第10話 美味しい水


しばらく行くとふと水の流れるような音が聞こえたような気がした。

「水場に近づいてるかな?…微かに水の音がする」

「魔物も増えてるし、近いかもね」


移動するうちにキラーラビットと、15匹のキラースパイダー(蜘蛛さん)に遭遇した。

うさぎさんはいいんだけどさ…キラースパイダ―は時間がかかった。

親個体がいなかったため、比較的倒しやすかったのかな。キラースパイダ―は親は身体が大きく、子に命令をするから統率が厄介なんだよね。きっと餌を探しに来た分隊だったのだろう。

分隊と言えど、15匹は厄介だった…テリが魔法を連発して、蜘蛛を分断してから数匹ずつ叩いていった。さすがにあれは連続して遭遇したくない…。


「水の音はどちらから?」

「あっち…」

「今日は魔物が多かったですし…その分奥にも進めたと思います。この辺で水場を先に見つけましょうか?」

「今日はそうしましょう?」

「いいよー。」



水の流れる音を微かに聞きながら歩くと、川が見つかった。

水場は魔物も多くいるため遠くから目視し距離をとる。今日はこの辺で野営になるだろうし。誰もいませんか~??

しばらく魔物が来ないか確認して少し水場へと場所を移動。木々と大きい岩に囲まれた場所を発見した。


「ここ、なかなかいいと思うんだけど?」

「岩を背にしてますし、見えにくそうですね。少々火を焚いても良さそうですよ」

「かなり暗くなっちゃったし、ここにしよう、もう歩きたくない~」エルフィが座り込む。

さっそく結界石を取り出し地面に刺して配置する。安全地帯確保。うーん、今日は疲れた。


「はぁ~、水場見つかったわねー。」

エルフィは土と血で汚れた体に早速クリーンの魔法をかけてキレイにしている、女の子だね。オレもクリーンしよう、身体が汗臭い…。

「今日は疲れましたね、コカトリスにキラースパイダーで消耗しました」

エルフィは短刀にもクリーンをかけていく。

あ、オレもクリーンしとかないと!錆びちゃう錆びちゃう!


川に近づきのぞき込む、横にテリがやってきた。


「川もきれいだし水飲めそうで良かったよ~、後で入れ替えよう」

川の水はきれいだった、だいぶ奥に入ったってことだよね。


「……少し心配だから一回沸騰させようかな」

「その必要はないですよ、以前入った時にもそのまま飲めました。世界樹に近いほど少し魔力が溶け出してくるんです。なかなか美味しい水ですよ。」

テリが横に来て水をすくって飲んだ。

オレもすくって飲んでみる。冷たくて美味しい水に喉が鳴る。飲んだ後ステータスを見ても異常はみられなかった。あ、魔力に+10がついてる。

テリと交代でエルフィが水を飲みに来た。

「ぷはーー!美味しい!」

うずくまっている姿勢かわいい。



「明日はお昼に出発します?休みでもいいですけど?」

「やったー、ここでしっかり休みましょう」

「ゆっくり寝れるぅ。一日休みにしておいて。魔物が来たら切り上げて移動しよう」

渇きを潤してオレ達は野営の準備にとりかかる。


「あー!やったー!レベルアップ~!3つも!」

エルフィはステータスを確認したようだ。

「わーい!よかったね~!!」

オレは…あがってないなぁ。



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