カッコいい?」


「か、か、カッコいいよ...」

照れて目を合わせてくれない花音

こっちまで照れてしまう。


「えぇ同い年にそんな人居るのか〜今度紹介してよね〜」


「え?同い年?一つ上だよ?しかも綾香ちゃんと同じ高校だよ」


「え...気になる〜イニシャルだけでも教えて!」

私、友達いないのに何言ってんだ


「教えるわけないでしょ!?恥ずかしいよ」

より花音の顔が赤くなった。


「いいな〜彼氏...」


「彼氏だなんて、まだ全然そう言うんじゃないよ!」


「なーんだつまんないのー」


「人の真剣な恋を面白がらないで!!」


女子の攻防戦がに終止符を打ったのは花音だった。

それぞれの恋愛状況を語ったのは初めてだけどなんで女子がこぞって動物園のように話すのが分かった気がした。


「私が払うね」


店を後にすると帰るのかと思っていた私が甘かった。

陽の世界に属する無敵美少女は「デザート何食べる〜?」と言う。


言われるがままに着いて行くと着いたのはパンケーキ屋さん

待って今私JKっぽいことしてる。


甘ったるいパンケーキを食べてJK気分を味わい2人は駅に向かう帰り際に花音が私の持つ紙袋を指差して放った言葉が私を動かした。


「その贈り物贈るなら早い方がいいと思う」


「そ、そう?」


「昨日電話してきた人の件でしょ?」


「そ、そうだけど」


「お礼は早めの方がいいよ〜」


「...」


「じゃあ私は帰るね〜」

と何かを察して気を遣ってくれた花音は駅に1人で向かう


早めって言ってもどうすればいいのよ。



ただひたすら悩み続けるのであった。




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