うとうと……
眠いのは夜更かしをしたせいだ
うとうと、していると
雨が降る
バダバダッと窓を殴るしずく
一瞬で窓は水だらけになって
教師の声が小さくなる
しかし、ちょっとして止まる
外を見ていた自分は前を向いた
さっきまで雄弁だった彼は
「雨ですねえ」と言った
続けて
「もう五月になりますねえ」と
語尾を伸ばして
うっそりと呟いた
誰もが聞いているはずなのに
真正面や下を見ていた数人だけ
教師のように外を見た
打ちつける音は大きい
でも通り雨らしく
窓際の自分から
遠く遠くの青空が見えた
五月、と心に言う
しばらくして授業が再開されて
またお経のような声が響く
今度は雨に負けないように
張った声だった
そのせいで、また
うとうと、と
うとうと、と
目を瞑れば、まだ
雨音がする
きっと止んでも
うとうと、と
五月かあ
もう五月なんだよなあ
うとうと、うとうと
一日一編集『四月ナキ』 朶骸なくす @sagamisayrow
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます