第25話 エルフィさんの得意料理


さぁて!今日のごはんは私が、久々に作る。

そもそも料理ほとんど、旅では作らないんだけど…、まぁ、今回はいいわ。


カインドのマジックバッグから鍋とコカトリスのお肉の細切れと、ジャガイモと

「カインドのとっておきのミルク使ってやる」

「…まぁいいでしょ」

なんでミルクがとっておきかと言うと、村では良く見かけるんだけど、旅ともなると保存が利かないからだ。保存の魔法が付与されたお高い瓶を買う必要がある。

カインドは料理が趣味だから(他の物にお金かけないのよね…)ミルクもマジックバックに常備されている。旅の料理には今のとこ使ってないの。


ミルクを取り出して、カインドのいる方をみる。

テリとも交代して休んだんだけど、カインドはまだ懇々と眠り続けている。クレアちゃんも同様だ…。…何だか2人とも起こせない雰囲気なのよね…。

「大丈夫かな…」

「うーん、そのうち起きるでしょ。さっきヒールかけましたし」


気を取り直し、カインドの料理道具を借りる。火はあるし、

「で、いつものアレですか」

「いつものアレよ、なんか加えようか?」

「アレは消化がいいですし丁度いいです。鉄分が取れればいいんですけど」

テリは私が作る料理が何か知っている。そもそも作れるレパートリーは少ないから。

野菜をいくつか取り出してみる、

「そうね…、ほうれん草あるから入れようか」

「いいですね、お願いします。買っておいて良かった。僕はお茶を作ります。エルフィ」

「なに?」

「ヒールかけておきますよ、疲れてるでしょう。」

テリからヒールをかけて貰う。体が軽くなった。

「ふぅ。テリ、ありがとう」


私はジャガイモとほうれん草を少しの水で洗うと、鍋に水を張り、ジャガイモを茹でる。お湯が沸騰したところでほうれん草を入れる。

途中で茹でたほうれん草を取り出す。少し冷ましてからほうれん草をみじん切りにすると皿にとっておく。

暫く眺めているとジャガイモも茹で上がったようだ。フォークで突き刺し、深皿に入れる。ほくほくだが、今手を出すと、あっついので、しばらく放置ね。


茹で汁は勿体無いのでそのまま使う。そもそも作るのはスープなの。

一口大の大きさに切ってあったお肉を入れて茹でる。お出汁も出るように長めにコトコト煮る。少し水分も飛ばしたい。あ、火を弱めておかなきゃ。

お肉はカインドが、見張りでひたすら切っていたのを使わせて貰った。


程よく冷めたジャガイモの皮を剥く。皮を剥いたジャガイモは一口大に切る。

あ、大きさはどうでもいいのよ。最後には潰すんだから。


テリとお茶しながら、一時間ぐらい煮込む。普段は混ぜて終わりだけど、今回はお肉を入れてみたので、煮込むことにしたの。


「ワーム一匹で結構な騒ぎになっちゃったね」

「カインドが腕で受けたのは悪手ですよ。でも僕たちもそれなりに疲れていたと考えます」

「気配察知が早かったら…って思うと」

「そもそも、絶えず使い続けられるスキルじゃないですよ。でも使う頻度を上げるのはいいかもしれません。今回はカインドにもちょっと油断があった」

「それはそうだけど、私も油断したの。カインドが噛まれた後すぐにワームが群れていないか調べるべきだった」

「はい、それは正しいと思います。しかし…それにしても、僕、役に立たないですよね」

テリから意外な言葉が聞かれた。ちょっとびっくり。彼もカインドの怪我に慌てたんだと気がついた。でもね、

「え!?なに言ってんの!テリがいないとそもそもここまで辿り着けてないと思う。経験不足で帰ってるのが落ちよ」

「あ…それもそうですかね」

「そうそう。」

テリが開き直る。今回の騒ぎはお互いに旅の緊張感を持つのに役立つと思うの。…ていうか、カインドより私が年下だと忘れそう…。うーん、少しテリとお話しした。


さて、お鍋は…っと。

お肉を入れた茹で汁が薄い黄金色に変わってきた。いい感じ。

鍋を一旦火から離して、ジャガイモを入れる。

…あ、お肉取り出した方が良かったかな…いいや、面倒だわ。

料理用のこん棒を取り出して、鍋のジャガイモを潰していく。たまにお肉が邪魔するけど、いい感じでジャガイモも形がなくなって行った。お出汁と混ざって滑らかになる。みじん切りにしたほうれん草を加える。白っぽかったのが薄緑になる。ミルクも適量混ぜて美味しそうな色になった、あと塩胡椒ね。

「できたみたいですね」

「完成ー、久しぶり料理した」



んーーー、ふぁ〜!…

大きな欠伸をしてオレは目を覚ました。固まっていた身体を伸ばす。んーー。昨日怪我したんだったな…。治った腕を眺めながら思い出す。起きあがろうと思ったが、体がずっしりと重い…。な、頭だけ起こすと、お腹にクレアが抱きついているのを発見した。あれ。

テリが気が付き近づいてきた、

「『カインドの傍にいる』って、可愛いですよね」

「そうか…心配かけちゃったな、」

「私達も心配したのよー」

「あは、エルフィごめん」


顔だけ動かして、コンロをみる。鍋がかかっていた。そういやいい匂いがする。

「エルフィが食事を作ったんですよ」

「え、何を」

「ジャガイモとほうれん草のポタージュスープよ。茹でて、潰して、混ぜる、これだけでできるじゃない」

「なるほど…」

「私も作れるわ」

「消化にもいいですし」

「ほほう…」

「いい度胸ね…あ〜、丁度あったからミルク使っちゃった〜」

エルフィのいい笑顔。

「え!ああ、うん…」

「あ、お肉入ってるけど、カインドには無しね」

「え!?そんな〜!」

「じゃあ、2個だけ入れてあげる」

「2個…」


「カインド、起きれますか?」

「うん、」

抱きついたクレアを両脇から抱えると、クレアも起きてしまった。

「うーん…カインド、おはよう、げんきに…なった?」

目を擦りながらクレアが尋ねる。自分の体のことを少し考える。まだちょっとだけ怠い。

「おはよう。あとちょっとかな」

「そう…クレアも頑張るね」欠伸をしながらクレアが言う。

なんか知らんが、頑張ってくれたみたい?

「ありがとう」



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