第2話 帰路

「はぁまた1人かぁ」不意に出た独り言。



平沢高校の校門を出るとすぐの所に朝ぶつかった女性が立っていた。

俺は気を遣いたくないし遣わせたくないので「上を向いて歩こう」と言う歌の替え歌のように下を向いて歩いていた。


しかし彼女は見逃してくれなかった。


「あの〜、朝ぶつかったよね。あの時は本当ごめんなさい」


「いえ、人違いだと思いますよ。」


「いや間違いない。君です」


「だったら何ですか?」


「お礼を言いたくて」


「いや、お礼なんていりませんよ。では、失礼します」と言って早歩きで帰る。


「ちょっと待ちなさいよ」と言っていたのが聞こえたが俺は振り向かずに家に向かった。



   ♡



「なんなのよもう!」


私、『天花寺 綾香』は高校2年生。天花寺家は自分で言うのおかしいと思うのだけれど富裕層の中でも上層に位置する家系。


私の祖父と父が株式会社「TENGEZI」のCEOであるおかげだと思う。


なので私は小さい頃から「御令嬢」と持て囃されてきた。御令嬢と言っても客観的に見てお高く止まる事はあまりない。普通にジャンクフードが好きだしコンビニにも良く行く。口調も漫画やアニメである

「おほほほほ」とか「〜あそばせ」なんて一回も言ったことない。要するに普通の女子高生なの


親がお金持ちなだけ。

しかし私はそれが嫌いだった。


なのでみんなと同等の関係を持てるように県立平沢高校に進学したのに噂は

人の口に戸は立てられぬと言う言葉のように噂はすぐに蔓延して


私に友達なんて出来なかった。私は友達が欲しかった。なのに出来なかった

女子高生はみんな彼氏が欲しいと言う。


私はそんな事思ったことない。訳ない


私も彼氏が欲しいに決まってる。でも好きな人が出来たことがなかったし男性に触れたことも記憶にある限り無かった。


しかし私の高校生活が2年目を迎えた時にその触れたことない継続記録が終わってしまった。


根暗陰キャに触れてしまった。最悪。なんでよ


でも何故かドキドキしていた。心臓が鳴っているのが分かるぐらいにドキドキしていた。


それに加えて手を差し伸べてきた。その時表面上では

なんなのこいつ と思っていた。


「いてて」と差し伸べられた手を取ってしまった。私はそんな根暗陰キャの顔なんて見れなかった。


なんで根暗陰キャって分かると思う?

それは“私の勘”ってやつ?


私だって触れたことは無かったが交流する機会はいくらでもあったし何故だか

告白される事が多々あったためぱっと見でどんな人なのか、クラスでの立ち位置など分かるの。


それにトイレを出た時に確信した。この人は本当に普通だと言うことが。


でもずっとお礼を言ってなかったと思っていた。

午前の授業中ずっと考えてしまった。



そして時は下校時刻


私はやっぱりお礼をするべきと思い校門で彼を待っていた。

少しすると彼は1人で出てきた。


チャンス。


私は勇気を振り絞って初めて男性に話しかけた。

「あの〜〜〜〜」しかし彼は“人違い”だと主張した


私間違えた?と思ったが絶対に合っている


お礼をしたがいらないと言われ本当に複雑な気持ちになってしまった。


彼は早歩きで帰ってしまう。

「ちょっと待ちな...」


男子高校生って本当に足が速いのね。


私は意地でもお礼がしたかった。こんなの初めてだから


私は彼を追う。



   ♤


後ろから誰かが付いてきている。


まぁ覚えはあるのだが振り向くのは嫌だし話すのも嫌だ。


公園に行けば追手も来ないだろうと思い俺は公園に寄りベンチに座り読んでいた本を開く。


「あの日恋とは何か知ったんだ」と言う文の続きから読み始める。


つい没頭してしまい日が暮れ始めた。茜色の空、葛飾北斎の描いた絵のような赤い富士山、綺麗だった。


これが大ヒット映画『君の名は』で浸透した「カタワレドキ」なのだろうか


俺は立ち上がり公園を後にしようとした所もう一つのベンチで座っている女子高生がいた。


あいつ何やってんだよ

そうその女子高生がさっき追ってきていたであろう人である。


俺は少し気になって前を通る。すると彼女は目を閉じていた。

こんなところで寝てるのか?変わった人だな。


追ってきていただなんて俺の思い過ごしか。家がこっち方向なんだろうな


俺は放って置くのが最善だと思い家に帰った。



   ♡


「はぁっ!!」と飛び起きた私は空を見て驚いた。

空には星空が駆かっていた。今にも彦星様が織姫の元へ川を渡るような星空は今の私にはどうでも良かった。


あいつは!?!?

たしかにあのベンチに座ってたはずなのに。

夢?な訳ないよね。

人違い?


私の思考回路はおかしかった。


まさか、、、帰った???


帰る時私って気づかなかったってこと!?


そんなのおかしい。

「もう!またお礼出来なかったじゃない!」公園を通り過ぎた通行人がこちらを見る。


もう帰るしかないのね。と思い私は街灯が照らす大きな道を歩いて帰った。


ウィーンと私の住むマンションのドアを開けてエレベーターに乗った。


エレベーターの中でも私の頭の中はずっとあいつのことばかり。


エレベーターのモニターに50と表示された所で止まり扉が開いた。

廊下を歩き私の家の扉をガチャと鍵を開けて入った。



「綾香ちゃんおかえり〜今日は少し遅かったわね。お風呂も沸いてるしご飯出来てるから食べな〜」

迎えてくれたのは私の姉の美咲


「いや、なんでもないの。今日は疲れてるからお風呂入って寝ちゃうね」


「そう、無理は言わないわ。おやすみ」


「ごめんねお姉ちゃん」


「綾香ちゃんにも男かな?」


「ち、違うし」



私は風呂に入り考えていた




どうやってお礼をするか




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