第2話〈致命傷〉
泥の地面。
丁寧に擂り潰した血と腸と肉が混ざりあった泥濘。
その上に立つのは皮膚が剥いた筋肉と骨が剥き出しになった人体模型の様な歪さ。
残滓と変わらない姿だが、身体中に生える骨の総量が違った。
まず、脊髄から生える刺の柱、尾てい骨から伸びる筋肉を覆う骨の甲殻。顔面には恐竜の頭蓋骨の様なものを被っていて、頭部の空いた穴から赤く発光する目がこちらを睨んでいた。
ぐるる、と牙を剥き出しにして、白濁の色をした唾液を垂らしている。
「なんだ、あれは」
長峡仁衛は、その威圧感に圧倒された。
膝が震えて、恐怖を隠せない。
視線が一瞬震える膝に向けると同時。
厭穢の口が開いて、漆黒の塊を射出する。
「ッ長峡さんっ!」
黄金々丘が叫ぶが、長峡仁衛の行動は遅く。
その漆黒の塊を受けて後方へと飛んでいった。
「ぐ、おっ」
壁に叩きつけられた長峡。
その身体は辛うじて士柄武物によって防御出来たが、その一撃は非常に重く、士柄武物を破壊してしまった。
(黄金々丘がくれた士柄武物がッ)
(なんて速さッ)
驚きを隠せない二人。
だが黄金々丘は即座に切り替えて萌え袖から黄金の鎖を伸ばす。
(〈陰陽五行体系金統咒術式〉)
磁力操作によって高出力で放たれる黄金の鎖は、白骨の厭穢に向かっていく。
黄金色は熱を持ち、赤い鉛の色へと変貌した。
(〈
磁力の他に熱を発生させる事が出来る。
鎖を通じて熱を与え、発火させる事が可能なのだが、その鎖に触れさせなければ無意味な一撃でしかない。
厭穢は上半身のみを動かして、最小限の動きのみで回避を行うと、一瞬脹脛の部分が膨れ上がり、黄金々丘に接近して左拳を放つ。
「っきゃっ!」
黄金々丘は攻撃を受ける寸前、鎖を放ってそれを楯にした。
一撃を受けて身体が跳ね上がるが、鎖の楯の他に、肉体に神胤を流して肉体を強化、硬質させた為に致命傷になる事は無かった。
「黄金々丘っ!」
長峡仁衛は叫ぶと同時に神胤を放出。
抦だけとなった士柄武物に流し込んで白いクナイを操作する。
「くそ、食らえっ」
厭穢に向けて白いクナイが発射される。
しかし、厭穢は振り向く事もなくクナイを手で掴むと、それを簡単に握り潰す。
砕けた士柄武物を長峡仁衛に見せつける様に手から溢す。
そして厭穢は長峡仁衛に近づくと。
「ッ速すぎっが、あぁ、!」
長峡仁衛の顔面を蹴った。
足を高く上げて、何度も、何度も、蹴り続ける。
血が周囲に飛び散る。骨が砕ける音がする。
皮膚が破けて、肉が千切れた。
「やめ、なさいっ!」
厭穢に飛び掛かろうとする黄金々丘。
足を止めて、厭穢は黄金々丘に顔を向けると、ニタリと笑って中指を突き立てた。
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