―PM 5:14―


いつもと同じ時間、同じ車両。


彼と仲良くなって、半年が過ぎた。


「翼くん!」


本に夢中で私に気が付かなかったのか、声を掛けたらビクッ!と翼くんの体が震えた。


「へ!?……あ、美里ちゃんか」


「あははっ!今の翼くん、凄かった!」


私はお腹を抱えて笑う。


すると翼くんは耳まで真っ赤にして


「み、美里ちゃんが急に声を掛けるからでしょう!?」


と、怒ってそっぽを向いてしまった。


ありゃ。笑い過ぎたかな?


「ごめんごめん。良い物あげるから機嫌直して」


そう言ってカバンをガサゴソ漁りながら翼くんの隣に座る。


「良い物?」


「うん。今日、調理実習でクッキー焼いたんだ。それが結構好評でね。はいっ!翼くん、甘い物好きでしょう?」


「うん……ありがとう」


翼くんが唇を尖らせながらクッキーを受け取ってくれる。


ふふ。かわいいなぁ。


「今日は推理物?」


本を指さして言った。


「え?……ああ、うん……」


ん?なんとなく、上の空な返事。


「そんなに怒った?」


さっき驚かさせてしまったのが、そんなに勘に障ったのだろうか。


「いや、違うんだ……」


「どうしたの?なにかあったの?」


私の問いに、妙な沈黙。


「……元カノが」


「え?」


「元カノが、よりを戻してくれって、言って来たんだ――」


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