1-4 情報収集、冒険者ギルド支部〈星座の心臓〉

 "下荷受け場"から二時間弱。グレートリフトは音を立て、38回目の停止を迎える。ここが中央区であるとの声が周囲から上がり、ぞろぞろと人が降りていく。その人混みにならってリフトを降りれば、目の前には魔動機灯に照らされた街並みが広がることだろう。――ここが、ガザトオリコ中央区。サイレックオードの中心地だ。


GM:というわけで、およそ二時間弱でグレートリフトはガザトオリコ中央区停止場までたどり着くよ。


ミヒャエル:それだけあれば、大破局についてもざっと話し終えられそうかね。


キッカ:「大破局……私は寝過ごしてしまったのでしょうか」


ゴッドフリード:「俺の方は多分大破局が原因で眠りについたとは思うんだよなー」


ミヒャエル:「どうだろうね。ま、過去を知るのは大事だが、最も大事なのは今どうするかだよキッカくん」


キッカ:「……そうかもしれませんね」


ミヒャエル:「吾輩はよくこの言葉を言い訳に使ったものだ。ワッハッハ!」


GM:ガザトオリコ中央区には、観光客にとって魅力的で多種多様な施設がある――のだが、残念ながらキミたちは、今回はガザトオリコの実質的な警察組織である件のギルド支部、〈星座の心臓〉のほかに行く当てがない。


ミヒャエル:「観光は依頼を片付けてからとしようか」


ゴッドフリード:「そうだな」


GM/セレン:「片づけたら観光はするつもりなんだね……?」


ミヒャエル:「こんな魅力的な街に来て、それをしない方が失礼というものだよ」


ゴッドフリード:「まぁ、減るもんじゃ無いしな」


GM/セレン:「あー……うん。それは……そうだね……」


キッカ:「えぇ。私のことを知ってる人も居るかもしれませんし……一度会った時は、名乗りもせずに消えてしまいまして」


ミヒャエル:「ほほう、セレン君に訪ねていた例の彼かね。会えると良いね」


ゴッドフリード:「俺はずっと此処サイレックオードに居るつもりだし、今なら格安で観光案内も受け付けるぜ? ガザトオリコ以外もどんとこいってモンだ」


ロラン:「ふむ、僕もステアラなら案内できるかな、機会があったらだけれど」


 ステアラ――"翠氷星"ステアラ。サイレックオードのなかでもかなり高所を漂う星であり、無限に氷が生成されることで有名である。ここガザトオリコの水の供給の一部も、このステアラから運び込んだ氷を利用したものだ。


ソルベ:「ステアラか~。夜の街案内ならできるけど、全額そっち持ちでよろしくね」


ミヒャエル:「タビット向けの店はどこかにあるかね?」


ロラン:「生憎、覚えがないなぁ」


ソルベ:「ま、私は行ったことはないけどね~」


ミヒャエル:「吾輩も行く予定は無いがね。ワッハッハ!」


GM/セレン:「……浮かれすぎないように、ね。気持ちは分かるけど」


ゴッドフリード:まぁそんな感じで。


GM:冒険者ギルド支部、〈星座の心臓〉は探せばすぐに見つけられます。行く?


キッカ:行きます。


ロラン:行こう。


GM:"星座の心臓"は建物の構造こそ一般的なギルド支部だけど、中の印象は他とはまるきり異なっている。中にいたのは、冒険者にはまるで見えない、制服を着た規律正しい雰囲気の者たちだ。まあ、さっきのゴッドフリード君の説明の通りだね。


GM:あとは……そうだね、ふと見回せばタビットやグラスランナーのような小型種族が全く見えないのにも珍しさを感じるかもしれない。


ゴッドフリード:肉体派なんだなぁ。


GM:そして極めつけに、内部のテーブルで飲食をしている者の姿が皆無だ。全体的に見て、一般的な酒場と兼用の冒険者ギルドの姿とは正反対って感じを受けるだろうね。


ゴッドフリード : 普通の冒険者は下の第七支道に〈岩の芯〉ってギルドがあるんでそっちに行くらしい。


GM:そうそう、そっちの方が一般イメージに近い冒険者ギルド支部になるね。


キッカ:「本当に官僚組織ですね」


ミヒャエル:「ふむ、中々出会いはなさそうであるなあ」


ゴッドフリード:「まぁタビットだと、テルメアルノの方が多いだろうな」


ミヒャエル:「研究の星、だったかな? 興味深い、是非行ってみたいものだ」


 ――"研究の星"テルメアルノ。ハールーン魔術研究王国の後進のもとで建設された、まさに最先端研究施設の名に相応しい星。当然ながら人口構成は人間に加えてエルフやタビットといった知能に秀でた種族が多く、その住人のほとんどが研究者にして魔法使いである。


ソルベ:「場所が場所だからねー……と。失礼、人捜しのアンケートにご協力いただきたいのですが」


GM:カウンターでは受付係が応対している。幸いなことに比較的空いているようで、キミたちが話しかけたところすぐに応対してくれた。


ソルベ:(賄賂にいいお酒を渡せるような女に私はなりたい。嘘、そのお酒自分で飲みたい)


ゴッドフリード:それ、いい酒が飲みたいだけじゃないか?


GM:受付係は少しキミたちに待つように言うと、奥の方に引っ込んでいくよ。


GM/セレン:「さて、せっかくだから私は他の冒険者に話を聞いてみるよ。と言っても、君たちが聞ける以上のことは聞けないだろうけど……後で合流しようか」


ロラン:いってらっしゃい。吉報を待とう。


GM:10分ほど待った頃かな。受付係と入れ替えに、キミたちの前にナイトメアの男性が現れる。表情こそ穏やかなものの、一目で実力者とわかる雰囲気を醸し出しているね。


ソルベ:身長は?(自分より大きな男が跪くのを見るのが趣味)


GM:ナイトメアだから、それなりにあるんじゃないかな。


ミヒャエル:もうリルドラケンと付き合ったらどうかね。


ソルベ:トカゲは守備範囲外なので~。


GM/???:「ようこそ、冒険者ギルド支部〈星座の心臓〉へ。ここの支部長であるハンスベル・ラフィンだ」


ゴッドフリード:「よろしく……って、大物が出て来たなぁ」


ミヒャエル:「ご丁寧にどうも。吾輩達は〈光瞬く双眸〉に所属している冒険者のパーティだ」


GM/ハンスベル:「あぁ、聞いているよ。新人だそうだね」


ソルベ:「あらイイ男、これから一杯いかが? 色々お話しません? ドワーフの魔術師見習いちゃんのこととか」


ゴッドフリード:「仕事しような、仕事」


GM/ハンスベル : 「残念ながら、こちらも仕事が忙しいものでね」


ソルベ:「お酒呑み交わすのも仕事仕事……ってのが通じるタイプでもないか、"心臓にして頭脳"サマじゃ。でも人を探してるのはさっき言った通りだよ」


ミヒャエル:「うむ、パリスというドワーフの女性を探している。こちらが似顔絵だ」


ハンスベル:「ふむ。この女性か。……その行方不明者だが、身代金の要求を含め、何か犯罪を示唆するようなものは?」


ゴッドフリード:「幸いな事に、無いな」


ソルベ:「あったら既にオタクの耳に入って捜査始まってるんじゃなくて?」


ミヒャエル:「うむ、今のところは。依頼主は発見すれば我々に金を払ってくれる予定ではあるがね。フフフ」 流石に大笑いは出来ない。


ミヒャエル:「失敬、今の笑いは忘れてくれたまえ」


GM/ハンスベル : 「そうなると、我々が積極的に捜査することはないな。ここは治安維持組織のようなものだ。即ち逆に言えば、ここで扱うのは事件性が明らかなものに限っているのだよ」


キッカ:「事件性、ですか」


GM/ハンスベル:「そうだ。これだけの組織とはいえ、人員には限りがあるのだよ。パトロールなどにも出なければならないのでね。……そうなると残念ながら、大手を振って君たちに協力はできないということになる」


ゴッドフリード:「それだけで十分さ。足で稼ぐのは俺等にとっても仕事の内だしな」


ソルベ:「そうそう。だからさっき受付さんに言ったでしょ、アンケートだって」


ハンスベル:「そうか。とはいえ、時間さえ貰えるのであれば似顔絵の複製を行ってパトロール担当者に持たせるくらいなら出来るだろう。それに、〈マギランプ〉程度の備品の貸与なら可能だ。もし君たちに心当たりがなければ、私が心当たりになりそうな場所を挙げることもできる。どうだね?」


ミヒャエル:「ふむ、是非頼みたいところだ」


ハンスベル:「なに、マギランプの代金はいらない。人探しなのだろう? であれば、魔動機灯のない場所に行くこともあるだろう。それであれば、という話だよ。依頼が終わり次第、我々に返却してくれれば構わない」


ロラン : 「ありがたい、ぜひ頼むよ」


ミヒャエル : 「うむ。壊さないよう気をつけるとしよう」


ゴッドフリード:このギルド長、凄い鋼鉄の精神持ってるんだよな……。


GM:キミたちの返答を聞くと、ハンスベルは似顔絵を受け取って奥へ引っ込みます。しばらくして、似顔絵の複写とマギランプを持って戻って来ますね。複写の出来栄えは文句のないレベルのものです。


ソルベ:「人海戦術、ご尤もで。まぁ依頼自体人海戦術頼りって話らしいんだけど」


ミヒャエル:「こういった時はいくら人がいても良いものなのだよ」


GM/ハンスベル : 「さて。当てもないのも困るだろう。心当たりになりそうな場所だが……そうさな、三つほどある」 一瞬思考し、話し出す。


GM/ハンスベル : 「まずは、歴史博物館だろうな。そのパリスという女性がどのような目的で来たにしろ、おそらくここは外さない。特に彼女は魔術師、兼研究者なのだろう? そうなれば、間違いなくそこには立ち寄ると考えていい」


ソルベ:「困ったことに、覗き見程度しか知らない分野の人なんで興味持ちそうなとこって言われてもわからなくてね……」


キッカ:「まず歴史博物館、ですか」 メモ。


ゴッドフリード:「人文系なら歴史博物館、理系ならテルメアルノって感じかね? ま、それなりにサイレックオードに詳しいならって話だが……」


GM/ハンスベル:「初めて来た観光客であれば、ガザトオリコの外にわざわざ行くようなこともないだろう。それだけの事前知識があるなら、また話は変わってくるのだけれどね」


ソルベ:「あ~……一応その辺、行方不明の前例はある?」


GM/ハンスベル:「ないとはいえない。が、ここは比較的人も多い。ここから偶然出会ったふりをして誘い出して……といった方がよほど多いだろう。事件に限った話ではあるがね」


ミヒャエル:「吾輩も行ってみたいものだな、歴史博物館。無論依頼が終わってからだが」


GM/ハンスベル:「後は……次に言うならゴールザック大劇場だろうな。彼女が観光をしようと思っていたならばの話になるが、ここを外す者はまずいない。だが、彼女は真語魔法使いだったね。そうなると、優先度はあまり高くないかもしれない」


ミヒャエル:「吾輩は観劇も楽しむが、魔術師としては確かに興味をそそられるかは怪しいところだね」


キッカ:「次に、大劇場」 メモメモ。


GM/ハンスベル:「最後は単純な話だが、彼女は定住者ではないのだろう? であれば、宿屋を探してみるのはどうだろうか。観光客に渡す宿屋のリストがある、これを当たるといいだろう」


ロラン:「宿屋。もっともだ」


キッカ:「最後に宿屋」 メモメモメモ。


ソルベ:「完全な虱潰しねぇ……」


GM/ハンスベル:「……挙げられるのはこのくらいだろう。それと、もし依頼が解決するようなことがあれば我々に知らせてほしい。事件の情報を纏めておくことも、パトロール達から似顔絵の回収もしなければならないのだ。マギランプ返却時にでも構わないから、よろしく頼むよ」


キッカ:「分かりました。お忙しい中助力ありがとうございます」


ゴッドフリード:「分かった。とりあえず回ってみるぜ。」


GM/ハンスベル:「我々も善処はしよう。吉報を期待しているよ」


ミヒャエル:「うむ、何から何まで感謝である」


GM:キミたちに激励を飛ばすと、ハンスベルは奥に引っ込んでいきますね。


ゴッドフリード:よし、セレンと合流だな。


GM:そうだね。キミたちがカウンターを離れると、ちょうど話を聞き終えた様子のセレンと合流できる。どうやら、キミたちが得られた以上の情報はやはり得られなかったようだ。


ロラン:まぁ、仕方ない。情報が得られただけいいと思おうじゃないか。


GM:さて、どこから攻めるかい? あるいは、どこも攻めないかい?


ソルベ:どこも攻めないって何をどうしろと??


ミヒャエル:どこも攻めない場合依頼失敗で終わってしまうだろう。


GM:一応街で何も考えずに聞き込みする、って選択肢があってね。まあ、ここで情報が得られたならそこに行くのがいいんじゃないかな。


ゴッドフリード : そうだな。まず歴史博物館を攻めるか。


ミヒャエル:うむ、吾輩も歴史博物館に行くことに異義はないよ。


キッカ:……とりあえず、言われた順に見ていきましょうか。


GM:OK。じゃあ、歴史博物館に行ってみよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る