第14話 は〜、どっこいしょ、どっこいしょ!と作業した


カインドが眠りについて数時間後、エルフィが起きた。

「ん~!!すっきりしたーー!!」伸びをして、身体をほぐす。

横を向いてみるとカインドがこちらを向いて休んでいた。カインドの側にあるぬいぐるみを手に取る。顔は可愛いんだけど、絶妙に何の生き物かわからない…。まぁ可愛いからいいわ…。そっとカインドにぬいぐるみを返す。


立ち上がると、テリに声をかけた。

「テリー、交代」

「特に異常はありませんでした。今日は、カインドが起きたら起こしてください。」

「わかった。」

テリはまだ休まないようだ、自分用のお茶を入れた。

「今夜はカインドはひたすら肉を切ってたんですよ。」

「お肉?」

「お皿に肉が山盛りに」

「ふふっ、今度は何作ってくれるんだろう?」

「料理の下ごしらえをしてたみたいで、『ご飯の作り置きも有か』と聞かれました。」

「作り置き?」

「料理に時間をかけないほうがいいんじゃないかと。」

「…急いで世界樹に行きたいのかな…?」

「いや、そうじゃなかったみたいで、ストレス発散に作り置きしたいようですよ」

「ならいいけど…」

「強行はしませんよって言っておきました」

「うん、そうだね。わたしもそれが助かる」


テリはお茶を入れてエルフィに渡した。

「カインドが光属性だったって、結構驚いたんだけど、どう?」

「まぁ、驚きましたよ?」

「そうよね、でもわたしなんか納得もしてる…ああ、そうだったんだ、って」

「そうですか…」

「カインドがいると少し強い敵が出ても大丈夫な感じがしてる…でも、緊張感が薄れるのは良くないんだけど…」

「……」


「まぁ、確かに…僕も以前入った時は魔素の重圧を感じてたんですけど、今回それが軽いような…」

「でしょ?」

「はい」

「浄化とかしてるのかな??」

「してるかもしれませんが…、浄化持ってるか聞いてみますか?」

「聞いたほうが早そう」

「…もし浄化持ってるんでしたら、解呪も覚えて欲しいとこですね。」

「解呪か…魔力も多いみたいだし。いいかも」


「彼は…世界樹に何か関係があるんでしょうね。枯れてきた話といい、彼が来たタイミングも」

「呼ばれたって言ってるし。何なんだろ」

「まぁ、辿りつけば自ずと分かるでしょう」

「そのたどり着くってのが難しいんだけどー」

「まぁ、そこは前向きに考えましょう。索敵覚えられるかもしれませんよ?そういやカインド気配察知の練習もしてたみたいです」

「覚えるの早そう」

「…いいですよ、覚えたらこき使ってやりましょう…!ふー、…では休みますね」

テリは立ち上がると、上衣を外し直ぐに毛皮に横になった。

「おやすみ」



「あ、わたしまだ装備つけてなかった…」



翌日オレは遅く起きた。寝かしといてくれたみたいだ。身体の疲れは取れてスッキリしている。

「ふぁ~あ」

眼がしぱしぱする…

「おはよう」エルフィが近寄ってきた。


「テリが、カインドが起きたら起こしてくれって言ってたけど、まだいいよね」

「いいよ。…まだ寝かしとこう。」

「カインド、解体したいんだけどいい?」

「ああ、コカトリス…いいよ~」

寝床から抜け出し、軽く装備を着けていった。


コカトリスをマジックバッグから取り出す。

「はー、おおきいーー」

「だねー」


「ほんとは羽を毟ったりしてからがいいんだけどさー、めんどくさいんだよねー」

「そうよね、羽も素材になるから」

「今回はさ、お肉と皮に分けて剥いてっていいかな?皮は羽根つけたままにしとく」

「いいけど、出来るの?」

「まぁ…頭と、胴体と、羽と、脚とで大まかに切り分けちゃおう。羽根を付けたままにするからお肉減っちゃうけど」

「それでいいわ。羽根はその後どうするの?」

「あのね、皮と羽根毟りは見張りの時間があるからさ、その時にちまちまやっちゃおうかなと思って」

「そうね、わたしも見張りの時に手伝うわ」


エルフィは早速、作業ナイフを手に取る。

「コカトリスの羽を持ってるから…付け根から切っていって?」

「うん」


もう、何度か解体したので、少し手際よくなってきたね~。コカトリス越しとは言え、エルフィはかわいいな~。ちょっとニヤニヤする。

「うふ…」

「!?なによ?気持ち悪い」

「いや、今日もかわいいな~と思って」


少しだけ赤くなったエルフィ。うふふふ。拳は飛んでこない。解体中だし!


「真面目にしないんなら、親指の表面ちょっぴり切るわよ」

「…はわ!?地味に痛い、それ!」


気が付くとテリが既に起きてお茶を飲んでいた。

「青春ですねぇ…」


まぁ、そんなこんな話をしながらコカトリスの解体が済んだ。羽・頭・足・胴体ときりわけられ、内臓は一部のみ保存して後は廃棄。他の部位と共にバッグへと収まった。

わーーい、新たにお肉ゲット~。



遠くの草むらから小さな存在がぴょっと顔を覗かせ三人を見ている。

「…へんなの…」

特に近づかず三人を監視しているのだった。



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