侮辱罪

ににに

いじめ・誹謗中傷と侮辱罪と報復と

「テラスハウス」木村さんを中傷の男性、侮辱罪で科料9千円 - BBCニュース

 https://www.bbc.com/japanese/56585750


これからまだまだ先のある若者を死に追い詰めたというのに、科料だけで済むとは厳罰を望んでいたネットの誹謗中傷被害者や残された被害者家族にとっては残酷な話だとスマホを手に怒りを覚えた。

いじめやネットの誹謗中傷で人を死に追い詰めたのなら、現代にふさわしい侮辱罪のあり方を考えなければならない時期ではないのだろうか。

とにかく、軽い気分でやらかしたことへの結果に対しての刑罰が軽すぎる。私としては業務上過失致死を適用し、執行猶予なしの禁固刑が相当ではないかと考えているぐらいだ。



日本は腐っている。

それは 政治や官僚が、というわけではなく、ほぼ全てのものが。

中には真っ当な人や組織あるだろう。しかしながら巨大すぎる腐敗に飲み込まれ、動きが取れない身の上で将来を悲観してる人々が多いのではないだろうか。

そんな中で自殺という答えだけは出してほしくない。腐ったものの中でも頼れるものは存在する。その全てにしがみつき、生き残って欲しい。


**********


話は私の中学時代に遡る。


実は、私には助けられなかった友人がいる。

彼は隣のクラスだったが、クラスを超えた枠組みで行う授業では同じ班だった。内気で優しく、多少の不便なら不満を言わない真面目な人。

しかし、特に思い当たる理由が無いのに複数の人間から暴力的、かつ、精神的ないじめを受けていた。


別の友人からの話によると、当時流行っていた某格闘ゲームやプロレスごっこと称してみぞおちを蹴られ、袖で隠れる肩に近い部分や背中に火のついたタバコや使い捨てライターの金属部分を火で熱したものを押し付けられ、教科書やノートを強奪された挙げ句に焼却炉に他のゴミと混ぜて燃やされ、朝イチで学校へ来ると机と椅子に明らかに犬や猫のものではない糞便が置かれていたり、教室にはいじめ防止のために置かれていなかった花瓶を誰かが持ち込み、その辺りでむしりとてきたであろうハルジオン(通称:貧乏草)を雑に活けられていたり……


要するにいじめのオンパレードだったという。


それでも合同授業の班ではいつもニコニコとしていたので私の中でモヤモヤと心配が湧き上がり、困っている事はないか?と問うてしまった。


「〇〇さんに相談すること? うーん、無いかな?」


何事もなかったかように軽く返されてしまった。これでは深く突っ込めない。


私はとある事情で区域外から通っている生徒だった。そのせいか教師達との仲はどちらかと言うと良好だった為、彼のいじめに関することをそれとなく聞いてみた。

教師達も彼の事案には半分気がついている様子だった。


しかし、差し伸べたはずの手は彼に届かなかった。



月曜日定例の全校集会で使った放送機材を片付け、足早にクラスへと戻ると、私のいた学年だけ1時間目の授業が中止になっていた。

私が教室へ入り、全員が揃ったことを教師が確認すると、かなり重たい口調で話が始まった。

その内容とは


『彼が前日、自宅敷地内の納屋で首を吊り、亡くなった』


要点を纏めると、今朝の一部新聞で既に知っている者もいるだろうが、この学年でいじめを苦に自殺をした者が出た。遺書はあるが、ご親族の強い要望で学校側には公開されないとのこと。いじめの加害者については学校と警察で全員特定済みということ。

私はこの時点で、いじめの加害者を全員ではないものの突き止めていたので、教師の話半分にまず報復を考えた。が、それらを過去の事例から既に察していた警察からの助言で学校は報復を許さない、それらを行った者は厳重な処罰・指導をすると電柱のようにクソデカい釘を刺されたのだ。


勿論、この話は授業1回分で済む話ではなかった。

その後もホームルームで事あるごとに彼の自殺といじめ加害者の話を持ち出され、教師たちによる加害者擁護は卒業まで続いた。

何故かいじめによる自殺案件ではそれを苦にして死んだ者より生きている者たちを優先させる不思議な慣習が昔からある。この件についてもそれが適用されてしまった。

いわゆる”殺”られ損とはこのことだろう。


後で知ったことだが、いじめ加害者達は警察からの事情聴取のために順繰りに学校を休まされ、警察署へ行くことを強制されていたという。

学校としてはそれが一種の罰として機能していると頓珍漢な考えに至ったのかもしれない。

実際には全く機能してはいなかったが、世間体上とにかくそういうことにしたかったらしい。



私の代の卒業式が終了した後、PTA関係者と教師のみが参加できる謝恩会が行われた。

幹事による音頭の後、ある程度あいさつ回りなどが終わった頃合いを見て余興の一つとして3年間を振り返るスライドショーが行われた。

スライドのカセットは順番通りになっているか、余計なものは入っていないかと事前にチェックがされていた。それは自殺した彼の件に関わる内容は省いた上での演出内容だった。

ただ、そのカセットをセットした映写機からは、彼が窓際で悲しげに微笑む姿が舞台のスクリーンに投影され、会場は一時静寂に包まれた。

居た堪れずにその場から離れた者が数名出たという。


誰かが、最後に”報復”を成し遂げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

侮辱罪 ににに @_Ninini_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る