第17話〈告白〉
三人が揃った所で、九重花志鶴は長峡仁衛に問いかけた。
「仁、貴方が私に言った事、今ここでもう一度言いなさい」
言った言葉。
それは、九重花志鶴に告げた自らの心の内だった。
「え?し、志鶴さんッ!?」
当然長峡仁衛は狼狽する。
その答えは、決して人に理解されないであろう願いだからだ。
「大丈夫よ。きっと彼女たちは受け入れてくれるわ。私だってあなたの気持ちを理解してあげれたんだもの。大丈夫、そう、大丈夫、多分」
適当な感じで九重花志鶴は言う。
その説得力の無い言葉に長峡仁衛は眉をしかめた。
「いや、でも……」
「じゃあ、貴方はそんな複雑な感情を隠したまま、あの子たちと過ごしていくのかしら?卑猥な感情を抱いて彼女たちと会話して、それで一緒に過ごして共に笑い合えるとでも?」
九重花志鶴は適格に長峡仁衛に言った。
ぎくり、と長峡仁衛は彼女の言葉にそれはそうだ、と思った。
「そ、それは……」
「いいのよ、仁。心の底から、貴方の望む答えを教えて頂戴な。きっと彼女たちに伝わると思うわ」
周囲を見渡す。
銀鏡小綿や駒啼涙。
それ以外の人たちが、みんな長峡仁衛に注目していた。
「でも、俺、こんな、最低な願い」
「いいの。仁。さあ、言ってちょうだいな」
優しい笑みで、九重花志鶴は長峡仁衛を諭す。
この心の苦しみを打ち解けて良いのか、迷ったが。
「あ、お、俺、俺、は」
それは懺悔をする様に。
長峡仁衛は床に座り、自らの感情を吐露していく。
「志鶴さんも、好きだし、小綿も好きで、駒啼も……好き、なんだ」
長峡仁衛は周りを見渡す事無く下を俯く。
彼女たちの視線がどうなっているのか、見るのが怖かったから。
それでも叫ぶ、この気持ちをみんなに知ってもらう為に。
「三人同時に好きで、これ、多分言うのダメだと思うけど、俺、俺はッ」
大きく息を吸い、続けた。
もうここまでくれば、全てを打ち明ける他無かった。
「三人同時に付き合いたいッ!出来る事なら、同じ屋根の下で三人同時に家庭を築きたいッ!!」
その言葉は静寂を生んだ。
それを破ったのは、彼の親友でもある永犬丸詩游だった。
「うわぁ……今度の長峡はクズになっちまってるよ……」
冷や汗を流しながら、親友の末路を見て悲しみに溢れる。
「んふ、よく言えたわ、仁。それじゃあ、彼女たちの顔を見てみましょうか」
長峡仁衛は顔を上げた。
もしかすれば、と言う一縷の望みを持って、彼女たちの反応を伺う。
「―――」
「………」
銀鏡小綿は可哀そうな目で長峡仁衛を見ていた。
「……最低です、先輩」
駒啼涙はそうドン引きして長峡仁衛を罵った。
「引かれてる……」
長峡仁衛は予想通りの反応に想定外と言った様子で言う。
「そりゃそうだろ」
永犬丸詩游が目に見えた事だと、そういった。
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