第11話 きょうの料理~お肉(野ネズミ)の煮込み 美味しいんだよ
地面に転がっている大きな石を寝床になる所から足元へ転がす。
ランタンの明かりでコンロ用の石を組む。中央には薪を設置。少し左側にも火から鍋を外せるように少し石を盛っておく。
石が無いときは母ちゃんの野営用コンロを組み立てるよ。石で囲んだ中に拾ってきた細かい枝や枯れ葉を重ねて、火打ち石で火をつける。ぽっと薪に火が灯る。
パチパチと木に燃え広がる。いい音。コンロは荷物から離して設置してるぞ。
テリとエルフィがマジックバッグから防水布を取り出し、その上に拡げてナイトウルフの毛皮を敷いた。
野営は簡易的に休む場合が多くて、各自毛布に包まり、最低限の装備を身に着けたままミノムシになり眠る。今日は装備をあらかた外してゆっくり休むよ。あ、休むのは替わり番こね。一人は見張りと火の番をするよ。
食事はオレの担当…みたいになってる。だってさ、できるだけ美味しいものを食べたい。
今日は野ネズミのお肉をフルに使おうと思う。コカトリスが手に入ったし。
火の近くに腰を降ろす。マジックバッグから愛用している木の机を取り出す。底のぶ厚い幅が50㎝の作業机兼まな板です。丸太を加工してもらった。
机に万能ナイフと木の皿をいくつか取り出す。
今回はゆっくりと煮込みたいから先にお肉から調理するよ。お肉をバッグから取り出し少し大きめに切って、鍋に投入する。油をしき、鍋でお肉をじっくり焼く。
焼き色がついたらお水を投入。コンロにそのままかけておく。
ジャガイモとキャベツを取り出して川で洗ってくる。万能ナイフでじゃがいもを一口大に切って皿に用意。次にキャベツを大きめに切る、これは別の皿に。
お肉を入れた鍋が沸騰している、少し火から遠くに離して火加減を調整。
あ!トマト入れるんだった。すり鉢ととまーとを取り出し、トマトをすりつぶしていく。すり潰したものは深皿に用意。
「あ」
「ん?エルフィどしたの?」
鍋のお肉の加減を見ながら答える。お水を追加、もうちょっと時間かけよう。
テリが小鍋でお湯を沸かしている、お茶用かな。
「カインドに渡すものがあったの」
「え!?何?プレゼント?嬉しい!なになに!」
エルフィは自分の荷物を探り取り出した。
「ジャジャジャーーン!!」
「え…!フライパン……」
「あんた、フライパン壊れたって言ってたじゃない?それじゃ、野営の時に美味しい焼き肉が食べれないでしょう?そう思って買ってきたの」
「カインドが料理することが前提なんですね」
「に…肉食系女子…いや~ん」
「いいからお肉焼くの?焼かないの?」
「今日は焼きません…」
「すでに煮込まれてますもんね、お肉」
「まあ、今日はいいわ、はい」
エルフィからフライパンを渡された。…パンを温めるのに使います。
お肉の番をしている。一つ取り出してフォークを刺すと途中で止まった。もう少し。
「できたー?」
「…もう少し煮込んでいいですか…」
「お腹空きましたけど、美味しそうですからもうちょっと待ちましょう」
「うん」
バッグからそれぞれの荷物も出し終わったみたいだ。テリがお茶を入れてくれている。エルフィは鍋を眺めている。
ジャガイモと、トマトを磨り潰したものを鍋に加える。時間差でキャベツも投入。すり鉢でコショウと少しハーブをすりつぶし鍋に投入。更に塩を加える。お玉から指で味見をする。…こんなもんかな。
火の強い所に再び鍋を移動し少し水分を飛ばす。しばらくして煮えたのを確かめるためお肉を取り出し、フォークを刺す。下まで刺さった。よし!キャベツもくたくたに煮えていい感じ!
火から鍋を離しそれぞれの深皿にお肉のトマト煮込みをよそっていく。
バッグから黒パンを取り出してナイフで適当な厚さに切る。
クリーンをかけたフライパンに黒パンを切ったものを並べて火にかけ軽く温める。
それぞれ二切ずつ深皿の淵に盛り付けて完成!!
「できたよ~!」
テリとエルフィがスプーンを片手に深皿を受け取り、さっそく食べ始める。
「いただきます!」
「いただきます」
「どうぞ~」
オレもスプーンで煮込みをすくって口に頬張る、あちち!
「はふっ!あふい~」
「うん、美味しいですね」
「待ったかいがあったわ~おいしい♪」
少し煮つまって塩加減も良かったみたい。お肉は臭みもないし、トマトの酸味とお肉からも出汁がでていいね♪
黒パンにもお肉を乗せて一緒に食べる。
しばらく無言で食べ進めるオレ達。
「んぐ…おかわりしよう」
「ん、わたしももう少し食べたい」
「おかわりあるから二人とも慌てずに食べて」
「後でいただきますね」
美味しい食事の時間が過ぎていった。
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