第286話 LV286 厄災とは

 地上に降り立ったヘーラーの元へ皆が集まる。


「終わっていないとはどういう事だ」

 レイモンドは、間髪入れずヘーラーに問う。


「ジョボネゴッダは厄災のうちの一つに過ぎません」


「あれだけ苦戦した奴らが、まだいるのかよ」

 ガロは深くため息をついた。さらにゴウリキがヘーラーに話しかける。


「それで、厄災はどれだけあるんだ?」

 

「それよりまずはこれを……」


 ヘーラーは手元の空間が歪む。


「神のアイテムボックスはあらゆる物も収納可能なの」


 そう言い、取り出したモノを地面へと投げつける。


「うがあああぁ」


 ヘーラーが、地面に放り投げたモノは手足が動かぬようロープでぐるぐる巻きにされたゼウスだった。


 *ゼウスは地面に転がっている。


「や、やあ。皆の衆久しぶり!」


「久しぶりじゃないわよ」


 *ヘーラーはゼウスを足で蹴っている


「や、やめて。ねぇ、ヘーラーさんお願い」


「全然意味がわかんないんだけど……」


 *フミヤは混乱している。


「この人が、逃げて出してから(LV208話参照)私、必死に探しましたの」


 フミヤがよく見ると、ゼウスの顔は痣だらけである。


「そうしたら、またこのひと……こりもせず、他の女神じょしんと浮気していましたの」


 ゼウスの浮気癖は有名である。


(だから、ボコボコにされたのね……)


「そんな私念などはどうでもいい。厄災はあといくつあるんだ? 厄災とは何なんだ?」

 もどかしい様子でレイモンドは詰め寄る。


「単純に言えばいい? 数?」


「ああ、そうだ!」


「数百よ」


「数百‼」


 一同はド肝を抜かれた。


「では厄災とはなんですか?」

 

「あら、ヴィオラ。あっさりと納得するのね。厄災、そうね……一言で言えば、『呪い』かしら」


「現在、私達神が管理する世界は全部で9つ。あなた達の住むこの世界は第238地上と呼ばれているわ」


「9だけ?」


「フミヤ、意外と少ないって顔ね」


「だって、ここが238なんだろ? それ以上の数があるって考えるが普通でだろ?」


 皆は、ヘーラーを見つめる。


「そうね……。今まで、あった地上界は全部で303世界だった」


「だった?」


「厄災で滅びたのよ」



 ――厄災


 生物に多くの影響を及ぼす呪いの類い。ジョボネゴッダの出現は『木災』である。厄災は、各地上界へランダムで出現する。その数は300以上と言われている。多くの厄災が降り注いだ地上界は消滅を迎える。厄災は地上が滅びると、次の地上界へと移り変わっていく。前回、第238地上に現れた厄災は全部で6つ。その厄災は過去の勇者により淘汰された。


「昔は地上界が多くあったおかげで、いち地上あたりに降りかかる厄災の数も少なかったのじゃのう」


「ラオ老、正解よ」


「運悪く厄災が大量に出現した地上界は崩壊したの。――で、厄災の数が圧倒的に多くなってしまった」


 レイモンドは少し下を向き、考え込む。


「それで、今回大量に厄災が発生するのが地上界という事か……」


「その通り。この暗黒大陸の負のエネルギーに引き寄せられたか? もしくはこの馬鹿旦那ゼウスが隠れていたからなのかもしれません」


 *ヘーラーはゼウスを足で蹴っている


 フミヤは首を傾げる。


「なんでコイツが原因なんだよ」


 ヘーラーは言葉を詰まらせ、皆を見回した。


「なんだよ。早く言えよ!」


 ヘーラーは重い口を開く。


「皆さん、ごめんなさい」


「ヘーラー様、ごめんなさいとは?」

 ヴィオラは聞き返した。


「厄災とは、ゼウスが浮気した女神じょしんの怨嗟から生み出されたモノなの」


 厄災の数=ゼウスが浮気で泣かせた女神の人数

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