2-3 新しい、依頼?

 前略。〈星座の心臓〉のギルド長、ハンスベルからの連絡を受けてガザトオリコへ向かうPCの面々。


ソルベ:ぐびーんっとヨーレンヘイム、過ぎてガザトオリコ。


ゴッドフリード:どうしてそんなルートを……?


ロラン:ヨーレンヘイム、入り口を通るのも嫌なんだけどなぁ……。


ソルベ:通らざるを得ない……。


キッカ:なんか矢印が通っているので……。


GM:今はべつにこの通りに動かなくてもいいからね……?



 実は、この時点でシナリオで使うマップを卓上に置いている。詳細は『"星座の街"サイレックオード』収録のシナリオ2を参照してほしい。これは星々の移動手段を示す画なのだが、矢印に沿ってカーリーヴェリからガザトオリコへ向かう場合、そのルートをとる必要があるのである。まあ、別のルートがないわけではないが……。



GM:では気を取り直して〈星座の心臓〉。ハンスベルが出迎えるよ。


ソルベ:「ご指名どうも~」


GM/ハンスベル:「一週間ぶりになるかな。折り入って、君たちに頼みたいことがある。早速になるけれど、話をしても?」


ミヒャエル:「うむ、聞かせてもらおう」


GM/ハンスベル:「まずはパリス・ノス嬢の現状だが、順調に回復している。もうベッドから降りて軽い運動も出来る程度にはだ」


ロラン:「それは僥倖。でも、それが本題じゃなさそうだね」


GM/ハンスベル:「ああ。それで彼女には彼女たっての希望もあって、件の目録を調べて貰っていたのだが……そこで、少し問題が出てしまってね」


ソルベ:「ふうん?」


GM/ハンスベル:「こちらの想定が明らかに甘かったことがわかったのだよ。元の遺跡の所持者の警備の緩さと、奪われたものが本命の宝物庫より手前だったということで、あまり大したものはないだろうと考えていたのだが……これが間違いだった」


 ハンスベルが目を伏せる。申し訳ない、と言いたげな表情だ。


GM/ハンスベル:「高をくくってろくなことはない。何年生きていても油断するとこれだ。いや、むしろ普通の冒険の現場から遠くなった時間が長すぎたというべきか……いや、本題に戻ろう」


GM/ハンスベル:「その目録の中に書かれていたものに、是が非でも取り返すべき魔動機が存在した。君たちにはその奪還を頼みたいのだ」


ソルベ:「奪還、かぁ~」


ミヒャエル:「ふむ。参考に、その魔動機が何か聞いても?」


GM/ハンスベル:「魔動エンジンの試作品だ。これがピーキーな代物でね。魔力の大量消費と超高温の放熱が解決できず、放り出されたものだったらしい」


キッカ:「動力機関ですか。失敗作なのに取り返したいと?」


GM/ハンスベル:「かつては失敗作だったが、それでも現在のことを考えれば貴重品だ。仮にも魔動機文明時代の遺産なのだからね」


ミヒャエル:「吾輩としては超高温の放熱、というのが気になるね。いくらでも悪用がききそうだ」


GM/ハンスベル:「……ふむ、目の付け所は悪くない。我々は、アレをエンジンとしてだけではなく、暖房として利用できないかと考えている」


ゴッドフリード:「ははーん、万が一にも制御出来たら大儲け、制御出来ないとしても……ってワケだ」


ミヒャエル:「なるほど、なんとも平和的な利用法だ。吾輩も賛同したいね」


GM/ハンスベル:「そう思ってくれて有難いものだ。今のサイレックオードでは、寒さにあえぐ住民が少なくないのでね」


ゴッドフリード:「ここ、高度が高いから寒いんだよなぁ。どこもかしこも」


ソルベ:「氷の星もあるからね~」


GM/ハンスベル:「ああ。ステアラの氷を手早く溶かすことに使える可能性は高い。そうなれば少なくとも、腐ることはないというわけだ」


ロラン:「うん、確かにステアラなら幾らでも使い道はあるだろうね」


GM/ハンスベル:「いずれにせよ、まずは研究素材としてテルメアルノに送ることにはなるだろうが……少なくとも他の国や都市に持ち出されるのは最も憂慮すべき事態になる。故に、アレは取り戻さねばならないというわけだ」


ゴッドフリード:「どこの国だろうと喉から手が出る程欲しいだろうな、そりゃあ」


キッカ:(どちらかというと私欲……いえ、今は仕事を選べるような立場ではありませんね)


GM:というわけでキミたちはハンスベルから、事の詳細を聞くことができる。件のドワーフ男性――パリスからの聞き込みにより、名はムトゥルというらしいことが判明している――の捜索の現在までの状況説明だ。


ゴッドフリード:「どこぞの国の国力増強程度ならいいが、ソイツがもし前回予想した人に化ける蛮族だとしたら目も当てられん結果が待ってるだろうなぁコレ……」


ミヒャエル:「うむ。星の1つや2つ、落ちるかもしれない」


GM:ムトゥルは事件後に一度サイレックで発見したが、逃げられてしまった。ただし逃走経路を考えると外に逃げられたわけではなく、まだサイレックオード内にいると考えられる。


GM:ムトゥルが最後に発見されたのはガザトオリコからトーポールに行くゴンドラである。ガザトオリコの外までは〈星座の心臓〉は動くことができないため、ハンスベル個人からの依頼という形で捜索をしてほしい……ということらしい。報酬金は前回と同じく、1000ガメルで考えているそうだ。


ミヒャエル:本当に動かないのだな……仕方ないにしても。


ゴッドフリード:星座の心臓にも出来ない事くらい……ある……ってヤツだな。


ソルベ:トーポールか~。


GM/ハンスベル:「さて、何か質問はあるだろうか」


キッカ:「はい。トーポールとはどんな場所なんですか?」


ソルベ:「一番高い星。だから、観光の出発地点によく使われるかな。だよね?」


GM/ハンスベル:「ふむ、"天頂星"トーポールか。このサイレックオードで最も高い高度にある星でね。……まあ、それが最大の特徴と言えば最大の特徴で、特筆するほどの何かはないのだが……」


ロラン:「氷しかないステアラよりなんもないからねぇ」


ソルベ:「遺産の状態が比較的良かったっていうのはあるけど、観光資源としては正直ね」


GM/ハンスベル:「強いて言うなら、最も上にあるという点を活かした観光業は盛んなのだがね。正直なところを言うと、あのテルメアルノやカーリーヴェリ、ひいてはこのガザトオリコなどと比べては特徴が薄いと言わざるを得ない」


ゴッドフリード:「あぁ、グライドフェザーなんかをレンタルすればトーポールからそれぞれの星へ向かえるんだよ」


キッカ:「グライドフェザー? グライドウィングではなく……ですか?」


ゴッドフリード:「グライドフェザーは安い代わりに基本的に下り専用でな。高い所から低い所に向かう形式で最近観光の受け入れを始めたらしいぜ? やっぱりソイツ、此処に詳しい奴だな」


ミヒャエル : 「アレの乗り心地は中々クセになるからね、乗ることを目的に来る者もいるだろう。……となれば蛮族というセンは薄いかもしれないな。一体全体何を考えているのやら……」


ソルベ:「となると、足跡追うのも苦労しそうかなぁ……うまいこと目撃者がいればいいんだけど……ほかに何か情報ないの?」


GM/ハンスベル:「……そういえば、パリス嬢からムトゥルは魔法を使えないという話を聞いた。魔法文明語も魔動機文明語も理解できなかったそうだ。つまりは、騎獣なしでの脱出はほぼ不可能だということになる」


ゴッドフリード:「ってことはトーポールから下っていく奴なら、間違いなくライダーギルドからグライドフェザーを借りてる筈だ。其処を当たって行先を確かめるのが吉だろうな」


ロラン:「魔法が使えるなら、わざわざトーポールまで行く必要もないしねぇ」


ミヒャエル:「ふむ、手がかりは薄いが、無いわけではない。辿り着けると良いが……」


ソルベ:「まぁ、あとは当たって確かめるしかないかな?」


キッカ:「サイレックオードのどこかに目的地があっての移動でしょうか……」


ゴッドフリード:「分からん。だが、ガザトオリコへのとんぼ返りがあまりにギリギリだから、逃げる為に攪乱してるのは確かだと思うんだが……」


GM/ハンスベル:「我々としても目的が不明でね、申し訳ない。……しかし、1000ガメルのために時間を使わせすぎるわけにもいかないな。いったん、契約は3日を期限としておこう。それ以上経って解決しないようなら、その段階での働きぶりを見たうえで延長するかどうか考えるとするよ」


ミヒャエル:「了解した。最善を尽くさせてもらおう」


GM/ハンスベル:「よろしく頼むよ」


ゴッドフリード:「あ、そうだ。星座の心臓側でちと協力して欲しい事があるんだが……」


GM/ハンスベル : 「ふむ、何だろうか」


ゴッドフリード:「ガザトオリコから上がるリフトだけでいいんで見回りをしてもらえるか? トーポールまで上がった奴の狙いが潜伏か攪乱かは分からんが、一旦降りてきたらグフェザーじゃあ上がっていけない。だから、奴がガザトオリコに一旦降りて来てどこぞに上がっていくようなら有力な情報だし、アンタ等にとっても大した手間じゃないだろうと思ってな?」


GM/ハンスベル:「あぁ、それならば無論だ。ガザトオリコのゴンドラ乗り場もグレートリフトも普段からパトロールを行っている。件のドワーフ……ムトゥルの情報も渡してある。そこについては心配する必要はないよ」


キッカ:「堂々巡りになってしまったら面倒ですからね、流石です」


ミヒャエル:「そういうことなら我々も我々の職務を全うするとしよう。君と君の仲間達のようにね」


GM/ハンスベル : 「では、期待しているよ。私は他の仕事に移らねばならない、これで失礼するとしよう」


ゴッドフリード:「あぁ、任された」


ソルベ:「なんとかやってみるよ」


ロラン:「ふむ、中々に骨が折れそうだが……頑張ろうか」


ゴッドフリード:「(しっかし、脛に傷持つ奴が向かうとなりゃ、まぁ……なぁ?)」


キッカ : 「ちなみに、どこかそういった不審者が行きそうな場所とかに心当たりはありますか? ゴッドフリードさん?」


ゴッドフリード:「ん? まぁ、トリネスの星屑だろうな。あそこは叩けば幾らでも埃が出てくる場所だ。ゴンドラが通らず、主要産業も特に無い。ある物と言えば、僅かばかりのマナタイトとゴロツキと空遊ギルドの連中くらいと来たもんだ」


キッカ:「身を潜めるには最適……と。トーポールで手掛かりが得られなければそちらに向かいましょうか」


GM : この中だとトリネスの星屑一番知ってる人だもんね、ゴッドフリードさん。


ミヒャエル:「ゴッドフリートくんが発掘……という言い方で良いのかはわからないが……されたところだったかな? すまないね、未だに土地勘が掴めていないのだ」


ゴッドフリード:「ちょっと違うな。発掘されたのはゴクモークだ。まぁ育ったのはトリネスの空遊ギルドで合ってる。」


ミヒャエル:「ふむ、そうだったか……」


ゴッドフリード:「結構複雑だしなぁ、ここ。ま、その内馴れるんじゃないか?」


ミヒャエル:「そうなることを願うよ。さて、出発するとしよう」

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