8
―PM 5:14―
いつもと同じ時間、同じ車両。
彼と仲良くなって、半年が過ぎた。
「翼くん!」
本に夢中で私に気が付かなかったのか、声を掛けたらビクッ!と翼くんの体が震えた。
「へ!?……あ、美里ちゃんか」
「あははっ!今の翼くん、凄かった!」
私はお腹を抱えて笑う。
すると翼くんは耳まで真っ赤にして
「み、美里ちゃんが急に声を掛けるからでしょう!?」
と、怒ってそっぽを向いてしまった。
ありゃ。笑い過ぎたかな?
「ごめんごめん。良い物あげるから機嫌直して」
そう言ってカバンをガサゴソ漁りながら翼くんの隣に座る。
「良い物?」
「うん。今日、調理実習でクッキー焼いたんだ。それが結構好評でね。はいっ!翼くん、甘い物好きでしょう?」
「うん……ありがとう」
翼くんが唇を尖らせながらクッキーを受け取ってくれる。
ふふ。かわいいなぁ。
「今日は推理物?」
本を指さして言った。
「え?……ああ、うん……」
ん?なんとなく、上の空な返事。
「そんなに怒った?」
さっき驚かさせてしまったのが、そんなに勘に障ったのだろうか。
「いや、違うんだ……」
「どうしたの?なにかあったの?」
私の問いに、妙な沈黙。
「……元カノが」
「え?」
「元カノが、よりを戻してくれって、言って来たんだ――」
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