第19話 踏まれるのと蹴られるのどっちがお好き?…えっと…


「ふぅ…疲れたべ」

装備のままみんな座り込み、オレは足を投げ出して座り空を見上げる。うーん、どうしようかな。急いで来たはいいけど…疲れてちゃな〜。


結界石を見つめる。結界石を持ってはいるけど、魔力を常時流すには持っていないといけないし…。土から魔力を吸収するとなると結界石は刺さないといけない。強い魔物はその結界を無理やり突破してくるものもいる。結界石を重ねて持てばいいけど、魔力も持ってかれるし、結界の範囲が小さくなる。…どっちにしろ油断できない。


「はい、今日の反省ー」

「はいカインドくんどうぞー」


「急いだはいいけど、この疲れを引きずるのはどうかと思う〜」


「暗くなったら移動はしないほうがいいかも。一日歩くと疲れるし、気配察知してたけど、…暗いと戦闘がやり辛いわ」

「夜に遭遇すると、野営場所を変更する必要もありますから〜結構厄介でしたね。大きめのオークが居ましたけど、もしかしたら、オークソルジャーに進化してたかもしれない。」

「強めだった」

エルフィがちょっと間の抜けた返事に苦笑いする。

「強めか〜結局カインドしか留め刺せなかったかも。あんなのも出るよね。」


「強めのは、首とか狙うのがいいけど、首太いのは顔狙ったほうがいいよ。エルフィなら躱しながら狙えそうだし。」

「次、やってみる。」

「今日はだいぶ進みました。まぁ、急ぎ過ぎましたね。最後のオークも痛かった。魔物は夜も関係なく出ます…。明日から暗くなったら、野営するようにしましょう」


「ふーーーっ」と3人で息を吐いた。ヒールをかけて貰えば身体は楽になると思う。けど、精神的な疲れは取れないからね。



その数時間前、

小さな存在が走って森をかけていた。

休憩もとったし、疲れてない。

変な人達の気配を探る。距離はあるが直線で追跡すれば近いうちに追い付くだろう。

今日は頑張って走ろう。

風が通り抜けていった。



「あ…カインド、負傷したでしょう?頬と左腕の傷にヒール使ってみてください。治り切らなかったら…踏んであげます。」

テリが立ち上がり楽しみに足踏みする、自分とエルフィにはすでにヒールをかけていた。


「ふふ!早速、踏んで貰えるのね〜!良かったじゃない!」

「いや!」

テリからこそこそと離れていったオレだった。


自分の頬に手を翳す。

「ヒール…」

ホワリとした光が見える。ピリリと痛かった所が痛く無くなった。

後ろからエルフィが、覗き込む。

オレは傷があったであろう所を見てもらう。

「どお?どお?」

「ふーん、綺麗に治ってるじゃない。はい、次、腕。」

エルフィがお目付役のようだ。


オレは気合を入れて、唱えた。

「ヒール!」

手のひらから淡い光が漏れる。腕の表面を撫でていく…。こん棒の風圧で縦長に切れていた傷が片側からじわじわと半分消えた。

え!?こんな感じで治っていくもんなの??半分って、うう〜!…中途半端!


「はい!ザンネーン!ヒールっ!」

「はぐっ!?」

オレの背中にテリの靴底が勢いよく触れ、ヒールがかけられた。

ああ!!いつの間に後ろに…!エルフィはテリと場所を入れ替わり、笑っていた。

今…蹴ったよね!?


「今、踏んでないじゃないか!蹴ったね!!」


「え……?そんな性癖なのあんた…?」

「すいません…踏んであげれば良かったですね…」

テリとエルフィが真顔になっている。


「え!?違う違う〜!そういう意味じゃないってば〜!」

「はいはい、わかったわかった。」テリが適当に答える。

「無理しないで」エルフィが優しく肩を叩く。

違うって〜!も〜!!


「ヒールは惜しかったですね」

「ヒールってあんな感じで治っていくもんなの?」


「いいえ、カインドのヒールのスピードがとても遅かっただけです。まぁ、治っていく過程は、先程みた感じなんですが。本来ならもう少しスーッといくもんですよ」

「カインドらしい」

「はい」

「まぁ、スキルとして獲得してますし、熟練度は勝手に上がりますから。これからスーッとを目指しましょう、スーッとを。」

「スーッとかぁ」


今日は保存食で夕食を済ませ休むことにした。



小さな存在が草むらから、にこにことカインドたちを眺めていた。

頑張って走った甲斐があった。

「くすくす…やっぱり面白い…」


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