第16話 する〜っとスルーするー。
…くぅ…くぅ~、……ん。
朝になり、小さな存在は眼が覚めた。危険も無いので寝入ってしまった。
変な人たちは今日は何をしているんだろう?
ごそごそと草むらを出ると、伸びをする。
てってってと昨日カインドたちが居た場所へと行ってみた。
「!?」
この時間はまだ朝ご飯を食べているはず…
しかし、そこには野営をした跡が薄く残っていただけだった。
…変な人たちの会話が聞けないのがちょっぴりショック。少し呆然とする。
時間ならある。またあの人たちを見つければいい。
気を取り直し、てくてくと歩いていく小さな存在だった。
その頃のオレ達は朝食をとり、今日の予定を確認していた。今日は少しペースを速めて進んでいく。昼も食事の休憩をとるだけにする。
「今日は魔物は避けて通っていきましょう。遭遇してもスルーします。」
「スルーするー」
「んもう、変な事言わない」
「おもしろくない?」
「おもしろくない」
「話は戻りますよー、で、エルフィは今日は後方にいてください」
「前じゃなくていいの?」
「前は見えますが、後ろから来られるとスルーができません」
「それなら後ろがいいわね」
「オレを見守ってて」
「後方確認、がんばるわ」
「しょぼん…」ちょっぴり落ち込むオレ
「…あなたは分かり易くていいですね…ね、エルフィ」
「……そこは欠点にもなり得るから」
「うーん、僕も帰りたくなりました、今頃何してるんですかね…」
「ちょっと、テリ……あ、許嫁いたわね…」
「テリの許嫁!!エルフィは会ったことある?」
「そりゃ、会ったも何もお世話になってたから」
「そうですねぇ…懐かしいな~」
「ちょっと、カインド!テリが帰りたくなるからこの話終わり!」
「えええ~!もっと聞きたいのに~」
「帰りたい…」
「あ!」
「ほら、もう行くわよ!」
テリを後ろから押し進めながら出発となった。
許嫁さんを思い出し、里心が出て遠い目をしてしまっているテリを他所に、オレ達は奥へと進んでいった。ざくざくと歩みを止めない。
前方にゴブリンのチームが居たが、見つからずに進み、さらにオークを発見した。オークは1匹だけだ、距離をとり避ける。後方からキラースパイダ―が来て若干緊張が走るも、方向を変えて進んでいってしまった。
ジャイアントフロッグはスルー。
気配察知を繰り返しながら奥へと進んで行く。
お昼には野菜と唐揚げを適当な大きさに切って挟んだ、作り置きサンドイッチ。
唐揚げのパリパリが白パンのアクセントになって美味い。肉汁もパンに吸い込まれパンもうまい。テリが笑顔だ…うん。
「オークも出てきましたね……カインド、おかわりください」
「え、テリがおかわり」
「食べたら進むんでしょ?大丈夫?」
「敵も強いのが出てくるでしょうしね、うーん、一個か…」
「じゃあオレと半分ね」
「そうしてください」
「エルフィ、少し食べる?」
「わたし唐揚げだけ食べたい」
「2個ぐらい?」
「うん、」
唐揚げサンドイッチを半分に切りテリに渡す。半分は自分の口にくわえる。
「どうも」
唐揚げを二個、予備のコップに入れてフォークを刺しエルフィに渡す。
「あ、食べやすいかも。」
お茶は沸かさず、お水を飲む。
片付けはコップとお皿だけなのでクリーンをかけて仕舞う。
「よし、進むか」
「うーん!」エルフィが伸びをして答える。
テリが立ち止まる。
「あ、出来るだけ進みますけど、休憩が欲しい時は言ってください。特にエルフィ。」
「ん?」
「疲れるでしょ?」
「あ…まぁ、疲れたら言うね」
「急いで行きますけど、遠慮はいりません」
「じゃ、いくよー」
オレ達は早速、出発した。エルフィ無理しないでね。
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